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Vol.17 北海道コンサドーレ札幌アカデミーサブダイレクター(札幌U-13担当兼任)/青山剛氏

  • 2020.05.21

    Vol.17 北海道コンサドーレ札幌アカデミーサブダイレクター(札幌U-13担当兼任)/青山剛氏

指導者リレーコラム

北の大地、北海道をホームとする北海道コンサドーレ札幌は、クラブのアカデミー、スクールを札幌だけでなく釧路や室蘭など、北海道各地で活動している。今回はコンサドーレ札幌アカデミーサブダイレクターで、札幌U-13担当を兼任されている青山剛氏に、豊富な経験とジュニアユースを指導する際の考えについて、お話を伺った。

ーご紹介いただいた総合型地域スポーツクラブFCVの野村次郎監督とのご縁についてお聞かせください。

青山 前々所属チームの東海大学付属静岡翔洋高等学校中等部の頃から何度も練習試合をしていて仲良くさせてもらっていました。2010年に静岡県富士市でNPO法人富士スポーツクラブFCFujiジュニアユースを立ち上げて、チームができたばかりの時期にも試合をしていただいたり、お互い街クラブを運営する課題があったので情報共有や悩み相談をしたり一緒に研修に行ったりしていました。私は2017年に北海道コンサドーレ札幌に移りましたが、遠く離れた今でも交流は続いています。
 
ーコンサドーレ札幌ではどういった活動をされていますか。

青山 現在はアカデミーのサブダイレクターとU-13を担当しています。U-13にはフィールドが15人とキーパーが2人います。U-13は中学1年生ですが小学生が入ることもあるし13歳で上のカテゴリーに上がるというように、中学生もユースの練習に入れるし小学生もジュニアユースのトレーニングに入っていて、カテゴリーの上下は基本的にスタッフの推奨で行なっています。カテゴリーはU-13から16まで1年代ずつ別れていてU-18だけ18歳と17歳の2年代となっており、チームアカデミー全体で一人の選手を育てましょうという感覚を共有しており非常に良い環境です。FCFujiではコーチ3人で3年間選手を見ていましたが、今はカテゴリー毎にバトンタッチしていく形なので、これから入ってくる選手はより余分なことをせず、上に繋げていけるようにというスタンスでいます。最終的にはトップに上がる選手をどれだけ輩出できるかが重要なので、スタッフ全員でトップに繋げていくという感覚です。
また、コンサドーレには中学校に上がるU-13のタイミングで毎年4,5人は外部から入ってくれています。小学校から上がってくる選手は一つの思いでサッカーをやっているのでほぼ自然に理解できることでも、後から入ってくる子たちは多少慣れる時間が必要で、夏頃まではあまり変わりません。けれど外部でやっていた選手が僕らのピースの中で凄く活きて違いを出すということが生まれてきます。また外部から来た選手が上のカテゴリーに上がるというのは、内部で育ってきた選手が刺激を受けたりするので、こちらとしては狙っているわけではないけれど結果的にそういう作用はあるかなと思います。
僕は静岡から北海道に来たので、北海道の子は静岡の子と比べて少しおとなしいと言うかまじめな子が多い気はします。ただ北海道は寒い地域なので、寒さに耐え忍ぶというような強さは気質的にあるのかなと思いますが、それで自分の指導が変わるということはほとんどありません。
北海道では雪が積もっている12月から5ヶ月は室内で練習しているのですが、練習はフットサルコート2面分ほどのサッカー場でユースを中心に曜日を分けて共用で使っていて、使えない曜日には体育館のような施設を使っています。5ヶ月は外で出来ないというだけで基本は他県のチームとそれほど変わりませんが、上のカテゴリーで見れば広い所でやりたいというのと、シーズンで見るとどうしても開幕が遅かったり広いコートでゲームをする期間が短かったりするので、チームでも選手個人でも少し仕上がりが遅いという影響は多少あるかもしれませんが、僕は気にしていません。例えば4月に道外のチームと公式戦があるとすれば不利ですが、トータルで考えると良い所もたくさんあります。その1つは、オフが長い分身体の成長を促せるという点です。休みが大事と言ってもサッカーができる環境ではなかなか休めなかったりしますが、そこをしっかり休めるので成長期の選手には理想的だと思います。
また北海道ではスキーやスケートを学校の体育でやっていますが、ヨーロッパやアメリカでも1年を通して様々なスポーツをしていたりするので、いろいろな種目をするという意味で良さもあると思っています。

ー街クラブとJリーグクラブの下部組織との違いはありますか。

青山 運営面では、街クラブは会員の会費で成り立っているところが多いと思いますが、Jリーグのクラブはスポンサー様に支えていただいているので、その違いがあります。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で活動ができていないチームが多いので、街クラブがすごく心配です。
指導面で言うと、FCFujiでは選手たちのレベルに合ったサッカーの上達方法として指導者が必要だと考えたことをやっていましたが、コンサドーレ札幌ではクラブが目指しているものに自分の良さをどう組み込んでいけるかが求められるので、その辺りが大きな違いかなと思います。ですがサッカーが上手くなることを求める姿勢は変わらないので、自分がどうやってアカデミーの中で良さを出せるかというところです。コンサドーレでは伝統的に「自分たちでボールを握りゲームを支配して相手を崩すサッカー」を目指していますが、今はトップチームにミハイロ・ペトロヴィッチ監督がいるので、監督の攻撃的な発想もより活かしたサッカーをするということがアカデミーにもあります。
僕が指導者としてどういうサッカーがしたいか考えた時に思い描くのは、選手がサッカーを楽しむというところ。結局上手くなるのは選手がどれだけサッカーが好きで打ち込めるかなので、相手のボールを追うより自分たちでボールを回せた方が楽しいので必然的にそれを求めますし、その中に世界でもやられているような新しい戦術などにリンクするものがあるので、ベースはとにかく楽しんでやることが肝心です。
どのチームでも基本は選手から会費を頂いているので、何かを教えないといけないということもあります。フィジカル面では数値で成果を表す必要性も言われておりそれも大事な側面ですが、本当にプロになりたいと思えばトレーニングも自分でやるようになるので、僕としては選手をとにかくサッカーが好きだという気持ちにさせることが役割だと思っています。
そのため、練習もつまらない練習を我慢してやらないといけないではなく、楽しみながら上達できる内容を考えるようにしていて、極端に言えばミニゲームをしていたら上手くなれると思っています。ルールを設定したミニゲームはよくしていて、何か戦術的な要素を落とし込む為にルールとして設定することはコンサドーレで学んでいます。そういうやり方だと選手が違和感なくやれるので、練習の意図を選手に感じさせず気づいたらそうなっているというようなトレーニングを心がけています。

ー選手を指導する際に気をつけている点はありますか。

青山 個人の特性で中学2年でも高校生と同じくらいの体格の子や中学1年でも小柄で小学5年生くらいの体格の子もいるので、ケガのリスクを考えて体格面には気をつけています。また成長痛などに悩みやすい年代ではありますが、それほど長い期間練習できなくて困る選手にはまだ出会っていません。メディカルのスタッフともその辺りは連携して気をつけています。
また、選手を見る時にサッカーが上手い選手は誰が見ても上手いので、僕だけがそういう子を見つけるとは思っていません。それに何か良いものを持っていたとしても本人がその気になっていなければ絶対に伸びないし、これは厳しいだろうという選手でも絶対こうなると本人がやればすごく良くなることもあるので正直わかりません。大前提として選ばせてもらっているというスタンスでいるので、皆がいい選手だし満遍なくチャンスを与えていきます。
普段練習の後には15分の自主練習を設けていて、選手が自分で課題を持って取り組む時もありますが、13歳なので全体的にはまだそれほどできないので、こちらでシュートドリルなどを設定したりもします。1対1やバー当てをしたりもしていて、遊び要素もありながらもトレーニングに取り組む時間も大事かなと取り組んでいます。僕がそれほど厳しい雰囲気を作っていないこともあるけれど、中学2年の後半から中学3年にかけては個々の取り組みも変わってきて、課題を持って自主練しているなという感じになります。そのあたりで明確に自分もプロになりたいという意識が出てくる時期なのかなとも思います。小学生もみんなそう思ってやっているとは思いますが、足りないものや強くなりたいなどの自覚が中学2年くらいから出てくる感じがします。
ですがこちらから「プロになるためにはもっとこうしろ」と言うことはありません。基本的にスタッフも皆、サッカーを好きなまま上に繋げたいと思っていますし、上に上がれば上がるほど選手は自然とそういう自覚が高まってくるので、無理に焚きつけなくても大丈夫とわかっているのでしていません。
何もしなくていいというわけではないですが、自分達が大事にしていること、これが好きということを表現できれば選手は育っていきます。わかりやすい数字やカリキュラムなど作ってしまいがちですが、そんなことよりも哲学やコンセプトがしっかりしていれば大丈夫で結局は選手次第です。その子をどれだけその気持ちにさせるかは指導者の力にも含まれていると思いますが、それも本当に一部だということを自覚することが大事だと思います。
これはどのチームでも同じで、チームの色が大事になってきます。このチームはこういう選手が出やすいとか、この国からはこういう選手が出やすいというのはあって、そういうのはいいことだと思います。そういう所から突然変異みたいに生まれてくることもありますが、そういうことは無理やりやることではありません。どちらかというとJリーグクラブの下部組織の方が、より平均的にいい選手を出そうとする雰囲気がありましたが、今はそれぞれのクラブの色が出てきて変わってきている時期で、その一連の流れの中に自分がいるなと感じています。
プロになる割合で言うとJリーグクラブの下部組織の方が確率は高いと思ますが、それは選んでいるからであって、本当になりたいと強く思える選手、サッカーが好きだという選手がプロになると思います。ベテラン選手や一緒に働いてきた元プロ選手もいますが、長くやっていた人は単純にサッカーが好きだし、好きだからこそ長くできたのだろうなと感じます。


ー指導をしていて、どういったところに楽しさを感じますか。

青山 選手が上に上がってしばらくしてから見かけた時に、成長したなと思うことがよくあるのですが、そういう瞬間が一番楽しいです。これは中学1年の間にあるというよりも、中学1年の時に見ていた選手が中学2年の夏以降からどんどん変わっていきます。練習時間は違っても場所は同じなので、練習のサポートに入ったり週末の試合を見る機会が多く、その中で少しずつ変わってきたなと感じているのですが、担当のスタッフも同様に感じているので、そこが気持ちいい瞬間です。中学3年にもなると、中学1年から変わってない方が目立つくらい、ほぼ全員に「こんな事までできるようになってるの?」とびっくりしています。それは中学2年生3年生の指導者の影響力も凄いと思いますが、スタッフ同士で「俺のおかげだ」と冗談を言い合ったりしています。
これはFCFujiの時もそうでしたが、僕が指導しながらこの子は2年後3年後はこうなっているだろうなとイメージをしていても、選手はそれを確実に超えていきます。

ー反対に、指導の難しさについてはどうお考えですか。

青山 指導者は皆選手のことをを考えていて、それが本当に選手に良かれと思って与えていくのだけれど、それが間違った方向にいっていないかを振り返る必要があります。会社の評価や人集めのことなど、それが営業努力としては必要だけど選手の指導には影響してはいけません。仕事だからやらないといけないとか、人が集まらないと困るからやらないといけないということで選手を指導していくことを思い切ってやめればいいのではないかとも思いますが、それには難しさも感じています。
また、指導をする上で選手を叱るということは昔はありましたが今はなくなりました。コンサドーレでサッカーに打ち込むということは選手も凄く意識が高いですし、FCFujiでも年々選手の意識が高まっていたので叱ることがなくなりました。選手のプレーについても自分がこうなってほしいという形に近づける作業はもうあまり必要ないなと思いましたし、しなくなりました。自分がこういうサッカーをしてほしくて個人的にそれができない選手にイライラすることもなくなったので、僕自身も成長できたかなと思います。
少年サッカーは相手が子どもだから言いやすいこともあり指導者の声かけが一番激しいですが、それは日本のサッカーの課題でもあります。以前スペインへ研修に行った時もジュニアの指導者はうるさかったのですが、それがハラスメント的なものではなく、感情を出すといったことだったので、それならいいのかなとも思います。日本ではジュニアに限らずハラスメント的な要素も多いので、そういうのはなくなってほしいなって思う。そういうのが通用しない世の中になってきているので、それに上手く適応できる指導者になっていきたいと思うし、こうやってやったから俺はあいつを強く出来たとか、良い選手を育てたと思っている人には「そんなことしなくてもうまくなると思いますよ」という風になってほしいなと思います。なにかしらの手段でそういう風にできる指導者はいると思いますし、実際やれば成果として出るので、それを別の手段でできるようになれると思います。僕もそうなれているわけではないので、今もそれを目指しています。

ー次にバトンをお渡しする指導者をご紹介ください。

青山 兵庫県のイルソーレ小野FCの今村嘉男さんです。僕を紹介いただいたFCVの野村さんと同じく、東海大翔洋中学の頃からのお付き合いで、スペイン研修にも一緒に行った仲間です。すごくおもしろい方なので、ぜひお話を聞いてみてください。

<プロフィール>
青山剛(あおやま・たけし)
1974年6月1日生まれ。
静岡県出身。小学校1年生の時に近所のお兄さんに連れられて行ったことがきっかけでサッカーと出会う。現役時代はフォワード、攻撃的ミッドフィルダーとしてプレー。
1999年に学校法人金城学園遊学館高等学校にて指導者のキャリアをスタート。東海大学翔洋中学校を経て2010年に静岡県富士市にNPO法人富士スポーツクラブを立ち上げFCFujiジュニアユースの監督を務める。2017年からコンサドーレ札幌に移籍し、2018年からU-13を担当。選手だけでなく、多くの指導者からも信頼を集めている。

text by Satoshi Yamamura

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