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ウズベキスタンから帰国してからも、バブルを形成した生活が続いています。個人的には日本代表での活動から数えるとホテル生活はかれこれ約1ヶ月になるため、家族を恋しく思う気持ちも強くなっていますが、いろんな方に協力していただいて自分たちの試合が成立していると考えても現状にしっかり立ち向かっていかなければいけないと思っています。AFCチャンピオンズリーグはグループステージ敗退という非常に悔しい結果に終わりましたが、またここからしっかり気持ちを切り替えて、ACL以上に長く続く『連戦』に臨まなければいけないし、何より自分たちの今の順位、勝ち点を考えても、しっかり結果を求めて戦っていかなければいけないと思っています。
帰国後、新型コロナウイルスの陽性者が出たことを受けて、チームは今、再び厳しい状況に直面しています。試合までの準備という点でもアビスパ福岡戦前は検査のために練習時間が大きく削られてしまったし、クラブハウスの利用が禁止になったため、今も練習後はそのままホテルに戻って各自が部屋でシャワーを浴びています。トレーナーなどにマッサージなどの体のケアをしてもらうこともできません。つまり、移動に連戦と、そうでなくとも疲労がたまる状態にありながら、各自でケアをするしかないということです。何より、プレーできない選手が増えてしまったことも、大きな痛手です。
ただ、僕らにできることは、これが自分たちが置かれている現実だと受け入れ、離脱しているみんなが戻ってくるまで、目の前の試合に全力を尽くして、できるだけ多くの勝ち点を積み上げていくことに他なりません。と同時に、より総力戦が問われる状況にある今だからこそ、『チーム』として戦うことにもう一度、気持ちを揃えなければいけないとも思っています。
試合を戦っていれば、90分間ずっと自分たちのペースで、理想通りに試合を運べることは、まずありません。その中で大事なのは、どちらかというとチームにとって良くない状況、時間帯をどう受け止め、プラスに変えていけるかだと思っています。
これは先日、U-24日本代表のホンジュラス戦をテレビ観戦して改めて感じたことの1つでした。今のU-24日本代表には、起きたミスをすぐにチームとして回収してプラスに転じていく力が備わっています。わかりやすい例を挙げるなら、攻撃にかかろうとしていた時に右サイドバックの宏樹くん(酒井)がボールを失ったシーン。その瞬間、右サイドハーフにいた律(堂安)がすごい速さで攻から守に切り替え、ボールを奪い返していました。
あそこでもしも、律をはじめとする周りの選手が、起きたミスを回収しようとせずに、足を止めてしまったら? きっとボールは30〜40メートル近く自陣まで戻され、そこからまた攻撃を組み立てなければいけないという状況に陥ったはずです。ですが、律のプレーに代表されるようにU-24日本代表はチーム全体が「取り返してやろう」というマインドでプレーを継続できたから、奪われた位置に近いところでボールを奪い返して、高い位置から再び攻撃を仕掛けることができていました。
そういう姿こそ、本当の意味で『チーム』で戦うということだし、それを実現するには、まず個々の選手がどんな状況に置かれても一つのプレーに一喜一憂せずに戦い続ける強さを備えなければいけないとも感じています。
いま、ガンバで、それを体現し続けている選手の一人が、パトリックです。ACL第6戦、全北現代モータース戦、J1リーグ21節・アビスパ福岡戦と続けてゴールを決めているパトですが、思えば全北戦ではゴールシーンより前にも何度かシュートチャンスがあり、それを決めきれずにいました。ですが、彼はその事実に対して気持ちを揺らすことなく黙々とプレーをしていました。胸の内ではいろんな思いが渦巻いていたかもしれませんが、少なからず見た目には一切表情も、プレーも変えることはなかったし、その姿勢が結果的にゴールに繋がったんじゃないかとも思います。
実際、僕はセンターバックとして、いつも相手の攻撃陣のプレー中の顔色、1つのシーンに対する反応を観察しながらプレーしていますが、1つのミスに一喜一憂することなく黙々とプレーを続け、ゴールを狙い続けるFWほど厄介なものはありません。裏を返せば、1つのシーンをひきずっているように見えたり、自分に対するイラつきを隠せない選手には、心理的にも優位に立ちながら対峙することができます。スポーツにはメンタルの部分が多分に影響すると考えても、そうして心理戦で上回った状態にあることは、きっとプレーにも影響しているはずです。そう思えばこそ、この先、いろんな選手がピッチに立つことが予想される総力戦では、個々が自分のマインドをいかにコントロールしながら『チーム』の戦いに徹することができるかも、すごく重要になると思います。
サッカーでは、FW対DFだけではなく、ピッチのいたるところで『駆け引き』があります。そこでプレーだけではなく、心理的にも上回れる状態を作り出せるか。そのために、うまくいかなかったプレーに対しても気持ちを揺らさずに戦えるか。ミスが起きたとしてもプレーを縮こまらせずに勇気を持って相手に立ち向かえるか。その上で、『チーム』として苦しい状況をプラスに転じていけるか。
そうしたマインドによって引き寄せられるチャンス、結果は必ずあると思うからこそ、僕自身もそのマインドをチームに定着させることを働きかけながら、この先の連戦にも強気に、『チーム』で立ち向かっていきたいと思っています。
昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。