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Vol.1 リーグアン・ナントでトップのコーチを務めるけど“普通の人”!?

  • 2022.12.20

    Vol.1 リーグアン・ナントでトップのコーチを務めるけど“普通の人”!?

太田徹のフランス珍道中

今回、レイボーラで連載を始めさせてもらうことになった太田徹です。今はフランスのリーグアン・ナントでトップチームのコーチを務めています。そもそもの話では、これまで取材を受けたこともあまりないですし、このような形でお話する機会ができるなんて考えもしませんでした。自分がやっていることや考えていることを表現するだなんて、誰も興味を持たないだろうと(笑)。でも、今回はいつもお世話になっている方からお声がけいただき、“その依頼にはぜひとも応えなければ!”ということで、ちょっとやってみるかという感覚になって始めさせていただくことになりました。
僕が伝えられることは何か。改めて、そして初めて考えてみたとき、「こんな普通の人間でもなんでもやれる、サッカー界における欧州5大リーグと言われるフランス・リーグアンのトップチームコーチを務めることができるんだ」ということをメッセージとして伝えられればと思いました。僕は元プロサッカー選手でもなければ、海外で何か特別なことを経験した人間でもありません。本当に、普通の人です(笑)。運とか行動力があれば、能力や才能がなくても、誰しもがたどりつける世界であるということを伝えられればと、今回の連載を始めさせていただければと思ったのです。

僕は将来的に日本でいう“町クラブのお父さんコーチ”を目指したいと思っているんです。これは例えた表現ですが、そこが単純に利益や有名無名関係なく、サッカー好きが集まっている僕の勝手なイメージなのですが(笑)、子どもたちもまずはそこからスタートですものね。お父さんコーチは基本的にボランティアで、多くの方が自分の時間や家族の時間を使ってまでやっています。そういった環境であれば、単純に純粋なサッカー好きが集まる感覚になる。僕はそういうところが一番しっくりくるんです。さらに、最終的にそこに行き着くまでにトップレベルでいろいろな経験をした上でなりたいんです。よく海外を経験していると特別なことをしていると見られる傾向にありますが、僕自身はそんなにすごいことはしてないと思っています。僕の言ったことに対して「違くない?」って言ってくれる人も大歓迎だし、逆に「それはいいことだよね」と思ってくれる人がいたらそれはそれで嬉しいです。これまで自分の発言に責任を感じたことはなかったですが、ちゃんと言葉に責任を持って皆さんにお伝えしていければと思っています(笑)。

フランスに来て16年が経ちました。まさに今、リーグアンにいて感じるのが、監督や選手の能力に大きく差があるわけではないということです。結局、何で差がつくのかというと、存在感でアピールする力があるとか、カリスマ性でチームを引っ張っていくとか、そういうところに行き着くのではないかと感じています。何か特別な指導をすることでチームを劇的に変えることができるということではなくて、やはり人と人が集まって、チームとして戦うわけです。そのためには、それぞれの選手たちがいま持つ能力を最大限に発揮できる環境づくりが重要になるのではないでしょうか。
これは2003年に「フランスに行きたい!」と思ったときに感じたことなのですが、ちょうどそのときにモウリーニョが、スペシャルワンと言われポルトを率いて欧州チャンピオンズリーグで優勝しました。ちょうどその後にチェルシーの監督になった時期です。そのときからこのような監督のいるチームと戦えるようなチームで自分がスタッフとして働ける日が来たら、コーチとしての実力もかなり目標に近づいているだろと、と想像していました。そんな思い出もあり、モウリーニョの自伝本を部屋の机の上に今も飾っています(笑)。
これまでにも有名な監督と対戦してきましたが、パリSGを率いて先日までチェルシーの監督をしていたトゥへル、昨年のP S Gの監督だったポチェッティーノ、昨年までマルセイユを率いたホルヘ・サンパオリ、ビラス・ボアスもそうでしたが、やはり風格があるんですよね。あれはなかなか出てこない“ボス”っていう感じのオーラがあるんです。僕もそんな風格を備えられるように……見た目が厳しいかなあ?(笑)。そこに向かって挑戦を続けているところです。

僕自身は、このコラムを読んでいただいた方に、ただフランスの真似をするのではなくて、皆さんのいる環境と海外の違いについての判断材料になったり、それを踏まえて皆さんのチームで少しでも良いものができることにつながればいいなと思っています。サッカー界においてトップチームの、ましてやフランス・リーグアンのクラブのトップチームのコーチをするなんて、特別な世界と思われているかもしれません。でも、そうではなくて、僕みたいな普通の人間がその道にたどり着いた経緯、そして、どうしてここまで来られたのか、その上でどんなことを考えるようになったのか。同じ道を目指す皆さんにも実現できるもので、より身近なものとして感じてもらえればと思っています。それが最初の伝えたいメッセージです。これからさまざまなお話ができればと思うので、ぜひ僕の珍道中にお付き合いください!(笑)

  • 太田 徹Toru Ota
  • Toru Ota

    1981年07月11日生まれ。
    東京都出身。
    武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
    2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
    2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。

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