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Vol.3「壁を乗り越えるために」

  • 2023.05.11

    Vol.3「壁を乗り越えるために」

絶康調

4勝5分け5敗で13位。どん底だよね。どうしてこうなっているのか、原因が分かりやすければみんなで処置して勝てるようにしている。何が悪いかといえば、一番悪いのは選手だよね。うちらが一番悪いとは思う。チームが勝つために、もっともっと自分のクオリティーを高めることを追求していかなければ。もちろんそれだけじゃ勝てないのがサッカーなので、みんなが同じ方向を向いて1試合にどれだけ熱量を持って臨めるかだよ。オレたちの今年の目標、J2優勝はぶれていないのだけど、選手、スタッフ、フロント全員が同じベクトルを持ってやれているかとなると、ちょっとぶれているかもしれない。

選手もすぐに答えを求めちゃうのはもったいない。確かに答えを知ることは勝つことへの近道なんだけど、若い子たちはなんかあったらすぐ答えを求めたがる傾向にあると感じている。このご時世すぐgoogleとかで調べて答えを見つけられちゃうじゃん。そういうのも関係しているのかなあと思ったりする。答えが分からないからサッカーは楽しくて深くて魅力があるスポーツだと思うから、みんながおのおの考えて共有し、同じ方向を向けるかどうか。そこしかない。試行錯誤するのもサッカーの醍醐味であり、チームが成長するに当たってすごく大事。高い壁を乗り越えたときこそ本当に強くなれる。そうすればこれから先に同じ問題が起きたとしても、「うちらはこういうことがあったけど、乗り越えられたから大丈夫だね」と言えるようになる。生半可なものじゃぶれないものがチームとしてできあがる。今は(5月にJ2首位だった)去年より悪い状況なんだけど、俺はその壁が早く来ただけと感じている。内容も結果もともなってない。支えてくれているみんなも不安でしょうがないと思うけど、やってる選手たちも手応えのある試合はそうないと思う。手応えがないのはみんなの共通認識としてあるわけで、だからこそどうすればいいのか考えている段階。

勝っていても調子が悪くて思い通りにプレーできていない選手は必ずいる。全員が調子いいわけじゃない。でも、調子が悪くてもチームのために最低限何かしているかはすごく大事で、そういう姿勢がチームの支えになり、いいチームの象徴になる。周りもカバーする。それがチーム。目に見えない連係がグラウンドの中にはある。スタジアムに見に来て、いいプレーに「あのプレーよかったね」って盛り上がるやつ。そのプレーでボールに関わっていない選手はたくさんいて、いろいろなカバーや配慮があっていいプレーが生まれる。そういうのがちょっと足りないかなと思う。今はメンバーを固定し切れない状況で、武器を模索している段階かと思う。本来なら磨いていく段階なんだけど。

自分も若いとき試合に出られなくて将来不安になった時期もあった。4~5年ぐらい。でも振り返ると自分で考えていろいろやっていたのは自分の成長につながったというか、ここまでやってこれているのに間違いなく役立っている。自分は出られないけどタイトルは取れているというもどかしい状況だったからなおさら。突き詰めるとどんな練習でもやるしかなくて、どれだけ結果を出せるか、目立てるか。そのときは自分だけにフォーカスして生き残るためにやっていた。歓迎すべき状況ではないんだけど、けどやっぱ「勝つっていいよな」とうらやましく見ていた。力が足りないとも感じていたから、あの人たちを越えていこうとやっていた。出なくても勝てればいいという考えに変わったのは、満男さん(元日本代表小笠原満男さん)を見てかな。試合に出ようが出まいが、チームに貢献し続けていたから。勝っているときやチーム状態がいいときでも、練習からバチバチやれていて、出てない人が悔しくて練習でアピールして試合に出てやろうという気持ちが出てくる。それに負けまいと試合に出ている選手もやっていたし。

サッカーで一番大事なのは、攻守の切り替えやサイドの局面での攻防、最後のゴールのところとかで、そこは結局「個」じゃん。1対1で守れないからチームプレーや戦術が大切になってくる。個を磨いた上で相手の嫌がることを常に考えてやっていれば、そこまでひどいサッカーにならないと感じている。相手の嫌がることはみんな分かっている。ただ、うまく整理できていなくて、共通理解にたどり着いていない。状況によっていろいろ判断を変えないといけない。0-1で敗れた水戸戦後のオフ、選手みんなでいろいろ話した。みんな危機感を持っていて、こうしたほうがいいとかああしたほうがいいという声がめっちゃ出た。これまでなあなあにしちゃっていた部分はあったから、これをきっかけに変わっていければいいと思う。

ミスを恐れないことも大切。真瀬(ベガルタ仙台DF、真瀬拓海)はミスの目立つプレーヤーではあるけれど、実はあいつがいることで助かっている選手はすごく多い。誰よりも走り続けるし闘い続ける。待っている守備じゃなくてボールを奪いにいく。積極的でミスを恐れず前に進む。ところが、今の状況はミスにすごく敏感になっている。以前の試合で真瀬のプレーに試合中ブーイングが起きてやるせない気持ちになった。プロの選手として批判は甘んじて受ける。ただ、それは試合の後にしてほしい。ミスを恐れなくていい雰囲気を一緒につくっていきたい。ミスを恐れたらあいつの良さがなくなっちゃう。真瀬は壁にぶつかって自問自答している。乗り越えていけばもっともっといい選手になるだろう。言わなくてもやっているからすごいな、真瀬だなって思う。成長するポイントだと思ってやり続ければいい。こういうときこそ本来の真瀬のようなキャラとかプレーが必要な気がする。

今は負けが込んでいてみんなきれいにへこんでいる。その中で梁さん(ベガルタ仙台MF梁勇基)は前向きな解決策を示している。出ても出なくても常にチームのことを考えていて、さすがだなと思う。早く勝ちたくてみんなもがいている。サッカー選手ってそういうことの繰り返しだからつらいのよ、孤独になっちゃう。だからどんな状況でもポジティブにとらえて前を向いてやるしかない。練習からポジティブにやっていかないと試合でポジティブにやれるわけがない。オレは常に明るくやる。ベテランとして求められていることは分かっているから、言うべきことは言う。今だからじゃなくて常日ごろからやっている。オンとオフは大事にした上で、自分がやることと相手に求めることをしっかりやって、チーム全体が上向くようにしていきたい。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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