柴田 麗Urara Shibata
管理栄養士/公認スポーツ栄養士
大学にて体育の教員免許を取得後、カラダを動かすことから食べることの世界に興味を持ち、栄養学を学んで管理栄養士を取得する。筑波大学修士過程を修了した後、05年に明治製菓株式会社(現・株式会社明治)に入社。
様々な競技のトップアスリートの栄養サポートに携わり、19年3月に退社。現在はフリーで活動している。好きなスポーツに出会うことは人生を豊かにすると信じてやまない。
『2011FIFA女子ワールドカップ』における女子日本代表の優勝を機に、サッカー人口で女性が占める割合が増加し、国内でもより注目を浴びる競技となってきました。
近年では、女性選手の活躍を後押しする環境整備や制度も整い始めています。例えば、出産後のアスリートへの復帰サポートや女性指導者の育成などです。しかし、女性アスリートの医科学情報については、まだ触れられる機会が少ないのが現状です。選手、保護者、指導者など女性スポーツに関わる全ての人が、女子と男子ではカラダをつくる物質(ホルモン)が異なるため女子には女子のカラダに合ったコンディショニングが必要であることを学ばなければなりません。
コンディショニングにおいて大切な食事についてはどうでしょうか。
成長期の女子サッカー選手の課題の一つに、食事制限があります。女子は成長期を迎えると体脂肪が増え、丸みを帯びたカラダへと変化していきます。これは健全な発達のしるしですが、今までとは異なるカラダつきになるため、「太った」=キレが悪くなる、走れなくなると思い込んでしまうことがあります。そのためハードな練習をしているにも関わらず極端な食事制限をして日常的にエネルギー不足に陥ってしまうのです。
確かに必要以上の体脂肪は重りとなり、キレが悪くなったり、持久力の低下などにつながりますが、体温を維持したり、カラダを衝撃から守る大事な役割をするカラダの構成成分でもあります。個人差はありますが、体脂肪率が15%以下になるとホルモンの分泌に影響し、月経異常や疲労骨折のリスクにつながることもあります。その他にも、食事制限により、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の不足が続き、貧血や骨密度の低下、風邪症状を起こしやすくなるなどコンディション全般に不調が見られるようになります。
女子サッカージュニア選手の基本も「栄養フルコース型」の食事です。①主食、②おかず、③野菜、④果物、⑤乳製品を意識した食事を1日3食、食べる習慣をつけます。
太るからと、朝食や夕食を抜くようなことは避けましょう。また、食事の代わりに、お菓子や菓子パンを選ぶのは、栄養不足に陥る危険があります。
例えば、鮭おにぎりとチョコクロワッサン。クロワッサンの方が軽そうだからとクロワッサンを選ぶ選手もいます。ですが、カロリーを比べると圧倒的にチョコクロワッサンのほうが高く、摂取できる栄養素の種類も少なくなります。おにぎりは水分も多く、重量があるので食べた後、太ったかもしれないと感じてしまいがちですが、実はそうではありません。長い目で見たときに、女性サッカー選手としてのカラダをつくることを考えたらどちらを選ぶべきか考えてみましょう。
自分のカラダの仕組みを知り、女子サッカー選手として華麗に戦えるカラダを目指していきましょう。