COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol.95 J1リーグ開幕。大事な一勝。

Vol.95 J1リーグ開幕。大事な一勝。

  • 2024.03.05

    Vol.95 J1リーグ開幕。大事な一勝。

発源力

©FCMZ

J1リーグ第2節・名古屋グランパス戦で、FC町田ゼルビアにとって記念すべき、待望の初白星を掴むことができました。今シーズン、初めてのJ1リーグを戦っている僕たちにとって、また、ゼルビアに関わる全ての人たちにとって自信になる、始まりの1勝だったと思っています。これで満足することは決してないですが、シーズン序盤、早い段階で勝利を掴むことは大きな意味があると考えていただけに、素直に嬉しいです。

一方、僕自身は未だ、ピッチに立てていません。ガンバ大阪との開幕戦が行われた週のトレーニング中、ゲーム形式で戦術確認をしている際に、球際のバトルでバランスを崩してしまった選手が僕にぶつかるというアクシデントに巻き込まれてしまい、離脱している状況です。正直、始動からキャンプも含めていいコンディションで開幕に向かえていただけに悔しい気持ちは大きいですが、練習や試合では当たり前に起こりうるアクシデントだと受け止めているので、今はとにかく自分がやるべきことを続けてピッチに立つ準備をしたいと思っています。

そのガンバ戦では、黒田剛監督の「キャプテンとしてJ1初挑戦のチームに帯同してほしい」という意向を受け、19番目の選手としてチームバスに一緒に乗ってスタジアムに入りました。できることは少なかったですが、僕なりに開幕特有の空気を感じ取りながら、チームメイトを盛り上げるとか、少し選手の気持ちをほぐすような役割を担えればいいなと思っていました。

その中で、ウォーミングアップ前のロッカールームでは、キャプテンとして発言させてもらう時間をいただきました。正直、監督からチームに投げかけられた「選手、スタッフ、メンバー外で悔しい思いをしている仲間や、今、ゼルビアに関わってくれている人たちのためだけではなく、このゼルビアの歴史に携わってきてくれた全ての人たちのために、今日のJ1リーグ開幕戦を戦おう」という言葉が全てだという思いもありました。ただ、明輝さん(金コーチ)から「試合直前の円陣では今日、キャプテンを任せる啓矢(仙頭)に声を掛けてもらうから、ここでは源から一言、頼む」と促されたこともあり、僕なりの思いを伝えさせてもらいました。

「自分が若い頃はもちろん、ある程度のキャリアを積んでからもそうだったように、プロサッカー選手というのは自分がメンバー外になることが決まった時に、少し目の前の試合が他人事になりがちになると思う。試合に勝てば喜びながらも『あぁ、俺がいなくても試合には勝てるんだな』と複雑な気持ちになるし、負ければ悔しさは感じながらも『結果が出なかったことでメンバーを変える可能性も出てきたから、自分にチャンスが来るかも』と期待をする。これはある意味、プロサッカー選手として当たり前の感情で、むしろ持っておくべきものだと思っている。
ただ、今、僕はみんなに心の底から、勝ってほしいと思っている。ここにいるみんななら、それが必ずできると信じている。監督が言っていた通り、自分のため、家族のため、隣で肩を組んでいる仲間のため、コーチングスタッフを含めたチーム全員のため、そして、このクラブに関わってきた全ての人のために今日は必ず勝とう。この瞬間から、ウォーミングアップでピッチに立った瞬間からガンバに勝つことだけを考えよう。そして絶対に勝とう。行くぞ!」

正直、自分が話す時間をもらえるとは思っていなかったこともあり、その場の空気や仲間の表情を見つつ、ここまで準備してきた時間を思い出しながら、素直な胸の内を言葉に変えました。話しているうちに少し思考がこんがらがって、正しく伝わったのかはやや不安でしたが、本当にありのままの気持ちだったし、それを言葉に変えることで、改めて自分自身も、この2カ月弱の時間の間に、これまで在籍したクラブとはまた違ったクラブへの愛着、信頼を含めた特別な思いが備わっていることに気づかされた気もしています。

知っての通り、ゼルビアは今年初めてJ1リーグにチャレンジをしているクラブです。僕が以前に在籍した、鹿島アントラーズやガンバという『オリジナル10』のクラブとは違う道を歩んで、J1の舞台に辿り着きました。クラブの大きさ、歴史、チームとしての経験値、選手個々の経験値、獲得してきたタイトル数も全て、現時点ではその2チームに及びません。ホームゲームでの開幕戦を見ての通り、サポーターの声の大きさや迫力という面でも、正直、ガンバに上回られていたと思います。そうした全ての面において『これからのチーム』だと自覚しています。

そして、だからこそ僕自身にとってのゼルビアへの移籍は、自分のキャリアにおいてこれまでとは違う、大きなチャレンジになると覚悟して加入しました。このクラブに身を置いて自分がどういった感情になるのか。何を感じるのかが想像がつかないからこその楽しみと、未知だからこその若干の不安も持ちながら、この2カ月を過ごしてきました。

ですが、結果的に僕は今、本当に心からゼルビアでプレーすることを楽しんでいます。サッカーにまっすぐで、強くなりたい、巧くなりたい、J1リーグの試合に出場したい、絶対にJ1で爪痕を残してやる、というギラギラした欲を持った選手たちばかりの中で、これまでとは違う種類の刺激を受け、それがプレーをする楽しさに変わっています。仲良しこよしでは決してなく、お互いに考えをしっかりぶつけ合いながら、だけど仲間をしっかり想ってプレーするチームメイトのことをすごくリスペクトしています。J1リーグでの初チャレンジということに関係なく、監督が掲げたトップ5を狙うという目標に対して、少しの恐れもなく、勝つため、チームのためなら、なんだってやるというまっすぐな思いを持った仲間と、このチームをなんとしてでも強くしたい。1つでも多く勝利を掴んでやるというギラギラした気持ちが、自分の中に強く芽生えていることを感じます。
そして、そのことはピッチに戻った時に、自分にとって何よりの力になるんじゃないかという期待もあります。それを自分自身で体感するためにも、今はとにかく、1日も早くゼルビアのユニフォームを着てピッチに立つとだけに集中しようと思います。

最後になりましたが、ガンバ戦は僕にとっての古巣戦でもありましたが、昨年に続き、またしてもプレーできませんでした。ピッチでバチバチにやりあうことが古巣への恩返しだと考えている僕にとってはすごく残念でした。ただ、先ほども触れたように、Jリーグ屈指ともいうべきガンバサポーターの皆さんのゴール裏からの迫力は相変わらず凄まじく、改めて皆さんのエネルギーに触れて襟を正すような気持ちになりました。試合後、みなさんのもとに挨拶に行かせていただいた際には、ガンバ時代の僕の3番のユニフォームを掲げてくれていた方もいて、本当に嬉しかったです。ガンバで過ごした3年間に改めて感謝する時間になったし、パワーもいただきました。次こそは公式戦のピッチで、みなさんに再会できるのを楽しみにしています。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

ガンバ大阪・半田陸が戦列復帰へ。
「強化した肉体とプレーがどんなふうにリンクするのか、すごく楽しみ」