COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol. 60 全てを注ぐ。

Vol. 60 全てを注ぐ。

  • 2022.09.20

    Vol. 60 全てを注ぐ。

発源力

©GAMBAOSAKA

マツさん(松田浩監督)が監督に就任されてから、言われ続けていることがあります。
「余計なことは考えるな。とにかく目の前の試合が決勝戦だと思って、そこに全てを注いで戦おう」
勝負の世界において、あと何試合勝てば、あと何ポイント獲得すれば、という計算は意味がないし、仮に計算はできたとしてもその通りにいくことはまずありません。であればこそ、マツさんのいうように目の前の全てに全てを注ぎ切り、勝ち点を積み上げていくことに集中すべきだと思います。

そして、その「全てを注ぐ」という言葉を、僕自身は単なる精神論では考えていません。スポーツにメンタルが大きく影響するということは重々承知していますが、一方でこの世界は気持ちだけで勝てるほど甘くはないし、気持ち、メンタルというのは単に、頑張る、闘う、ではなく、チーム、個人としてやるべき戦術を果たすために必要なものだと思うからです。
厳しい局面で相手からボールを奪い切るために、球際の勝負で負けないために、あと数センチ足を伸ばすために。あるいは、局面で落ち着くために。流れを冷静に読み取るために。的確にプレーの選択をするために。賢く試合を進めるために。もっと言えば、ピッチで起きたミスを教訓にしながら、同じことを繰り返さないために。チーム内に生まれたわずかな隙や綻びを見逃さないためにメンタルが必要で、それがプレーに反映されてこそ「全てを注ぐ」ことにつながっていくんだと思います。

誤解を恐れずにいうならば、そういう意味での「全てを注ぐ」ことにおいて、正直、今の僕たちは、チームとしてまだまだ足りていないと感じています。それは直近のヴィッセル神戸戦を含め、ここ数試合、結果が出ていないことからも明らかで、試合の中身を振り返ってもピッチでは同じようなミスが続いています。似たようなやられ方で勝ち点を落としてしまっています。情けないですが、それでは「全てを注いで」戦えているとは言えません。

もちろんこれは、ミスをした誰かを責めているわけでは決してありません。そもそもサッカーにおける失点が、誰か一人のミスで起きることはまずありません。神戸戦での1失点目、湧矢(福田)が与えてしまったPKも、試合後、彼は涙を見せていましたが、そこに至る前から、相手にボールを持たれる時間が続いていた流れも含めて見直すべきところはあり、湧矢一人が責任を負うものではないと思います。僕自身、過去には彼と似たような経験をしたことがありますが、むしろ今回の経験が湧矢をまた成長させてくれる1プレーになり、それがまたチームを救う力になると信じられます。

2失点目についても同じです。試合後、未月(齊藤)が中盤での圧力をかけきれなかったダワンに「ファウルでも止めるべきだ」と思いをぶつけたシーンがありました。あれも、厳密にはダワンに対してだけ向けられたものではないと思っています。というのも、僕たちは7月末の京都サンガF.C.戦でも同じような失点の仕方で勝ち点を失っています。そうした事象を踏まえて、マツさんからもチームとしての約束事はしっかり伝えられていたし、PKで1失点目を喫した後、ピッチ上の11人が集まって、短い時間の中でチームとして残り試合をどう進めるか、というリマインドもしていました。
にもかかわらず、神戸戦でそれを徹底できなかったのは、明らかに自分たちの甘さであり、隙でしかないということを未月は伝えたかったんだと思います。そして、それをはっきりと言葉にしてくれたことも、僕自身はポジティブなことだと受け止めています。

その2失点目は僕自身も帰宅後、繰り返し、見直しました。言うまでもなく、失点の理由はダワンの対応だけが問題だったわけではありません。自分たちがボールを失ったところから相手の攻撃が始まったわけで、当然、その失い方も反省しなければいけないし、僕自身の対応もあれでよかったのか、何度も考えました。ダワンが抜かれた時点で、自分が前に出るべきだったのか。出ずに、そのまま小田裕太郎選手にゴール前まで運ばせてシュートを打たせるべきだったのか。あの時は、自分がファウル覚悟で止めるべきだと判断して前に出て、小田選手に体をぶつけました。そこでファウルになって流れが止まっていたらいい判断だったということになったのかもしれませんが、結果的にはアドバンテージを取られ、武藤嘉紀選手から大迫勇也選手につながれて失点につながりました。
それについて、相手の出方もあることなので正直、僕自身、今はまだ何が正解だったのか、答えは出ていません。ですが、そんなふうに各々が考えることから逃げずに、向き合い、それをみんなで共有していくことで生まれるものは必ずあると思っています。と同時に、勝負の世界では、それを勝ちに繋げなければ意味がないからこそ、この2週間の中断期間は今一度みんなでチームにある甘さとしっかり向き合い、本当の意味で「全てを注ぐ」ことの意味を見つめ直さなければいけないとも思います。

神戸戦は非常に、とてつもなく、悔しい敗戦でした。直接対決という重みを考えれば、これまでのさらに何倍にも危機感は膨らんでいます。ですが、戦いはまだ終わっていません。ここから状況を変えられるチャンスも残されています。であればこそ、何がなんでも残りの4試合、しっかりと顔を上げてファイティングポーズをとり、自分たちを信じてくれているサポーターと戦い続けることに全てを注ぎます。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月に完全移籍が発表されたトゥールーズFCでもすぐさまレギュラーに定着したが、2シーズン目はケガに苦しみ、長きにわたり戦線離脱。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年2月にガンバ大阪への完全移籍が発表された。
    日本代表にも14年に初選出。18年のワールドカップ・ロシア大会でもレギュラーとして活躍した。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

REIBOLA RADIO 配信開始!