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Vol.10 関西リーグ開幕。そしてクラブ史上初の天皇杯本大会へ。

  • 2020.08.27

    Vol.10 関西リーグ開幕。そしてクラブ史上初の天皇杯本大会へ。

BRAIN〜ズミの思考〜

8月20日。今回で100回目を迎える『天皇杯』大阪府代表決定戦の準決勝。相手は大阪体育大学学友会サッカー部だ。ようやく監督として初めての公式戦を迎えることができた。
最初に、この日を迎えられたことをたくさんの人に感謝したい。今も医療現場の最前線で働く医療従事者の皆さま、サッカー界の公式戦再開に向けて尽力してくださった皆さま、そして、このような状況でもFC TIAMO枚方をサポート、支援し続けてくださっているスポンサー各社の皆さま。たくさんの方々のおかげで公式戦の初戦を迎えることができました。本当にありがとうございます。

対戦相手の大体大の監督は、名古屋グランパス時代の後輩、松尾元太。まさか監督としての初陣の相手監督が元ちゃんとは…面白い巡り合わせだなと思う。当たり前だが、相手が高校生、大学生であろうと、J1チームであろうと、監督として準備することは変わらない。今年、自分たちがやろうとしてることをもう一度整理して選手に落とし込むこと。メンタル、コンディション共に100%の状態で臨めるようにすること。相手チームの戦い方を分析し、どのように対応するかをチーム全体で共有すること。この3つを徹底し、準備の段階でやり残したことは一つもないという状況でこの日を迎えることができた。
ただ1つ、誤算というか、悔いが残ったのは直前にケガ人が数名、出てしまったこと。もちろんサッカーにはケガがつきもので、防げないケガもあることは重々理解している。だが、ただでさえ所属選手が多くはないからこそ、たった1人の離脱でも正直痛い。しかも二日後には関西サッカーリーグの開幕戦も控えていただけにメンバーにはかなり悩んだ。

試合当日の天気は晴れ、最高気温は37°C。キックオフの16時の時点でも暑さが和らぐことはなく、過酷な環境での試合は思った以上に選手を消耗させていった。相手チームも同じ条件とはいえ、出足や運動量では明らかに相手に上回られたのも事実だ。それだけに、早い時間にセットプレーから先制点を奪えたのは追い風だった。MF加藤博人の直接フリーキックだ。
このMF加藤とFW木田直樹の二人は、FC TIAMO枚方の生え抜きで、今年で在籍5年目を迎えたチームの中心選手でもある。クラブが歩んできた歴史や、チームの良い時、悪い時を知っている選手の存在はクラブにとっても貴重で、今後、リーグ戦のみならず全国地域チャンピオンズリーグを戦って行く上でもその経験値はものをいうはずだ。二人には、監督就任から今日までいい意味で驚かされっぱなしだが、彼らとともにJFL昇格を目指し、実現することはクラブにとっても大きな意味を持つと考えている。
話を戻そう。そのMF加藤が先制点を奪った直後には、セットプレーからすぐに追いつかれたものの、前半終了間際には勝ち越し点を決めて再び相手を突き放す。2-1で迎えた後半も、いくつかのピンチはあったが最後まで集中を切らさずに逃げ切り、決勝に駒を進めることができた。

ただし、この試合でも負傷者が出てしまう。筋肉系のケガだったため4連戦中の復帰は難しいと診断されたことから、中2日で臨んだ関西サッカーリーグ開幕戦に向けては、とにかく選手の回復に努め、いるメンバーで最善を尽くすことに集中した。
そうしてメンバーを数名入れ替えて臨んだリーグ開幕戦。相手は同2部リーグから昇格してきたAS.Laranja Kyotoだ。試合は早々に先制点を奪われる難しい展開。ボールを支配しチャンスは作りながらもなかなか決めきれない中、前半ロスタイム、MF野沢拓也の美しいミドルシュートで同点に追いつく。だが、直後に相手のキックオフからサイドを突破されてクロスボールをあげられた展開からオウンゴールを献上。大阪体育大学戦同様、得点してすぐの失点は、チームとして改善しなければいけない課題として残った。
後半に入り、交代選手を含めチャンスを作っていくと、今度はFC TIAMO枚方アカデミー出身で初めてトップチームに所属しているFW福森大樹が右サイドからのクロスボールを頭で合わせ72分に同点に追いつく。彼もまた前述の2人同様、クラブとして大事にしなければならない選手。FC TIAMO枚方の未来を担っていって欲しい選手の活躍は監督としても嬉しいことだ。試合は、最後までチャンスを作り続けはしたものの決勝ゴールを奪うには至らず、引き分けという結果に終わった。

そして再び、中2日で迎えたのが、天皇杯の大阪府代表決定戦の決勝だ。相手はJFLに所属するFC大阪。試合はMFチョ・ヨンチョルが2ゴールを決めて2−1と、FC TIAMO枚方がリードのまま時間が進む。だが、勝利を目前にして、後半アディショナルタイムに失点。FC大阪の前への圧力に耐えきれずに、同点に追い付かれてしまう。その後、試合は延長戦でも決着がつかずPK戦に突入した。
そのPK戦では、今シーズン公式戦初出場のGK武田博行がFC大阪の4人目のキックを止め、FC TIAMO枚方は5人目のMF野沢まで全員が成功させたことで勝利し、クラブ史上初の天皇杯本大会出場を決めることができた。
この試合のためにPK戦の準備にも取り組んできたし、何より、110分を終えたピッチには、スタメンのMF田中英雄・GK武田、MFヨンチョルと途中出場のMF二川孝広、MF野沢、FW岡本英也と経験値の高い選手が残っていた。いや、実はこういう展開になることも予想して残していたのだ。監督としてこんなにも心強いことはない。事実、足を痛めていたヨンチョル以外は全員がキッカーに立ち、しっかりと決めてくれた。

今回は、ここまで戦った公式戦3試合を簡単に振り返ってみたが、どの試合にも共通して言えるのは、楽な試合は一つもないということ。それでもチームが前へと進んでいるという手応えは確かにある。だからこそこの先もブレることなく、また、苦しい戦いを征して天皇杯本大会への切符を掴み取った勢いを、リーグ戦に繋げていきたい。

  • 小川 佳純Yoshizumi Ogawa
  • Yoshizumi Ogawa

    1984年8月25日生まれ。
    東京都出身。
    07年に明治大学より名古屋グランパスに加入。
    08年に新監督に就任したドラガン・ストイコビッチにより中盤の右サイドのレギュラーに抜擢され、11得点11アシストを記録。Jリーグベストイレブンと新人王を獲得した。09年には、かつてストイコビッチも背負った背番号『10』を背負い、2010年のリーグ優勝に貢献。17年にはサガン鳥栖に、同年夏にアルビレックス新潟に移籍し、J1通算300試合出場を達成した。
    20年1月に現役引退とFC TIAMO枚方の監督就任を発表し、指導者としてのキャリアをスタートさせた。

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