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Vol.16 『締まった空気』を継続して次に向かう。

  • 2020.11.17

    Vol.16 『締まった空気』を継続して次に向かう。

発源力

©GAMBA OSAKA

横浜F・マリノス戦で古傷を痛めてから、少し戦列を離れていた中で改めて『サッカー欲』を掻き立てられたのが、アウェイでの『大阪ダービー』でした。僕自身はテレビ観戦となりましたが、『一視聴者』としては、上位チーム対決らしい、みどころの多くて面白い試合でした。お互いに一切の隙がなく、最初から最後まで目が離せない息をのむ展開が続いたというか。パトリックのアシストも、陽介(井手口)のゴールも素晴らしかったし、セレッソのトヨ(豊川雄太)のゴールも、キヨ(清武弘嗣)のバイシクルも迫力があり…挙げればキリがないくらい見所があって、お互いのプライドが火花を散らした1つ1つのバトルに『これぞ、ダービー』という気迫が溢れていました。結果的に引き分けに終わりましたが、サポーターの皆さんも非常に楽しめた試合だったんじゃないかと思います。
だからこそ、『一選手』としては、試合後「俺もこの試合をピッチで戦いたかった!」という思いでいっぱいでした。もちろん、プロサッカー選手である僕にとってのサッカーは、観るものではなくプレーするものなので常に試合には出たいと思っていますが、その欲をさらに掻き立てられました。僕はまだガンバに加入してから満員のスタジアムで、両サポーターの皆さんの熱気にあふれた本当の意味での『大阪ダービー』を戦ったことがないですが、Jリーグ屈指のダービーと言われる理由が少しわかった気がします。と同時に、今後もプレミアリーグのアーセナル対チェルシーや、アーセナル対トッテナムのロンドンダービーのように、それぞれがタイトルを目指すだけではなく、お互いのリーグ戦の順位まで張り合うような歴史が続いていけば、より面白い『大阪ダービー』になっていくんじゃないか、とも思いました。

そんな気持ちを持ってチームに合流し、27節・ベガルタ仙台戦では6試合ぶりに公式戦に復帰しました。残念ながら、結果は0-4で敗戦。J1リーグ初先発の翔自(唐山)を含めて経験の浅い選手が多かったこともあり、彼らのサポートも意識して試合に入りましたが、チームとして球際や試合の入り方、アグレッシブさといった面で前半から仙台に上回られた気がしています。後半は、2点のビハインドを追いかける展開となったことから僕たちがボールを持てる時間こそ長くなりましたが、全体的にパスが足元に入ることが多く、背後をとる動きが少なかったのも反省点として残りました。また、個人的には約1ヶ月ぶりの公式戦だったとはいえ、そこまで試合勘がないとは感じなかったですが、センターバックとして相手FWにハットトリックを許してしまったのは非常に悔しかったです。失点の原因は1つではないですが、個々の局面での対応を含めてチームとしての守備に甘さがあったのは間違いないと思います。
結果、『負けなし』の記録は止まってしまいましたが、長いリーグ戦を戦っていれば、必ずどこかで負けることはあります。かと言って、この敗戦でこれまで積み上げてきたものがゼロになるわけでもないし、負けたから全てがダメということでもありません。試合後、スタンドからは厳しい声も聞こえてきて、それもある意味、当然だと思います。きっと全力で応援してくれたからこその悔しさの表現だったはずだし、そういうゲキもチームが強くなるには必要だとも思います。
ただ、Vol.14でも書いたように、負けたときはネガティブな感情が膨らみがちですが、仙台戦もポジティブな面がゼロだったわけではないと思っています。若い選手がデビューを飾ったことや、ある意味、僕を含めてピッチに立っていた全員がとてつもない悔しさを味わったことも財産です。強がりではなく、僕自身、これまでも1つの敗戦や悔しさからたくさんのことを学んできたからこそ、そう思います。その気持ちは今も変わっていません。だからこそ、今回も敗戦の理由、課題をしっかり受け止め、学び、チームとして次の試合にどう向かうのかを大事に考えたいと思っています。

その点については、負けなしの戦いが続いていた時も、選手全員が、連勝云々に関係なく「目の前の1試合、1試合に集中して勝つぞ」ということに気持ちを注いでいたし、練習でも『締まった空気』が流れていたので、それを続けていくだけだと思っています。
この『締まった空気』というのは、正直、僕がガンバに加入したばかりの時にはあまり感じられなかったもので、シーズンを戦う中でチームに備わってきたように思います。といっても、ずっと緊張感のあるピリピリした空気で練習しているわけではありません。むしろ練習の中では笑いが溢れる瞬間や、リラックスした状態で楽しくサッカーをしている時間もあります。僕自身、基本的に練習は楽しくやりたい派なので、敢えてそういう状態に自分を持っていくこともあるくらいです。
ただ、たとえ練習でも「そろそろ締めなアカンな」という瞬間は必ずあるし、楽しさの中にも激しさ、厳しさは不可欠です。そのアラートな空気が流れるとか、スイッチが入って『締まる瞬間』が、最近はチームとしてすごく揃ってきたというか。個人的にはかねてから練習でもそういうメリハリは大事にしていて、リラックスして笑顔でボールを蹴っているところから、もう1ギアをあげよう、締まった空気を出そうと思う時には、敢えて球際に厳しくいくとか、相手の足元に強めにタックルにいくことを心がけてきましたが、その「ここからは!」というスイッチがチームとしても自然に揃うようになってきました。それによって、試合でも攻守において「ここぞ」という場面でのスイッチがあうようになり、苦しい局面、展開を勝ちきれることが増えてきたんだと思います。その部分は今シーズンのチームとしての収穫だし、常に上位を争うためには不可欠なものだからこそ、これからも大事にしながら、残りの試合を戦っていきたい。敗戦の後というはできるだけ早く、次の試合を戦いたいところですが、今週は1週間のインターバルがあります。そう考えても敗戦を引きずらずに、強制的にでも気持ちを切り替えて、次に向かおうと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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