今回は前々回の続きで、フランスのコーチングライセンスの話の続きを書きたいと思います。おそらくこのコラムを見てくださっている方は、コーチ関係の方が多いと思うのですが、僕は日本のコースを受講したことがないので、日本とフランスの比較が出来ません笑なので、ここで書いたことを皆さんのご経験を比較されるのが一番だと思いますので、あらかじめ。。。
たまに日本の記事を読むと、フランス代表はエコロジカルアプローチを使っている、と言う内容を目にしますが、あれは事実ではないと思います笑。なぜなら、フランス代表監督のデシャンが、反復練習の重要性を強調し、フランスサッカー連盟のコースでもこのアプローチの名前は一切聞いたことがありません。フランスは、伝統的にパフォーマンスの要素を切り分けて考える傾向があるため、反復練習や素走りなどの1つのパフォーマンスを伸ばすためのトレーニングを強調する傾向にありました。
現在は、グローバルメソッドが普及してきたため、明確な戦術的なテーマのあるゲーム形式のトレーニングをメインに用いながらゲームインテリジェンスを向上させることを目的にしつつ、その中で必要なフィジカル・テクニックを反復練習の中で向上させる、という流れになっています。日本では、ゲームベースアプローチ、のような名前で紹介されていると思いますが、そのアプローチと反復練習のミックス、と考えていただくのが一番分かりやすいかと思います。
練習は4つのパートに分かれます。
1:ウォームアップ
2:ゲーム1
3:必要なテーマに沿った技術・フィジカル・戦術の反復練習
4:ゲーム
ゲーム1では、コーチはゲームのルールだけを説明し、選手にゲームを体験させることで
必要なテーマを考えさせるのが目的です。どのようなプレーをすればうまく進めることが出来るのか、を選手に体験させつつ、コーチはゲーム設定と質問形式のコーチングで選手の理解を促していきます。
次にパートでは、そのチームに必要な要素を反復するパートです。
例を挙げると、練習のテーマが「相手の守備ブロックを片方のサイドに移動させて、空いた逆サイドを使う」だとします。コーチはそこで、相手ブロックを引きつけてからのロングパスでまでのチームとしてのアクションを反復したいのか、相手を片方に引き寄せるために必要なショートパス、もしくは逆サイドへのロングパスのような技術的要素を反復したいのか、のようなチームに必要な要素を切り取って反復することで、このテーマを成功するのに必要な要素をトレーニングする、と言う形です。
最後に、その日学んだことを使ってみよう、というフリーに近い形のゲームでその日の練習が終わります。あくまでフランスサッカー連盟のやり方なので、各クラブでは全く違ったアプローチもありますし、これが全てではありませんが、コーチングライセンスでは、この内容を町クラブのレベルのライセンスからプロライセンスまで共通して行っています。あとは、各カテゴリー・レベル・クラブの環境に応じて使い分けてくださいね、と言うスタンスです。
これに加えて、U E F A Bライセンスからは、プレーモデル・トレーニングメソッド・クラブプロジェクトを学んでいきます。これもレベルに応じて変わっていきますが、サッカーというスポーツを練習・試合というグランド面だけでなく、全ての面から分析していく能力を養っていく、という内容です。
今回はフランスのライセンスについて書かせていただきましたが。世の中情報に溢れかえっているので、海外から入ってくる横文字を鵜呑みにしたり、流行に惑わされるよりは、一番は興味を持ったことを信頼できる情報源を使って勉強しつつ、それをグランドで使っていく、というのが一番良い方法だと思います。なので、この内容はその程度に過ぎない、と思っていただけると幸いです笑
太田 徹Toru Ota
1981年07月11日生まれ。
東京都出身。
武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。