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Vol.55 一般社団法人TRE代表/長谷川 太郎

  • 2023.05.24

    Vol.55 一般社団法人TRE代表/長谷川 太郎

指導者リレーコラム

日本初ストライカーに特化した指導を行う長谷川さん。世界で活躍するストライカーを育てる「2030年みんなで育てよう!W杯得点王」プロジェクトを立ち上げ、全国各地を飛び回りストライカークリニック、ストライカーキャンプなど人気のイベントを数多く主催。ゴールを通じて夢や目標を実現する姿勢を子どもたちに見せ続ける長谷川さんに、挫折も多くあった半生から前列のない「ストライカーコーチ」として知られるようになるまでの軌跡、また仲間と共に進化し続ける現状とこれからについて、お話をうかがいました。

―現在の活動について教えてください。

長谷川 2030年にW杯の得点王を生み出すストライカーのプロジェクトを2015年に立ち上げ、ストライカーを育てる「ストライカーアカデミー(サッカースクール)」を開講校、また「ストライカークリニック」「ストライカーキャンプ」「THE KING OF STRIKERS(大会)」というイベントなどもを開催しています。
また、指導者向けのストライカーコーチ講座を開き、コーチ養成についても普及活動をしています。

―活動を始められた経緯は?

長谷川 日本でプレーした後インドでプレー。2014年に帰国しました。その後1年くらいサッカーから離れて、アルバイトや会社員をしていました。
その1年間は、思うように人の役に立つことができなくて、自尊心をうち砕かれるような時間でした。その中で自分に何かできることはと考えたとき、サッカー以上にワクワクできることはありませんでしたし、サッカーなら人の役に立てるんじゃないかと思いました。
指導者の道を考えたとき、すでに優れた指導者はたくさんいますので、自分が突き詰めてきた「ストライカー/ゴール」というキーワードが頭の中に浮かびました。そして2015年1月、アジア杯のUAE戦で、日本代表が決定力不足で負けたとき「あ、これはやらないと」と、ストライカーの養成をやっていこうと思い立ちました。
わかりやすい目標が必要だと考えて「2030年 みんなで育てよう! W杯得点王」とテーマを掲げて活動を始め、現在9年目に入りました。

―賛同してくれる方はすぐに集まりましたか?

長谷川 最初は「ストライカーの育成ってなにやるの?」とか、「ただのシュート練習じゃないの?」とか、あとは「2030年に得点王を生み出せなかったらどうするの?2030年越えたらどうするの?」とかいろいろなお声はありました。
ゴールデンエイジと言われる10〜12歳くらいの子どもたちが25歳前後に成長したときに得点王が生まれたらいいなと思い目標を2030年に定め、「叶うか叶わないかではなく、目標を叶えるためにみんなで力を注いでいく、力を合わせていくのが大事」という思いが届くように、半年間ほど貯金を切り崩しながら、毎日SNSでの発信を続けました。
続けていくうちに「じゃあ、うちでやってみて」っていう話をいただけるようになり、そしてつい最近なのですが、当時ストライカークリニックに参加してくれた子がプロデビューを果たしてくれました。2020年にストライカーコーチとしても関わらせていただいた慶應大学の選手も、先日Jリーグで今年初ゴール決めるなど、活動を継続していてやっと活躍してくれる選手たちが出てきて、すごく嬉しい気持ちでいます。

―ストライカーは主にFWですけど、ストライカークリニックの出張レッスンの場合は、チームですし、いろんなポジションの子も参加するんですよね?

長谷川 ストライカーっていう定義を子供達に伝えるときに「FWはポジションだけど、ストライカーっていうのはポジションじゃない」という話をします。
ゴールを決めるだけではなく、今日は自分がゴールを決める、勝利に導くという志やストライカーに必要な技術や想いというのは、違ったポジションでも必要になってきます。
たとえばコントロールしてシュートを打つっていうのは、コントロールしてロングキックを蹴るのと同じことです。ストライカーのことを学ぶのはキーパーやDFの選手の成長にも必ず繋がってくるので、そのことは指導者の方々にも説明します。
シュートというのはボールの持ち方などももちろんですが、プレッシャーの中で打つ瞬間に駆け引きしつつ、決断していく力も養います。色々な場面で今まで知らなかったアイデアを学ぶことは、守備のところで確実に活きてきます。
ストライカーが育つことで、対峙するGKとDF、そしてパスを出すMFの選手たちも伸びてきます。ストライカーの目線になることによって、いろんな役割の選手たちが強化されていくのは間違いないことだと思います。そういったところを指導者の方々も大切に感じてくださり、呼んでいただけていると思います。
現在6ヶ所あるストライカーアカデミーはストライカーの塾のような役割です。一方、ストライカークリニックというのは地域で開催し、チーム単位の練習に呼ばれることもあります。いつもの練習の中で刺激を入れる役割でスポット的に呼んでいただく場合と、ストライカーコーチという形でチームにたずさわらせていただく場合があります。
ブリオベッカ浦安ではトップチームから育成の小学生まで指導させていただいています。ブリオベッカ浦安は昨年JFLに昇格されたので、微力ながら自分も貢献できたのかなと思っています。

―指導している上で大切にしているのはどんなことですか?
求められている部分と、ご自身が大切にしているところをお聞かせください。

長谷川 監督・コーチが考えるチームコンセプトチーム戦術を把握した中で、自分自身は個主にシュートトレーニングでアタッキングサード(ピッチを3分割したときに相手ゴールに近い3分の1のスペース)でのアイデア、ストライカーの動き出し、それに対してパスをどう出すとストライカーは動きやすいか、みんながどう動いたら余分なステップが減るのか、そういった細かいところを伝える機会を頂いています。
選手に伝える際に意識しているのは、選択肢をいくつか提示してあげるということです。かつて会社員をしていたときに自分で考えて動いてみようって言われたことがありました。でも、そもそも知識がなく、考え方がわかりませんでした。
選択肢があったら一つ選べると思いますが、イメージがまったく湧かないものを考えてみるって大人の自分でもむずかしい。子どもたちも「好きなようにプレーしていいよ」って言われても、難しいのではと感じました。
3つくらいのイメージを持たせて、その上で「こういうのもあるよ」「これがベースだけど、このシーンではこういうのもあったよ」とか「元ブラジルの選手はこういうことやってたよ」と、まず選択肢を伝えた上で、さらに発想を増やしていく感じにしています。
まずはゴールの基礎の部分を作ってあげたいと思っています。シンプルなことですけど、速くドリブルするためにはどういう要素が必要だろうか、うまくいかない原因と、それを改善するためにどうするかを少しずつ自分で考えていけるように促しています。
指導するときはだいたい3つで分けます。というのも心技体や、早起きは三文の徳といったように「3」という数字がまとめやすいなと思っていて。会社名の「TRE(トレ)」はイタリア語で「3」なんですけども、3つでポイントを絞り、心技体の視点で分析することを意識しています。

―ゴールに特化した技術とは?

長谷川 「TRE 2030ストライカープロジェクト」では、フィジカルやポジショニングなど以外にもイメージというものを大事にしています。監督、ストライカー以外の選手、ストライカー、その3者のイメージを合わせるということです。
イメージを合わせるために、3者の意見をそれぞれ聞いていくボランチ的な繋ぎ役を自分が担えるよう心掛けています。選手にはまずイメージを持ちチャレンジしてもらい、その中で出てきた課題を改善できるように(アレンジ)意識してもらっています。
数パターンをベースに考えていきながら、まれにこういったパターンもあるよ、とかイメージをすり合わせていくような役割です。

―今までこういった部分的に特化した指導というのは世界レベルを含めて、あったのでしょうか。

長谷川 ストライカーに特化しているのは世界でも多くはないと思います。日本では初めて「ストライカーコーチ」としてチームに関わらせていただきました。
浦安JSC(現:ブリオベッカ浦安)時代も、プレーをしながら指導する機会があり、ユースとかジュニア、中学生高校生だけでなく、指導者からもシュートについて聞かれることが多くて、需要を感じていました。
また、子どもたちに1時間シュート練習やってくれと言われて、最初は1時間もシュート練習だけをできるのかなって思っていたら、あっという間に1時間経ってしまったばかりか「まだやりたい、もう終わっちゃうの?」ということがよくあって。ストライカーに特化したサッカースクールがあっても面白いかなと。

―2030年の一つの区切りはあると思うんですけども、それまでの今後の展望を教えてください。

長谷川 現在、Jリーグ・海外リーグで活躍されたストライカーの皆様と活動を共にさせていただいているのでより多くの人たちにこうした活動を知ってもらいたいです。
また、指導者向けの取り組みとして「STRIKER One(ストライカーワン)」という新企画を立ち上げて、ストライカークリニックを開催し、動画でより多くの人に知ってもらう機会をこれからつくっていきます。
こういった様々な活動を通して、2030年に繋がるように指導者の皆様、子どもたちや中高生の選手にストライカーの奥深さを知ってもらうためのアプローチを続けていきたいと考えています。
「世の中にゴール数を増やし、次世代に繋いでいく」ということが会社のミッションです、2030年以降も子どもたちにゴール決める喜びを伝えていきたいと思っています。

―活動の中で喜びを感じる部分や、嬉しかったことはどんなことですか?

長谷川 できなかったプレーができるようになった時の子どもたちの表情は嬉しいですね。更に一緒に活動してくれている仲間、引退した選手たちの活躍の場を作ることができた時も同様です。
セカンドキャリアで大切にしているキーワードは「ワクワク+貢献」です。この両方が達成できた時は、なにより幸せですね。
今はYouTubeなど、調べればたくさんの情報を得ることができます。その中にいても自分は本質を忘れないようにしたい。サッカーの本質ってなんだろうって考えたとき、「ゴールを決める、ゴールを守る」ってことだと思います。本質に対して大切なこと、基本的なことを忘れないで努力していくことが大切だと思っています。
本質のゴールをイメージして、どのようにチャレンジしていくのか、うまくいかなかった時にどう工夫していくのか(アレンジ)を常に自問自答しながらやっていく。頭の中にイメージして、最終的に自分自身が決断する。
この活動を通じてゴールの本質を他の方と共有できたらいいなという気持ちでいます。

―貴重なお話をありがとうございます。次の指導者のご紹介をお願い致します。

長谷川 愛媛県立八幡浜工業高等学校サッカー部 監督 兵頭 由教さんです。

<プロフィール>
長谷川 太郎(はせがわ・たろう)
1979年生まれ、東京都足立区出身
柏レイソルジュニアユース、柏レイソルユースを経て、1998年トップチームへ。2005年にはヴァンフォーレ甲府でJ2日本人得点王を獲得し、J1昇格に大きく貢献するなど国内で数々のチームを経験。2014年インドリーグ1部モハメダンFCに所属した後、現役を引退。
2015年より一般社団法人TREを設立。【TRE2030 STRIKER PROJECT】〜2030年 みんなで育てよう! W杯得点王〜というビジョンの元、ストライカー育成を行っている。2017年ブリオベッカ浦安のストライカーコーチに就任(日本初ストライカーコーチ)。

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