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Vol.22 高知県立大方高等学校女子サッカー部 顧問/公文菜子

  • 2021.10.06

    Vol.22 高知県立大方高等学校女子サッカー部 顧問/公文菜子

PASSION 彼女たちのフィールド

高知県の南西部に位置する幡多郡黒潮町は、カツオの一本釣り漁やホエールウォッチングなどが有名な海に面した自然豊かな町である。今回は黒潮町をホームタウンとして飛躍が期待される高知県立大方高等学校女子サッカー部の顧問であり、同じく黒潮町に誕生したU-15女子サッカークラブ「Hata meisje(ハタ メイシェ)」立ち上げに携わった公文菜子氏に、サッカーに携わる現在の仕事についてお話を伺った。

―現在のお仕事について、お聞かせください。

公文 私は高知県立大方高等学校の地歴公民科の教員として勤務していて、女子サッカー部の顧問を務めています。チームの監督は黒潮町と以前から縁のある(一社)セレッソ大阪スポーツクラブから招聘しているので、私自身は選手に技術面などの指導はせず、顧問として地域の方とのコーディネートなどが主な役割になっています。

―ご自身が監督としてチームを指揮する考えはなかったのですか?

公文 私が監督をするということは一切考えていませんでした。元々は特別支援学校の採用で3年前に大方高校へ赴任するまでは特別支援学校に勤務していて、同時に高知県サッカー協会や四国サッカー協会の女子委員長、JFA女子サッカー普及コーディネーター高知県担当など指導者ではなく裏方の立場でサッカーに携わってきました。そのため、指導者ライセンスも取得していません。大方高校に赴任した年は女子サッカー部創設前年だったので、創設に向けた準備や指導者の選定などに奔走した1年でした。

―公文さんはクラブチームのゼネラルマネージャーの様な立場でいらっしゃるのですね。
ご自身のサッカーの経歴について教えていただけますか。

公文 私はこれまでのコラムに掲載されている方と違い、日本代表やなでしこリーグでプレーした経歴はありません。サッカーを始めたのは高校2年生の冬頃だったのですが、地域のママさんチームに入って一緒にプレーをするというレベルで、大学進学後も近くのママさんチームに入っていました。元々は小学生の頃からサッカーをしたかったのですが親の許可を得られず断念しました。中学校ではバスケ部に入部しましたが、中1でケガをしたことをきっかけにマネージャーになり、高校までそのまま続けました。その頃にJリーグが開幕してサッカーの認知も高まり、親もサッカーをすることを理解してくれてサッカーを始めることになりました。チームは当時バスケットボール部の先輩でサッカーもしている方がいたのでその先輩の紹介で入れていただいたのですが、部活も続けたかったのでバスケ部の練習が終わってからサッカーの練習に行くというような生活でした。
加入したサッカーのチームは中学生から上は50代の一般までが一つのチームでした。当時は高知県内はどこも同じ状況でしたが、全国ママさん大会で上位入賞するなどママさんの年代は強かったです。大学入学後も大学には女子サッカーチームがなかったことから、近くのママさんチームに入れてもらってサッカーを続けました。現在も自身としては楽しみ程度に続けています。

―ご自身が一般の方と同じチームでプレーされてきた経験から、高知県の女子サッカーチームを増やしたい、女子サッカーを盛り上げたいといった思いがあってこれまでサッカーに携わってこられたのですか。

公文 元々私がこうしたポジションでいろいろなことをするようになったのは、あるチームメイトの方がきっかけです。大学を卒業してからもレクリエーションとしてサッカーを続けていたのですが、同じチームに国体のスタッフをされている方がいて、その方のお手伝いをさせていただくことで高知県サッカー協会の事務局の方とお話をする機会も増えました。同時に南国高知フットボールクラブ(現高知ユナイテッドスポーツクラブ)でマネージャーも務めさせていただいて、裏方として多くの経験を積ませていただきました。その後に高知県サッカー協会の女子委員長も務めさせていただくようになったのが私の裏方としてのスタートです。恐らくその時に女子委員長になっていなければ現在ある多くの方との繋がりもなかったと思いますし、当時の南国高知FCの選手が現在指導者としていろいろなチームにいたりするので、南国高知FCでマネージャーをさせていただいたからこそたくさんの人脈もでき、多くのご縁をいただいているなと感じています。

―これまでの経験や人脈が、今のチームづくりに活かされているのですね。顧問のお仕事で準備期間の内容や苦労などお聞かせいただけますか。

公文 大方高校に赴任して顧問となった1年目、女子サッカー部創設の準備していた頃には、まず監督としてどなたに来ていただくかというところからスタートしました。それは私だけでなく学校の思いや黒潮町の思いもあるので、それまでの繋がりや経緯も大切にしながら検討して現在の監督に来ていただきました。創設に尽力いただいた前町長が「田舎でも本物を見せたい。本物の指導を受けさせたい」とよくおっしゃっていて、一流の指導者から指導を受けられる環境を整えたいと思っています。大方高校は高知市内から車で2時間ほどかかる場所にあるので、アクセスや地域の人口などで市街地の学校に比べて不利な条件があって、現在の2年生もチーム創設当時に通学できる地域内でサッカーをしている女の子が数名しかいない中で声をかけて来てくれた子です。その下の学年も地域でサッカーをしている女の子が各学年2、3人ずつしかいないので、まずは地域でサッカーをしている子たちを大切にしながら、通学圏外の子にも下宿などをして来てもらえる環境整備を進めてきました。大方高校女子サッカー部を作るというのは地域の子たちに来てもらうだけでなく町の活性化にも繋がっているので、町外からも来てもらいたい。通学ができない距離の県内の子や県外からも含めてたくさんの選手に来てもらうためには寮も必要になるというところで昨年度からそうした面での整備も進めていて、寮費の補助など支援体制も充実しています。現在は県外から入学した選手はまだいませんが、県内でも片道5時間ほどかかる所から入学して寮生活をしている選手がいます。そういったいろいろなことが準備期間から進めてきた取り組みですが、やはり人を集めるということが何より大変な仕事です。

―来年度の入学に向けたスカウティングもなさるのですか?

公文 そうですね。今は新型コロナウイルス感染症の影響があるので3種の試合会場などに行って中学生に直接声をかけるということはできないのですが、女子選手が所属している中学校へ訪問して資料をお渡ししたり、知っている方のチームや黒潮町に合宿に来られたチームの方に資料をお渡しするなどしてチームの認知を広げる活動をしています。

―サッカーに携わる仕事のやりがいなどありますか?

公文 子どもたちと出会えるということやその子どもたちがサッカーを通じて成長していく姿を見られるということがやりがいではないかなと思います。サッカーの技術ももちろんですが、何より人として成長するということが大きいです。サッカーは人と関わることが必須なので、社会性を身につけることにも繋がると思うのですが、チームの中で会得していくこともあるし、チーム外の方と関わることでも人として成長していけるというのもサッカーの魅力だと思います。教員として、また顧問としてそういったことを間近で見られることが一番の魅力だと感じています。今の部員がチームの1期生2期生なので、彼女たちが卒業する頃にどれくらい成長した姿を見せてくれるのかを楽しみにしています。
また、前校長はサッカーや野球は全国大会に出場した時に町をあげて応援する様なスポーツだから、サッカーで黒潮町を盛り上げたいとおっしゃっていました。いつか全国大会出場を果たして、町から応援バスでたくさんの方に応援に来ていただきたいですね。また黒潮町には土佐西南大規模公園という人工芝2面・天然芝2面の施設と宿泊先がたくさんあり、キャンプや強化合宿に利用してもらうスポーツツーリズムにも力を入れています。外部から黒潮町に来ていただくことと同時に、町のチームが強くなることで町が盛り上がっていけば嬉しいですし、町全体で女子サッカーの普及・強化を目指していることにやりがいを感じていますね。

―公文さんの1日のスケジュールを教えてください。

公文 朝は8時頃に出勤をしています。私は校務として生徒指導に携わる生徒部長もしているので、日によっては朝に玄関に立って挨拶をしたり身だしなみチェックをしたりということもしています。その後職員朝礼があって、9時から1時間目の授業が始まります。全体の授業は16時前に終わって放課後となります。私は支援が必要な生徒の通級指導も週2日ほど受け持っているのですがそれが終わるのが17時頃で、そこから女子サッカー部の練習を見に行きます。練習場所は学校から車で5分ほど移動した所にあるのですぐに行けるので、順調に校務が終わった日は17時過ぎにグラウンドに着きます。ほとんどの場合は校務があったり外部からの連絡に対応したりするので、遅れてグラウンドに着くことが多いです。部活動は18時45分に終わるので、練習を終えて生徒を見送る19時くらいまでグラウンドにいて、そこから学校に戻って残りの仕事をして帰宅するというスケジュールですね。サッカー部の顧問以外にも先述の生徒部長と1年生の学年主任も兼任しているので仕事量は結構多いのですが、サッカー部に副顧問の先生もいるので助かっています。

―将来の展望についてお聞かせください。

公文 現在は部員数が少ないこともあり、高体連にはまだ加盟せずにHata meisjeの中学生と一緒に試合に出場しているので、まずは11人以上部員を集めて単独チームとして高体連に加盟して試合に出場すること。そして更に先には全国大会に出られるチームとなって地域の方に応援していただけるようなチームにしたいと思っています。今年地域の方が大方高校女子サッカー部の後援会を立ち上げてくださり、たくさんの方々にチームを応援していただいているので、皆さんに恥ずかしくない活動をしたいです。小さな町なので道を歩いているだけでも「大方高校サッカー部の子だな」とすぐにわかるので、人としてもかわいがってもらえるチームにしたいと思っています。
また、地域は中学生の人数も少ないのですが、女子サッカーの普及コーディネーターとして立ち上げたU-15のチームであるHata meisjeには、チームができたことで小学生まではサッカーしていて別競技に移ったという子がまたサッカーをしたいということで入ってくれたりしていて嬉しいですね。サッカーができる環境があることで、サッカーを続けてくれる子がいるということがチームを作ることでわかったので、この環境も大事にしていきたいです。

―中学生チームの創設も初めから考えていらっしゃったのですか?

公文 女子サッカー部を作るときに試合ができる環境がないと面白くないので、どうすればすぐに試合をすることができるかを考えました。それで中学生のチームを同時に立ち上げて、クラブとして連携しながら一緒にやっていくということを考えました。試合にも出られるし一緒に活動することで中学生の活動の場も広がるので、そういった意味では試合ができる環境を整えるということも大事だったなと思います。

―現在のお仕事をされていて、影響を受けた方や理想の人物像はありますか?

公文 一番影響を受けたのは、現タイ女子代表U-20タイ女子代表の監督を務める岡本三代さんで、2018年にFIFAU-20女子ワールドカップでU-20日本女子代表が初優勝した際のコーチを務めていらっしゃいました。岡本さんは私と同じ高知県出身の方で、選手と指導者を兼任されていた時代から一緒にサッカーをしたり飲みに行ったりしているのですが、11年ほど前に「高知の女子をなんとかしようや」と女子委員長の相談を受け、決意しました。岡本さんがNTCとして指導していた四国トレセンの手伝いに参加していたのですが、悪天候などいろいろなハプニングが起こったときでもタイムマネジメントをしっかりおこない、準備できる環境で最大限のメニューを遂行されていてすばらしい指導者だと思いました。それでも岡本さんは周りの人にサポートされることを当たり前と捉えず、常に謙虚な姿勢でいるので人として惹きつけるものがあり「サポートしたい」と思わせる指導者です。私も委員長という立場になり、協会の仕事でもサッカー部の仕事でも手伝ってくれる仲間が増えるよう常に謙虚な姿勢でいたいと思っています。

―ありがとうございました。

<プロフィール>
公文菜子(くもん・さいこ)

1979年高知県出身。高校2年生時にサッカーを始める。大学卒業後も地域のチームでプレーを続けながら、南国高知FCのマネージャーやサッカー協会の業務に携わる。2019年に高知県立大方高校に赴任。女子サッカー部の創設に尽力し、2020年から同部の顧問を務める。

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