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Vol.3 チャンスを掴むまで

  • 2023.01.17

    Vol.3 チャンスを掴むまで

太田徹のフランス珍道中

最近のヨーロッパの傾向として、スタッフ内での役割が細分化され、異なる経験や能力を持った人がトップチームの監督になったり、スタッフに入ってチームを支えるなどの光景を目にするようになってきています。そのため、元プロ選手でなかった人に対しても、少しずつチャンスが広がってきていて、その恩恵を受けている1人がこの僕です。笑
ですが、そのラッキーを手に入れて仕事をするためには、3つのステップがあると思っています。まず、人との出会い、次に元プロのコーチにはない武器を複数持つこと、最後にコミュニケーションスキルが挙げられるかな、と思います。

人との出会い、これはどこにいても同じことだと思います。フランスで4つのプロクラブでお世話になりましたが、全て知り合いに声をかけてもらって契約をもらうことができました。よっぽど経歴が凄い監督でない限り、クラブから直接オファーをもらうということはまずありません。なので、日頃から人と会って、関係を作っておくことは色んな面でプラスがあると思います。

次にチャンスを物にするためには、自分の能力を伸ばしておく必要もありますよね。元プロのコーチにはない武器を複数持っていることが絶対条件になると思います。この複数というのはポイントだと思います。例えば、僕の友人にバルセロナの大学で統合的トレーニング論を学び、サッカーにおけるトレーニング論のスペシャリストの友人がいます。それプラス、彼は5カ国語話せるため外国人の多いプロクラブでは選手・スタッフ間のコミュニケーションを助ける上で大きな武器を持っています。
僕もナントで働いているスタッフと出会ったのは、昌子選手の通訳で入ったトゥールーズ。その後、僕が英語の勉強をしたり、戦術的ピリオダイゼーションやスペインの戦術のコースを受講していたことをスタッフが知っていたこともあり、チャンスが巡ってきた、というのがあります。なので、元プロではない人がこういう道に入ろうと思うと、1つではなく複数の武器を持つ、という事が必要になると経験を通じてと思いますね。

そして、運よく僕のように宝くじに当たったかのようなチャンスを得た場合、コミュニケーション能力というのは非常に大事かなと思います。選手は当然その人の経歴を見ます。日本人の僕は、「誰あなた?」みたいな目で見られてきたことはチーム・クラブが変わるたびにありました。ましてやプロ経験のない僕です。当然いきなり話を聞いてくれるわけがありません。
僕らみたいな元プロ選手ではない人のアプローチは、まず相手に聞いてもらえる、話をしてもらえる人間関係を作ることが一番大事だと思うんです。コイツとちょっと話をしてみたいという人としての関係性を築く。選手としてではなく、まずは対面の人間に興味を持って家族の話や、日常の問題など、ごくごく普通のコミュニケーションを取る、ということですね。たぶんそこが本当に大事なところになるのではと思っています。そのなかで選手から質問されたときに、「じゃあお前がやってみろよ」と思われないような伝え方のテクニックというか、そういうのも僕はものすごく大事なんじゃないかと思います。
今のヨーロッパは少し違っていて、2つの学問に分かれます。一つは、トラップで例えるとここに置いたら次に蹴りやすいから動作の反復をすることで物事を習得するという考え方。もう一つは、そもそも同じトラップは存在しないから、コントロールの仕方を指導すること自体が間違っているという考え方。僕はどちらかというと前者よりも後者で、どうやってその選手がコントロールをミスしない状況を作ってあげられるかを伝えるのがコーチだよねという感覚なんです。僕は元プロの選手や指導者みたいに、ちゃんとしたお手本のプレーを見せられない。だから「ロングキックでコントロールをここにして、こう蹴ったらいいんだよ」という話をしたら、たぶん選手は「いやいや、お前はできないじゃないか」となる。だから、そういった設定に重きを置いた話をするのがいいと考えるタイプになったのかもしれません。自分の弱点を見せてはいけないという意味もあります。

今シーズンから進めてるのが、若手選手に対してのアドバイスです。たとえば、「トラップが良くないと次のプレーで蹴れなくなるよ」という言い方ではなくて、「この状況を見てごらん。敵がここにいるのに、なぜここにいたの? このライン上にいたら、トラップ一発で相手を抜けたよね」とか、技術だけでなく戦術とからめて話をするんです。ただ、若手選手は経験がある選手よりも考えが明確ではない分、すぐに話を聞いてくれるため、下手なことは言えないプレッシャーもありますが、やりがいはとてもありますね!
ちょっと長くなっちゃいましたけれど、次回は、日本人選手の加入とメッシ、エンバペ、ネイマールのPSGのお陰で少しスポットが当たりつつあるフランス・リーグアンについての話をしたいと思います!

  • 太田 徹Toru Ota
  • Toru Ota

    1981年07月11日生まれ。
    東京都出身。
    武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
    2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
    2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。

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Vol.76 今の自分。