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Vol.25 三菱重工浦和レッズレディース フロント/柳田美幸

  • 2021.11.17

    Vol.25 三菱重工浦和レッズレディース フロント/柳田美幸

PASSION 彼女たちのフィールド

2021年に開幕した日本女子サッカー初のプロサッカーリーグ「Yogibo WE LEAGUE」で、リーグ初年度の開幕から快進撃を続ける三菱重工浦和レッズレディース。女子サッカーの新たな歴史に初代女王として輝くべく熱い戦いを続けるクラブをフロントスタッフとして支えている柳田美幸氏に、現在のお仕事についてお話を伺った。

―まず初めに、現在のお仕事についてお聞かせください。

柳田 私は三菱重工浦和レッズレディースのフロントで今年から強化担当を務めています。昨年まではフロントの中でも特定の担当は決まっておらず皆で協力してフロント業務をしていたのですが、今年からWEリーグが開幕するにあたってスタッフも増えたので強化や広報などそれぞれ担当制になり、私はその中の1つである強化担当に就任しました。

―現在の業務内容はどういったものになりますか?

柳田 シーズンの終盤になると、来季に向けた新加入選手のスカウティング活動も始まってきますが、現在はシーズンが開幕したばかりなのでチームづくりや選手の評価といった業務が中心になります。今年から選手の多くがクラブとプロ契約を結んでプレーする形になったので昨年までと大きく変わりました。女子サッカーがプロ化したことによって、選手の活躍の有無であったり結果という部分が評価に繋がることになると思います。ですがまだ始まったばかりですし、男子と比べて潤沢な予算がある訳ではないので、活躍することですぐに翌年の年棒に反映できるとは限りませんが、今後はそういった仕組みをWEリーグでも作っていきたいなと思っています。

―2021年は女子サッカー界にとって非常に大きな1年になる中で選手を評価されるというのは今後の基準になると思うのですが、そういった難しさはあったりしますか。

柳田 評価基準として長年培ってきたものはないので、今後仕組みを作ったり基準を作りつつこちらも成長しながらやっていかないといけないと思っています。新しく女子プロリーグが発足して0からのスタートなので、クラブのフロント側も0から1を作っていかないといけないというところに難しさも感じています。

―クラブから強化担当と言われた時には戸惑いなどありましたか?

柳田 戸惑いという訳ではありませんが、やはりすごく重い責任を感じますので本当に自分で大丈夫なのかと思いました。今でも思っていますが、それでも私自身が選手時代にプロとして数年プレーさせていただいていたので、フロントに入った時もいつかは強化担当をしたいと思っていました。思っていたよりも早いタイミングでの就任ではありましたが、ワクワクする気持ちと重い責任の両方を感じています。私が選手時代にプロ契約をさせていただいていた頃は25名ほどの選手がいる中でプロ契約は3,4名しかいなかったので、クラブからプロとして評価される立場でしたしクラブからも「アマチュアとは違うんだ」と言われていたので、自分なりのプレッシャーを感じたりプロとしての責任を持ちながらプレーしていた記憶があります。

―ご自身のプロとして経験されてきたことが、現在の選手に伝えたり強化担当のお仕事に活かされたりしているのですね。

柳田 そうですね。自分がプロでやってきた時にクラブがプロとしての在り方やあるべき姿を指導してくれていたので、今度は自分がそれをやらないといけないなと思っています。ただ今年は一度にたくさんの選手がプロ契約となったので、伝え方などは試行錯誤しています。クラブには学生などアマチュア契約の選手も数名いるので1人1人と話す個別対応が多くなりますが、自分なりに伝えるべきことを伝えなくてはいけないなと思っています。

―その中で選手に大事だと伝えていることはありますか。

柳田 やはりプロとして結果が大事だよということは伝えています。その中で過程というのはこちらが評価することなので、選手本人が評価することではありません。「私はこれだけがんばったんだ」というのはプロの世界では通用しないので、結果を出すために全力を尽くすことが求められます。オンとオフというのも大切だとは思うのですが、やはりプロである以上は24時間を通してプロとしての生活をしてほしいので、そうしたことは大事だと選手に伝えるようにしています。プロとしての意識が高い選手はプレーにもそういったところが表れてきますし、選手自身も現在プロというものを模索している状況なんだと思うんですね。プロだからこうあるべきというのもあるようでないので、私の話も参考程度に聞いてもらえればというところです。本人が嫌々するというよりも、こうしたいからこうするんだという本人の意思が大事だと思うので。ただその中で結果から評価をするというところです。

―昨年と比べて今年のチームの雰囲気や環境は大きく変わりましたか?

柳田 幸い去年からスタッフも選手もそこまで大きくは変わっていないので、そういった部分では継続という言葉がぴったりで、昨年からの上積みをしている感じです。ただ選手の環境面は大きく変わりました。これまではアマチュアだったので、朝から夕方まで仕事をして終わってから練習をするというスケジュールでしたが、現在は午前中に練習をして午後はプロ選手は各自でコンディションを整える時間に充てるなど自由に過ごして、アマチュア契約の選手はパートナー企業様に勤務しているのでそちらに出社しています。定時で終業させていただけているので夕食もしっかりとって早めに寝て翌日に備えるという形で、昨年までと比べてスケジュールは大きく変わりました。それでも今シーズンから開幕が9月になったので、準備期間が長かった分スケジュールの変化にもスムーズに適応できたと思います。

―柳田さんの普段のスケジュールを教えていただけますか。

柳田 大体いつも練習の1時間前くらいに出社し、練習が始まるまでは選手と話をしたり作業をしたりしています。9時から11時頃まで練習をしているのでその間グラウンドにいて、練習後も選手と話をしたりするので午前中はグラウンドで過ごしています。午後は事務作業などをして、夕方からはユースやジュニアユースの練習を見に行くか週末の試合の準備をしています。アウェーゲームの時は遠征時の宿泊や移動の手配もしていたりするのでチームと一緒に移動したり前泊したりもするのですが、この業務は昨年まで別の方が担当されていたので今年になって業務を引き継ぎしていただき、教わりながら手配業務をしています。まだ慣れていないので手配漏れがあったらどうしようと毎回ドキドキしてしまうのですが、ミスがないように慎重に業務にあたるようにしています。

―ご自身のサッカーとの出会いはどういったものでしたか?

柳田 小学校2年生の時に近所のお姉さんがサッカーをしていたので、そのチームに遊びに行ったというのがきっかけです。そこからサッカーをずっと続けてきて、Lリーグやなでしこリーグでもプレーさせていただきました。1996年にLリーグデビューをして引退したのは2012年なので16年ほどプレーさせていただきました。この16年間で多くの試合に出場できてそれぞれの場面場面で思い入れがあるので、この試合が1番というような印象深いとかベストゲームといったものがないのですが、どの試合も大切な思い出として残っています。
引退後はクラブのスタッフとしてチームに携わらせていただきました。そこでは女子だけではなく男子も含めたクラブ全体の仕事で、ホームタウンであるさいたま市浦和の地域に密着する活動や行政の方々と携わらせていただくような業務をしていました。
その後2017年から2年間コーチを務めて、2019年からレディースのフロントスタッフとなりました。選手時代と引退後を含めて30年以上サッカーに関わっているので、人生のほとんどがサッカーといった感じになっていますね。

―現在もサッカーをプレーされたりすることはあるのですか?

柳田 今は全くしていないですね。自分の頭の中ではイメージしたりしますし、練習中にボール拾いをしたりするのですが体力が落ちるのは本当に早いなと感じています。

―サッカーを始めた頃は男子に混じってプレーされていたのですか?

柳田 小学生で入ったチームは女子サッカーチームだったので、男子に混じってプレーをするということはありませんでした。振り返ると女子サッカーができる環境に恵まれていたなと思うのですが、その出身チームは数年前に解散してしまったので寂しい気持ちがありますね。

―ご自身のいたチームが無くなったことで、クラブのユースやジュニアユースの選手たちへの思い入れも更に強くなったりしますか。

柳田 そうですね。日本にはU-15の女子チームが少ないのでそこも変わっていって欲しいと思います。小学生では男の子と混ざってプレーしている女子選手もいますが、中学生になった時にあまりにもチームがなかったり、部活でも女子サッカーが無い中学校が多いのでそこでサッカーを離れて他の競技に移ってしまう子が多かったりします。レッズにはジュニアユースがあるのでそこでがんばってほしいという思いはあります。希望者全員を受け入れることはできないのですが、サッカーを続けたいと思ってくれる子がいるのはありがたいですし嬉しいですね。今年WEリーグが開幕して、女子サッカーのプロ化をきっかけにサッカーをやりたいという女の子が増えてくれることが理想です。そのためにもWEリーグを知ってもらいたいですし、自分達のがんばりももっと必要ですがマスコミなど多くの方の力をお借りして盛り上げたいですし、サッカーをやりたいという子が1人でも増えることを願っています。

現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、感染予防の観点から子どもたちとの交流やサッカー教室などの普及活動というのは難しいのですが、緊急事態宣言も解除されて今後状況が改善されていけばそういった活動もしていきたいと思っています。これまでは地域に密着した活動もおこなっていたので、地元に応援していただけるチームとしてもそうした活動ができるようになってほしいですね。選手自身も女子サッカーがプロリーグとして開幕するに伴い、自分達が集客しなければいけないとか、子ども達に女子サッカー選手になりたいと思ってもらえるようにしないといけないという意識がすごく強くて、選手達から地元の商店会を回りたいとかサッカー教室をしたいと言ってくれています。選手もそういう気持ちを強く持ってくれているので、今後は普及活動も状況に合わせながらやっていけたらと思っています。

―サッカーに携わるお仕事をされていて、やりがいはどういったところにありますか?

柳田 他の仕事をしたことがないので何とも言えないのですが、サッカーを通じたいろいろな方との出会いというのは私の中で宝物ですし、その中でも一緒に戦った仲間というのは本当に大切な方達ですね。やはり同じ目標を持って共に戦うというのはすごく刺激的ですし、毎日楽しいです。私の仕事内容も1日中パソコンに向かっているようなデスクワークではなく、選手とコミュニケーションをとりながらおこなう仕事なので業務時間もあっという間に過ぎてしまう感覚ですし、時には選手から「今仕事中ですよね?」と確認されるくらい楽しんでいることもあります。それくらい楽しいしやりがいのある仕事だと感じています。

―今のお仕事で理想とされている人物像はありますか?

柳田 こういう人になりたいという理想像はありますが、その方はチームのことをすごく考えていて「どうしたらうまくいくんだろう」ということをいつも考えてくれていた方なので、自分もその方の様にチームに対して愛情を持ってやっていきたいというのもありますし、どんな時でも動じない強さがその方にあったので、私も芯を持って取り組みたいと思います。

―将来の展望はありますか?

柳田 強化担当はチームづくりに関わるところなので、理想としては選手としてもスタッフとしても「レッズにいきたい」「レッズにいて良かった」と思ってもらえるようなチームづくりをしたいので、そのためにできることをしていきたいと思っています。私自身もレッズにお世話になったので恩返しがしたいという思いがあります。選手を引退する時もこのクラブで何か自分ができることで少しでも恩返しができればという思いで残らせていただいたところもあります。今の選手やこれからの人に恩返しをしてほしいという訳ではないですが、選手には入って良かったとか、入りたいなと思ってもらえる温かいクラブにしていきたいなと思っています。

―素敵ですね。柳田さんが思われるクラブの良さってどういったところですか?

柳田 選手が皆熱い気持ちを持っているところや、思いやりがあるところ。あとは目標に向かうために一致団結した時のパワーはすごいなと思っています。選手はベテランもいますがユース出身の選手も多くいて、昔から一緒にやってきているので彼女達の絆というのは見ていて微笑ましいですし、良いなと思いますね。もちろん他クラブから移籍してきてくれた選手もいますがすぐに馴染んでいるので、バランスは良いのかなと思います。

―ありがとうございました。

<プロフィール>
柳田 美幸(やなぎた・みゆき)

1981年神奈川県出身。小学校2年生からサッカーを始め、1997年に16歳でLリーグデビュー。2021年に引退するまでの16年間でリーグ優勝や皇后杯JFA全日本女子サッカー選手権大会優勝など多くのタイトルを獲得。日本代表でも活躍し、女子ワールドカップやオリンピックにも出場する。引退後は浦和レッドダイヤモンズのクラブスタッフとして活動し、浦和レッズレディースのコーチを経て2021年より三菱重工浦和レッズレディースの強化担当を務める。

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