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Vol.4 アシックスジャパン㈱ スポーツマーケティング部コアパフォーマンス第1チーム/藤井幸穂

  • 2019.07.11

    Vol.4 アシックスジャパン㈱ スポーツマーケティング部コアパフォーマンス第1チーム/藤井幸穂

サッカーのお仕事

ヴィッセル神戸のユニフォームスポンサーを20年以上にわたって続けているアシックス。昨年のワールドカップ・ロシア大会で活躍した乾貴士選手や、最近ではアンドレス・イニエスタ選手とのアドバイザリースタッフ契約でも話題になった同社にて、長きにわたってサッカーの現場で仕事をしてきた藤井幸穂氏にスポーツメーカーとしてのプロサッカーチームや選手との関わり方について話を伺いました。

ー現在のお仕事について教えてください。

藤井 スポーツマーケティング部コアパフォーマンス第1チームという部署に所属していて、サッカーを中心にプロモーションを行っています。僕を含め、数名のグループでユニフォームスポンサーをしているヴィッセル神戸さんやスパイクなどを個人契約している選手の皆さんをサポートしています。また弊社としてはアマチュアスポーツのサポートも行っていて、高体連等のアマチュアサッカーチームについても、営業部と一緒に担当しているので、時に学校に出向くこともあります。もともと、この部分の方が担当としては長いため、古くからお世話になっている指導者の方とも未だにいいお付き合いをさせていただいています。

ーヴィッセル神戸のサポート内容を教えてください。

藤井 ヴィッセルさんとの関わりは長く、クラブが発足した95年シーズンより25年にわたって(※97〜98年は除く)サポートをさせていただいています。以前は全面的に1つの部署でサポートを行っていましたが、昔と今とでは弊社の体制も変わり、今はグッズや商品に関することは営業部が担当し、僕たちスポーツマーケティング部コアパフォーマンス第1チームはより現場に近いところで仕事をしています。細かくいうと、僕がチーム付きの窓口を、後の二人が、アカデミー担当と、マーチャンダイジングやスクールを担当しつつ、スパイク等の個人契約選手の獲得やサポートの部分は3人が連携して行っています。

定期的に同じ部のメンバーでミーティングを行い、
意見をぶつけ合う。

ー最近ではアンドレス・イニエスタ選手(ヴィッセル神戸)とのアドバイザリースタッフ契約も話題になりました。

藤井 おかげさまで大きな反響をいただきました。イニエスタ選手には、スパイクシューズをはじめとする、当社のスポーツ用品の使用や商品に対する開発面でのアドバイスを始め、広告やカタログ、インターネットなどによる宣伝や、販売促進活動への協力をしていただくことになりました。サッカーに限らず、個人のスポーツ選手との契約に際しては、常日頃から「どんな風にアシックスというブランドを広めていくのか」という戦略を練ってブランディングをしているというか。せっかくサポートさていただくからには、一過性の実績にとらわれることなく、その選手がどこを目指し、どんな選手になりたいと考えているのか。あるいは、スパイクにどんな思い入れがあるのか、などといった、選手のマインドや競技への向き合い方も重要視して契約選手を決めています。その点において、イニエスタ選手はこれまでのキャリアが物語るように、常日頃から真摯にサッカーと向き合い、世界の頂点にまで上り詰めた選手ですからね。スパイクに対してもとても繊細に、ご自身の考えを伝えてくださるので、弊社としてもそれに全力で応えたいという思いでサポートにあたっています。

ー藤井さんご自身のアシックスジャパン株式会社への入社の経緯と、現担当に就かれるまでの経歴を教えてください。

藤井 父が福岡商業の教師をしながらサッカーを教えていた影響もあり、僕自身も小学生の頃からずっとサッカーと関わって生きてきました。その中で、東福岡高校から大阪体育大学に進学し、当初は父のように高校の教員になりたいと思っていたんです。ですが、その反面、側面でサッカーをサポートするような、サッカーに関わる仕事をしたいという気持ちもありました。大学時代はサッカー部の主務をしていたことから、日本サッカーリーグ等に所属していたサッカー部のマネージャーをするのもいいなと考えていた時期もあります。そんな中、大学4年の時に、大阪体大サッカー部のユニフォームのサプライヤーがアシックスに変わり、僕は大学側の人間としてアシックスの販促担当者の方といろんな話をさせてもらったんです。そこで、メーカーの仕事に興味が湧き、それをきっかけにアシックスの採用試験を受けて、90年4月に入社しました。ですが、すぐに自分が理想とする職につけることはなく…僕も最初は、九州支社の営業職を担当し、最初の2年はウォーキング事業部という、靴の営業からスタートしたんです。当時の営業先も大丸や三越といった百貨店や、紳士靴、婦人靴を扱う靴屋さんで、スポーツとの関わりはゼロに近い状態でした。その後、サッカーに関わりを持つようになったのは、ウォーキング事業部での2年間と、代理店や卸先へのセールスを担当した約1年半を経たあとです。そこで、サッカーショップを担当するようになり、九州の高校を中心に販促的な仕事をさせてもらえるようになって、母校の東福岡高校や鹿児島実業高校などに足を運ぶことが増えました。それこそ、当時は東福岡サッカー部の志波芳則監督(現・同校総監督)が僕の父の教え子だった縁もあり、志波監督をはじめ鹿児島実業高校の松澤隆司監督(故人)や国見高校の小嶺忠敏監督ら、九州の重鎮といわれた名将の皆さんにずいぶん、可愛がっていただき、いろんな高校のサッカー部にアシックスのユニフォームを着ていただけるようになりました。そういった仕事が評価されて…と、僕は勝手に思っていますが(笑)、6年後に本社に転勤して販促の仕事をするようになり、13年のアシスックスジャパン株式会社の設立に伴って、現在の部署に配属され、99年からはヴィッセルさんの担当もさせていただていているという流れです。

ーチームサポートをされる上で心がけていることを教えてください。

藤井 特に楽天さんが資本に入られてからは、とにかくスピードを大事にされているので、僕たちもそこは意識していますし、出来る限り現場がストレスを抱えないように、ということも心掛けています。密に連絡を取り合うのは、ユニフォームや練習着等を管理されている現場のマネージャーの皆さんが主なので、彼らが困っていることがあれば出来るだけスピード感をもって解決できるようにしています。あとは、この世界はヴィッセルさんに限らず、急にスポンサーが変更になったり、ロゴが変わることもあるし、そうなればすぐにユニフォームや練習着等への対応も求められるので、急なアクシデントに臨機応変に対応することも大事だと思っています。

ー試合当日は、会場にも足を運ばれるのですか?

藤井 ホームゲームは出来る限り伺うようにしていますが、アウェイ戦を含めて公式戦には毎試合必ず行っているわけではないです。というのも、我々のサポートは試合が行われる以前の準備の段階がほとんどで、試合当日は、基本的には何も起きないからです。もっとも、緊急的に対応が必要な時は、ホーム、アウェイに関わらず、社内で連携をとって動きますが、基本的に、シーズンが開幕してしまえば、どちらかというと翌シーズンに向けた準備の方が忙しくなっていくので、そちらの仕事がメインになります。チームサポートについての大まかな動きを説明すると、1〜2月の開幕前はウェアやいろんな商品の納品で忙しくなるので我々も現場に足を運んでお手伝いをし、開幕後、4〜6月になると現場の方も緊急を要することが減っていくので、次のシーズンの準備を随時、やっていくと。もちろん、これは来季の契約がある前提での話で、そうでない場合は、この時期に、契約の話を進めていくことになります。

ヴィッセル神戸VS大分トリニータ戦後に、
元神戸で現在は大分で活躍する前田凌佑選手と。

ーサッカーをされてきた経験がお仕事に活かされることはありますか?

藤井 僕は活きると思います。どの仕事でもそうであるように人脈は仕事をする上でとても大事で、僕自身も、自分が関わった指導者の方や、一緒にサッカーをしていた仲間、関わりのあるサッカー関係者の皆さんに助けられてきた部分は大いにあります。ただ、それがなければこの仕事ができないということではありません。実際、昨今はどの企業でも、いろんな能力を持った方が集まることで、新しい発想が生まれたり、いろんなタイプの人材がいるからこその化学反応も起きています。弊社でもそれは然りで、僕が若い頃はスポーツメーカーには、スポーツをしてきた人材が多く採用される傾向にありましたが、今は違う。スポーツとは全く縁がなかったけれど、例えばマーケティングやITに長けているという人材もたくさんいますし、そこから新たなビジネスや発想が生まれ、会社が活性化していくこともあります。それに、僕自身もそうでしたが、サッカーをしてきたからといって、サッカー担当になれるとも限らないですしね。

ヴィッセル神戸の荒井琢也マネージャーとの
打ち合わせも定期的に行っている。

ー近年はスポーツメーカーへの入社希望者も多いですが、身につけておいたらいいなというスキルがあれば、教えてください。

藤井 今の話にも通じますが、1つの種目に長けていることが強みになることもありますが、その担当になれるとも限らないので、スポーツ全般に目を行き届かせておくことも大事なのかな、と。あとは語学力ですね。弊社はサッカー、ランニング、陸上、バレー、バスケットと様々な種目をグローバルに扱っていることから、『世界』は常に意識して仕事をしていますし、そもそも僕が今、勤めているアシックスジャパンは日本企業ですが、新卒の方が採用される場合は、神戸市にあるアシックスヘッドクォーター(AHQ)と呼ばれる世界本社で、英語を話せることがマストの条件なんです。実際、サッカーの世界を見ても然り、最近は海外でプレーする日本人選手も増えたと考えれば、語学が活きるシーンも多いと思います。また、そうした能力とは別に、僕は弊社で仕事をすることに対して夢を持って入ってきてほしいなと思います。スポーツの世界で、こういうチャレンジをしたい、こんな仕掛けをしてみたい、というような熱意、ポジティブなマインドはスポーツともリンクするもので、仕事をする上でも非常に大切だと思っています。

ー最後に、来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。スポーツの祭典を前に、御社としても何か施策を考えられているのでしょうか。

藤井 オリンピック・パラリンピックは世界中にスポーツが発信される大会で、弊社としても、その盛り上がりを後押しするような施策をやっていきたいと考えていますし、大会に向けてチームや選手のサポートの部分でもしっかりと力を発揮したいと思っています。あと、大事なのは東京五輪が終わった後も、スポーツが盛り上がっていく仕掛けを考えていくことも大事だと思っています。最近は「東京五輪が終われば外資企業さんも含めて、次の五輪に向けて日本から飛び立っていくんじゃないか」という噂も囁かれていますが、スポーツの盛り上がりを一過性のものにしないこともスポーツメーカーとしては大事な役割だと思っています。

text by Misa Takamura

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