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Vol.14 ポジティブな面に目を向けて、前に進む。

  • 2020.10.20

    Vol.14 ポジティブな面に目を向けて、前に進む。

発源力

©GAMBA OSAKA

前回のコラムで、ここ最近の試合で失点が減ってきた要因の1つに、『ミスの連鎖』がなくなってきたことを挙げました。少し話し足りなかったので、今回はこの話をもう少し続けたいと思います(笑)。
1試合、90分の中であれだけのスピード、強度でプレーしていれば、どれだけ気をつけていたとしてもミスは起きてしまいます。ただ、そのミスをミスで終わらせないようにするために、サッカーでは同じピッチに自分以外の10人もの仲間がいます。そして、誰かによって生まれたミスを、誰かが救うことができれば、極端な話、それはミスではなくなるのがサッカーで、それが面白さの1つだと思っています。

と同時に、そういう見方ができるようになれば、観戦する側の人たちのサッカーの楽しみ方も少し変わってくるんじゃないかと思います。サッカーでは、うまくいかないとき、結果が出なかった時ほどミスに対してとても厳しい目を向けられる傾向にある気がします。「あの攻撃の作りはよかったよね」「あの守備は助けられたよね」というようなポジティブな点もたくさんあったはずなのに「あのミス、ひどかったね」「なんで、あそこで抜かれたんやろな」ということに目が行きがちというか。負けた試合は特に悔しさからネガティブな感情が膨らんでしまうのもわからないでもないし、もちろん、人それぞれの見方があるので否定するわけではありません。でも僕は、ガンバファンのみなさんにはできれば、チームや選手のポジティブな部分に目を向けてもらいたいと思っています。
90分の中で何回ミスが出たのかを数えるより、何回いいプレーがあったのかを考える方がきっと観戦は楽しくなります。またミスが出たことを誰よりも悔しく思っているのは選手自身であるからこそ、そう言う時に、前を向ける声…今なら拍手をもらえるのはすごく心強いです。実はこれは僕自身がガンバに加入して心がけていることの1つです。もちろん、試合の中では引き締めなければいけない時間帯もあるし、仲間を叱咤することでチームを奮い立たせる時もあります。ただ、一方で「ナイスカバー!」「助かった! サンキュー!」という声を意識的に掛けているのは、自分自身もそういったポジティブな声に救われた経験を何度もしてきたからです。
はっきり言って、僕もこれまでたくさんのミスをしてきたし、ここ最近の試合でもミスはしています。でも、その度に仲間の「OK! OK!」という声に助けられ、プレーでカバーしてもらって救われてきました。と同時に、だからこそ自分も「次は自分が仲間を助ける!」「仲間のミスは自分が救う」という思いで戦えてきたんだと思います。
前節の横浜F・マリノス戦に引き分けたことで、連勝は6で止まりましたが、今のガンバにはそんな風に誰かが誰かを助けて戦う、誰かのミスは他の誰かがカバーするという状況がピッチ上のいろんなところで生まれています。ヤットさん(遠藤保仁/ジュビロ磐田に期限付き移籍)という絶対的な大黒柱がチームを離れた今だからこそ、誰か一人では絶対に埋められないその大きな穴を、チームで埋めようと全員が結束しています。その流れを、この先も応援してくれるみなさんには是非、後押ししてもらいたいと思っているし、そのためにも、ガンバの今のいいところはどこなのか、何が結果につながっているのかに目を向けて応援してもらえたら嬉しいです。

最後に、ヤットさんについて少し話をしたいと思います。ヤットさんのことは、日本代表で一緒にプレーしている時から、ちょっと次元の違う感覚を持った選手だと思っていました。パスひとつであそこまでチームを落ち着かせられたり、あれだけ自分のリズム、スタイルを貫ける人を見たことがない、というくらいその存在感は際立っていました。その印象は今年、チームメイトになっても変わらず…オンのところでも、オフのところでも、どこまでも自分のリズムとスタイルで戦い、それをチームの結果に繋げられるのがヤットさんでした。
プレーの凄さについては改めて説明するまでもないですが、一番印象に残っているのは、センターバックとして「こんなにもインターセプトがしづらい選手はいない!」ということでした。最近は紅白戦で対峙することも多かったのですが、とにかくプレーが読めない。対峙しても、どこを見ているかわからないし、体が向いている方向とは違う方向にボールを出せたり、ギリギリで膝から下、足首だけでヒョイと判断を変えられたり。僕なりにプレーを読んだつもりで飛び込んでも、その動きを見て最後の最後で判断を変えられ、交わされてしまうことも多々ありました。しかも、もしかしたらピッチにはいない、もう一人のヤットさんに操られているんじゃないか? というくらいいろんなことがよく見えている。だから、18節の名古屋グランパス戦のように、途中出場でもあれだけ一気に流れを変えたり、決定的な仕事をできるんだと思います。そして、その姿を絶えず示せてきたからこそ、数々の記録を塗り替えてきた今のヤットさんの姿があるんだなと改めて思い知らされました。
その姿を間近で見ることで学ぶことは本当に多かっただけに、同じピッチでプレーできなくなるのは素直に寂しいです。ただ、一方でツネさん(宮本恒靖監督)も言っていたように「チームは前に進まなければいけない」とも思います。ヤットさんという唯一無二の象徴的な選手がいなくなったとしても、僕たちにはガンバは前に進んでいくんだということを示し続ける責任があります。だからこそ、強がりでもいいから「ヤットさんになんか全く頼っていなかったし!」くらいの強気な気持ちを示して戦い続けなければいけないし、それがヤットさんが中心になって築いてきたガンバの歴史を前に進める、ということだと思っています。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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