COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol.71 若い選手の躍動も後押しした勝利

Vol.71 若い選手の躍動も後押しした勝利

  • 2023.03.07

    Vol.71 若い選手の躍動も後押しした勝利

発源力

©KASHIMA ANTLERS

J1リーグ2節・川崎フロンターレ戦は、『声』を取り戻したカシマスタジアムに鳥肌が立つくらい興奮し、パワーをもらいました。ホーム開幕戦とか、相手が川崎フロンターレだとか、いろんな条件が揃ったのもあったかもしれませんが、約29000人もの人たちの熱狂が渦巻くホームは本当に最高で、試合中はスタンドからずっと「僕も早く試合がしたい!」「カシマスタジアムのピッチで戦いたい」と思っていました。

だからこそ、カシマスタジアムが勝利に湧く姿を見たかったです。というか、早い段階でリードを奪って試合を進めた展開からも、相手に先に退場者が出て数的優位の状況だったことからも、勝たなければいけない試合だったと思います。もちろん、戦っている選手にしかわからない試合の空気感、川崎の威圧感はあったはずで…だからこそスタンドから見ていた僕が多くを語るのは違うと思いますが、ただ、言えることがあるとするなら、大樹さん(岩政監督)がオフ明け、初日の練習で言っていたことが全てだったと思います。
「よく『いい経験をしました』って言うけど、経験って、それを味わっただけなら、いい経験も、悪い経験もないぞ。自分がした経験を自分自身で消化して次に活かして初めて、いい経験と呼べるものになる。何も活かせなかったら、ただの経験、ただの悔しい負けで終わるぞ」

横浜FC戦を迎えるまでの1週間は、その言葉を実感する時間になりました。誰もが今回の経験を、悔しい負けで終わらせたくない、という思いで練習に向き合っていました。その先頭に立ったのが、川崎戦で退場になったタロウ(荒木遼太郎)でした。川崎戦後、初めてタロウと顔を合わせた際に僕は一言だけ「今週の練習は、お前が一番頑張らないとあかんな」と声を掛けました。もちろん、川崎戦の敗戦がタロウの責任だとは微塵も思っていませんが、退場になったことで翌節が出場停止になるという点においてチームに迷惑をかけたのは間違いないからです。
そして、彼もそれを自覚していたからだと思いますが、今週の練習で一番戦っていたのはタロウでした。特に水曜日に行われた紅白戦ではチームのために、全力で相手役に徹しながら気迫あるプレーを魅せていたし、それは他の若い選手も然りでした。

この紅白戦を始めるにあたり、僕たちサブ組チームは「これが俺たちの公式戦だ。本気でレギュラーを取りに行くぞ。この紅白戦に勝って、俺らの方が強いことを証明してレギュラーを奪おうぜ」と気持ちを揃えて試合に入りました。もちろんそれは僕自身にも投げかけた言葉で、全体練習に合流した限りはベテランとしてチームに『変化』を与えなければいけないと思っていました。そして若い選手もまた、その『本気』をプレーで表現していましたし、タロウにも引っ張られて、それぞれが自分を示しながら気迫の感じられるプレーを見せ、結果としてもスタメン組を上回りました。

そして、チーム内にそういう雰囲気があったから、僕は横浜FC戦の勝利も生まれたんじゃないか、と考えています。
公式戦前の紅白戦でスタメン組が負けたと聞くと、大丈夫? と思う人もいるかもしれませんが、僕は必ずしもそうだとは思っていません。実際、先週の紅白戦ではサブ組が勝利したことで、スタメン組に対して「お前たちはまだ、川崎の負けを引きずっているのか?」「サブ組に圧倒されたのは何が理由だ? このままでいいのか?」というメッセージを与えられたはずだし、少なからず大樹さんも横浜FC戦のメンバーを決める上で頭を悩ませたと思います。もちろん、紅白戦でたった一度、アピールできただけでレギュラーを取れるほど甘い世界ではないですが、少なからずサブ組がスタメン組に与えた刺激は、チーム内にいい競争心をもたらし、再びチーム全体が熱を上げるきっかけになったんじゃないかと思っています。

実際、横浜FC戦はすごくいい入りができていました。過去2試合も然り、開始10分までの間に得点が生まれたことも追い風に、チームが落ち着いて試合を進められていたし、何より試合の締めくくり方もすごく良かったと思います。展開的には、また川崎戦の反省も踏まえ2-1でしっかり勝ち切ろうという共通理解もあったはずで、セオリー通り、コーナーフラッグあたりで時間を稼ぐことで時計の針を進めていた時間もありました。ですが、一瞬、チームとしてのギアを上げた時間帯に「もう1点取れるぞ」という空気が生まれ、それをみんなが察してしっかりとスピードを上げ、3点目を取り切りました。その姿にはすごく逞しさも感じたし、「これぞ鹿島」というようなDNAもしっかりと確認できて嬉しくもなりました。しかも、ショッキングな敗戦をした川崎戦の直後の試合で、ああいう勝ち方をできたのは、チームとして経験を、いい経験に転換できた瞬間でもあったんじゃないかと思います。

と同時に、繰り返しますが、その勝利の影に紅白戦で躍動した若い選手たちの姿があったことも忘れてはいけません。明日、8日から始まるルヴァンカップはある意味、若手選手の登竜門と言われている大会で、おそらくは連戦ということもあって、その若い選手たちにも出場チャンスが来るはずです。なので、サポーターの皆さんにもぜひ、J1リーグに出場したメンバーに負けじと戦い続けている若い選手たちの姿を、未来の鹿島の姿をぜひ観に来てもらいたいと思っています。皆さんに応援してもらって公式戦を戦えるという喜びも、若い選手たちの成長を後押しする大きな要素になるはずだから。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

REIBOLA RADIO 配信中!