日本ではオフシーズンが終わり、Jリーグが開幕している頃かと思いますが、ヨーロッパではシーズンも後半戦に入り、上位争い・残留争いが白熱しています。そんな中、ヨーロッパのカップ戦も再開し、さらなる過密日程に突入しました!僕が所属しているFCナントは、ヨーロッパリーグのプレーオフでイタリアのユベントスと対戦しました。
結果は2戦合計1−4で敗退。アウェーでの初戦は、1−1の引き分けで、フランスのスポーツ紙でも一面に挙げられ、クラブやナントの街だけでなく多くの所で反響がありましたが、第2戦では、開始直後にディ・マリアにスーパーゴールを決められてしまい、直後にペナルティエリア内のハンドでレッドカード&ペナルティ…最終的には0−3で破れ、プレーオフで敗退が決まりました。
そんなユベントスとの2戦から得た経験からいくつかのことを書きたいと思います。まずはサッカー文化。イタリアは、術の国として以前から有名ですが、内容はともかく勝利が大事という国柄と聞いていました。ユベントスは1―5―3―2のシステムを採用していますが、試合前の分析から、試合中盤になると自陣に引いてブロックを作りがっちり守り、ディマリア・キエーザ・ブラホビッチの3トップでカウンターを仕掛けてくるのは分かっていました。しかし、あのユベントスがフランスリーグの中堅クラブ相手にそのような戦術を取るのかと多少疑問に思っていましたが、ホームの初戦・さらにはナントが退場者を出した後にもこの戦術を採ってきました。フランスでは、ユベントスとの前日、パリサンジェルマンがバイエルン相手にホームで守備的な戦術を採ったことで、監督・チームとも大バッシングを受けていましたが、トリノではブーイングも口笛も全くなし。試合後スタッフと話をした時にこの話題になり、「フランスでは、格上のチームがこの戦術は採れないね」と、フランスとの違いを感じました。
次にサッカーのレベルについて。普段はリーグアンがメインの舞台ですが、パリを除くと今回ヨーロッパのビッグクラブと試合をやる初めての機会でした。分析のために多くのセリエAの試合を見ましたが、ナントの分析担当のスタッフと「伝統あるビッグクラブは、凄い戦術があるというか、当たり前のことを非常に高いレベルでやっているよね。」という話になりました。メッシ・エンバペ・ネイマールのような世界最高の選手となると、戦術の問題を超えた次元のプレーをしてくることがありますが、ユベントスは非常にシンプルなサッカー。守備的にも見えますが、スター選手も含めて全員で規律を保ちながらブロックを作り、才能あるオフェンス陣を生かすサッカー。そこにディ・マリアのような選手がオフェンス面でクリエイティブさを加えていきます。フランスに来たばかりの頃、対人の激しさ、パススピードなど日本とフランスサッカーの大きな違いを感じ、出来るだけフランスの感覚を身に付けようとしたことを思い出しましたが、今回はヨーロッパリーグ版です。サッカーのパフォーマンスに関する1つ1つの基準をもっと上げていかないといけないんだな、と言うのを学んだ2戦でした。
ナントは以前に書いたように、22年ぶりにヨーロッパのカップ戦に出場しましたが、最初は予選突破すら期待されていなかったのが、予選を突破し、ユベントスとも対戦が出来て、クラブ・ナントの町も本当に盛り上がりました。スタジアムや街中で「頑張って!」ではなく、「ありがとう!」と声をかけられます。僕は何もしていませんが、こういう風景を見るとサッカーというスポーツが与える影響の大きさを感じますね!外からでは分からなかったヨーロッパリーグの醍醐味、また経験出来るようにリーグ戦・カップ戦頑張りたいと思います!
太田 徹Toru Ota
1981年07月11日生まれ。
東京都出身。
武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。