©GAMBA OSAKA
横浜F・マリノス戦は、全員で我慢して掴んだ勝利だったと思っています。首位を走るマリノスと残留争いの渦中にある自分たちの力の差を受け入れた上で、ボールを持てる時間も少なくなるだろうし、基本は攻められる時間が長くなると予想していました。また前回の発源力で書いた通り、柏レイソル戦では有効に使えなかった『セットプレー』が勝負を分ける鍵になるということも全員が理解して準備をしてきました。今シーズンのマリノスは高さのある選手が少なく、フォアサイドから折り返されて失点することが多いという分析もあってのことです。試合当日、いざ、蓋を開けてみても、マリノスは数少ない高さのある選手…エドゥアルド選手とアンデルソン・ロペス選手をニアサイドに固めてきたので、1点目のようにフォアサイドにボールが入ればヘディングの強いダワンなら競り勝って折り返せるだろうと考えていました。今のガンバにはそこに確実に合わせられるキックを蹴れる貴史(宇佐美)がいることも有効に使いたいと思っていました。結果、その展開通りにアラーノ(ファン)が8分という早い時間帯にゴールをこじ開けてくれたことで、残りの時間も勇気を持って試合を進められた気がします。
もっとも早い時間帯に先制点を奪えた=いい入りができたということでは決してありません。むしろ、入りだけを見るなら、ここ数試合で一番悪い出来だったんじゃないかと思います。正直、過去の経験をもとに個人的には優勝マジックが点灯したチームは硬い入りになることが多いと思っていましたが、この日のマリノスに硬さはなく、むしろキックオフと同時に怒涛の攻撃を仕掛けられました。開始1〜2分の時点で、相手のコーナーキックが何度も続いて嫌な流れになっていたし、それ以外のシーンを含めても、5分以内に先制点を奪われてもおかしくない入りだったと思います。
ただ、今シーズンの僕たちは、セットプレーでの失点がリーグ最少だということも自信にそこをみんなで凌ぎ切り、最初のチャンスというべき8分のセットプレーをゴールに繋げられました。それは先に書いた『勇気』につながるだけではなく、僕らがゴール前に作っているブロックに、マリノスが突っ込んでこなければいけなくなるという状況を作り出しました。仮にマリノスが先制点を奪っていたら、逆に僕たちが前に出て行かざるを得なくなり、必然的に生まれるスペースを使われてマリノスにやりたい攻撃をさせてしまうという展開になったはずですが、僕らが先制したことで、ガンバが無理をして前に出て行く必要はなくなり、結果、マリノスにはスペースがなくなりました。それでも、何度かそのスペースに割って入られたのは、首位を走るチームにふさわしい攻撃の精度があってこそだと思います。でも、それに対して僕たちもヒガシくん(東口順昭)、弦太(三浦)、僕が真ん中をしっかり固めて最後は確実に弾き出す守備ができていました。結果、失点することなく試合を進めながら、途中から出てきた選手も集中して試合に入ってタスクを全うし、79分には再びセットプレーから追加点を奪って勝利を掴むことができました。
ただし、この勝利を本当の意味で「大きなものだった」と言えるものにするには、残りの2試合を勝たなければいけません。首位のマリノスに勝利したからといって勝ち点6が手に入るわけではなく、残りの2試合でJ1残留を決められなければこの勝利も何の意味も持ちません。実際、マリノスに勝ったからと言って気持ちが緩んでいる選手はいないし、勝ち点3を積み上げてもなお順位を含めて何も変化していない現実に危機感を募らせています。特に、次節のホーム最終戦、ジュビロ磐田戦は、約3週間のブレイクを挟んで試合を迎えます。しかも、相手のジュビロは同じ状況で試合を迎えるわけではなく、このブレイク中にも1週間おきに未消化試合を2つ戦いながらリズム良くパナスタに乗り込んでくることが予想されます。一見、休める方がフレッシュに次の試合に入れるんじゃないかと思われがちですが、選手にしてみれば、変にブレイクを挟むよりコンスタントに試合を戦っている方がコンディションは作りやすいです。何より、うちであればマリノス戦で勝利した勢いをそのまま次節に持ち込めますが、3週間も試合間隔が開けばそうはいきません。
と、考えても僕たちにとって、このブレイクがいかに重要な時間になるのかということを全員が心して過ごさなければいけないと思っています。と同時に、このブレイクをリフレッシュするための時間ではなく、自分たちが着実にパワーアップし、さらに自信を膨らませてジュビロ戦に向かう時間にしたいとも思います。
そうした過ごし方を意識する上で、ここにきてコロナ禍では初めて、チームのトレーニングが一般公開されることも追い風にしたいと考えています。メディアの皆さんには少し前から週に1回、トレーニングが公開されてきましたし、10月12日には初めて一般公開され、約150人の方に足を運んでいただきましたが、やはり「誰かに見られている」ことで生まれる意識とか、他者の目に晒されることでチームに生まれる緊張感はあるなと感じました。しかも、先にも書いた通り、残り2試合になった状況での長めのブレイクをいかに緊張感を持って過ごすのかを考えても、よりたくさんの方に見ていただける状況をプラスに働かせたいと思っています。だからこそ、残り2回、10月18日、25日に予定されている一般公開にはぜひたくさんの方に足を運んでいただきたいです。そのパワーも力にしながら、僕たちは全員で今一度気持ちを揃えて、ジュビロとのホーム最終戦に向かい、勝ち切りたいと思います。
昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。