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Vol.13 J-GREEN SAKAI ゼネラルマネージャー/土居敬

  • 2020.03.10

    Vol.13 J-GREEN SAKAI ゼネラルマネージャー/土居敬

サッカーのお仕事

日本最多のピッチ数を誇る、堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター『J-GREEN SAKAI』が誕生したのは2010年のこと。慢性的なグラウンド不足に悩んでいた関西サッカー界では大きなニュースとなり、初年度から予約が殺到するなど賑わいを見せてきた。あれから約10年。多くのサッカー関係者に愛されながら、関西サッカー界の発展を後押しする存在ともいうべきJグリーンの管理、運営に尽力するゼネラルマネージャーに話を聞いた。

ー現在のお仕事について教えてください。

土居 堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター『J-GREEN SAKAI』(以下、Jグリーン)は2010年にサッカーをはじめとしたスポーツレクリエーション活動の振興や市民の健康づくり、青少年の健全育成の推進、日本代表のキャンプ誘致や全国規模の大会開催を通じたスポーツ文化の創造を目的に作られました。その施設管理を、指定管理者であるジェイズパークグループが請け負っていて、僕はその代表団体である株式会社ジャパンフットボールマーチャンダイズの社員としてJグリーンのゼネラルマネージャーを預かっています。主な業務は、天然芝5面、人工芝11面、フットサルフィールドが8面を要するJグリーンの運営管理や新規イベントの誘致、Jグリーンが主催するイベントの企画運営などです。正直に申しますと、こういった施設はグラウンドの面数が決まっている分、ご利用いただけるチーム数に制限があるため、施設利用料の売り上げには限界があります。であればこそ、施設の充実を図るための収入を増やすには、スポンサー収入が大きな柱になるので、その新規営業や既存のスポンサーさんへのフォローも仕事の1つです。またJグリーンには大阪府サッカー協会が所有するDREAM CAMP(ドリームキャンプ)という宿泊施設を併設しているので、そちらの運営業務にも携わっています。

ースポンサー収入というのはグラウンド周りに設置されている看板の営業という理解でいいのでしょうか。

土居 基本的にはそうなります。ただし、これはJクラブさんのスタジアムも同じだと思いますが、単に看板を掲出するだけではスポンサーメリットとしては弱いので、プラスアルファとして業種業態に応じてJグリーンにあうイベントやサッカー大会の冠協賛などの提案もさせていただいています。また既存のスポンサーさんとも随時、コミュニケーションを図ることで、長い目で施設をサポートしていただけるようなフォローも心がけています。

クラブハウス内のオフィスでは
グラウンド利用の調整など事務作業に
追われることも。

ーJグリーン主催イベントは年間、どのくらいの頻度で行われるのでしょうか。

土居 年間20〜25本くらいです。主旨、目的は様々で、ランニングや親子体操と言ったサッカー以外のイベントも開催していますが、基本的に9割はサッカー関連のイベントです。例えば、近年は小学3〜4年生を対象にしたサッカー協会主催の大会は増えてきていますが、一方で低学年向けの大会は少ない現状を受け、2年生対象のミニサッカー大会を主催しているのもその1つです。そうした環境を提供させていただくことで子供たちの成長を後押しし、ひいてはサッカー界の発展につなげていきたいと考えています。また、土日に比べて稼働率の低い平日の施設稼働率や、ドリームキャンプの稼働率を上げることを目的に宿泊型のイベントを開催することもあります。といっても、基本的にJグリーンは堺市の公共施設なので、僕たちが好きなように企画して、開催するわけではなく、随時、堺市と相談しながら行なっています。

ー土居さんはいつからJグリーンで仕事をされているのでしょうか。

土居 この施設は2010年4月にオープンしたのですが、僕は同年2月に中途採用で入社しました。以来、ずっとJグリーンの運営に携わらせていただいています。

ー以前は別の仕事をされていたのですか?

土居 以前は、当時、株式会社アスコホールディングスの傘下にあった、株式会社アスコスポーツフェデレーションに勤務していました。同社は当時、女子サッカーのINAC神戸レオネッサや、摩耶のフットサル場『アスコフットサルパークMAYA』、兵庫の丹波にあるサッカー場と宿泊施設を備えたサッカー総合施設『アスコザパークTANBA』の運営を行っていたんです。僕は主にそれらの施設で随時開催していたイベントの企画運営の仕事に3年間携わり、25歳の時に株式会社ジャパンフットボールマーチャンダイズに転職し、現在に至ります。

ーJグリーンでは現在何名のスタッフが働いているのでしょうか。

土居 ドリームキャンプもあわせて社員は25名ほどです。といっても、アルバイトやパートさんもいますし、警備のところはユニベール株式会社さんに、清掃や建物の管理メンテナンスは日本管財株式会社さんに、天然芝の管理はインターナショナルゴルフマネージメント株式会社さんに、というように業務を委託しているので、常に100名近い人間がJグリーンで働いていて、それを取りまとめるのも僕の仕事の1つです。

一般利用も可能なクラブハウス内、
カフェレストラン『TOUCH LINE』。
打ち合わせに使用することも。

ーお仕事をされる上での難しさはどういったところに感じていらっしゃいますか。

土居 先ほどもお話ししたように、Jグリーンは堺市の公共施設で、私どもは指定管理者という立場にあるので、基本的に行政のルールに基づいて運営を行わなければいけない難しさは正直、感じています。例えば、僕たちに「利用者のみなさんの顧客満足度をあげるために、この敷地を利用して新たなビジネスを展開したい」という思いがあったとしても、堺市の意向も踏まえ、すべてが実現する訳ではありません。ただ行政の施設である以上、そういった制限があるのは当然ですし、行政の方も年間約80万人もの方が利用されるJグリーンのことを大切に思って下さり、行政のルールの中でできる限りのご尽力はいただいています。そういう意味では、Jグリーンをよりよい施設にしようという思いは堺市も僕たちも、大阪府サッカー協会も同じだと思うので今はとにかく、堺市、大阪府サッカー協会、僕たち指定管理者が同じ方向を向いて、三位一体になってこの施設をよくしていくことを考えていきたいと思っています。

ー年間約80万人もの方が利用されるとなれば、グラウンドや施設のメンテナンスも大変だとお察しします。そのあたりも堺市と相談をしながら行なっていらっしゃるのでしょうか。

土居 開業から10年が経ち、当然ながら芝の磨耗も進んでいく中で、施設のメンテナンスは僕たちも一番の課題に感じていることです。と言っても、芝の張替えには1面あたり約1億円近い費用が必要だと考えれば、決して簡単なことではありません。もちろん、利用者の方の目線で考えれば、サッカーをする施設である以上、グラウンドのクオリティはいい状態にあるべきだと思いますし、そのために最善を尽くさなければいけないとも思います。実際、その考えを堺市にも理解していただいて5年前に初めて、張替え工事を行なっていただいて以来、人工芝を1年に1面ずつ、計5面を張替えていただきました。とはいえ、残りの6面、プラス、フットサルフィールド8面はオープン当初から一度も張替えをしていないのが現状ですし、天然芝も…メインフィールドは今年、堺市が予算をつけてくださって現在行なっている最中ですが、全てのグラウンドを常にベストコンディションで保つ難しさは、日々痛感しています。とはいえ、『ナショナルトレーニングセンター』という位置づけを考えれば、その名に恥じないクオリティを保つことは私たちの責務の1つだと考えています。それはフィールドに限らず、お客さんや親御さんが観戦する環境面ということでも然りです。指定管理者という責任を預かっている以上、雨よけや日よけを充実させるといったハード面に投資することで施設をさらに発展させていきたいとも思います。ただ、そこも「思い」だけで実現するわけではなく、堺市の理解も、予算も不可欠なので、今後も堺市と一緒になって、よりよい環境を利用者の皆さんにご提供できるように尽力していきたいと考えています。

現在、芝を張り替え中の天然芝メインフィールド。
サッカーやラグビーの代表チームが
練習に利用することもある。

ー今年の4月で開業から10年を迎えます。サッカー界においては認知度の高い施設になりましたが、土居さんもそういった手応えは感じていらっしゃいますか?

土居 もちろんです。おかげさまで土日は常に全てのグラウンドが予約で埋まっている状況にありますし、小学生〜高校生までアマチュア世代の学校、クラブチームにも多数、ご利用をいただいている中で、各年代の指導者の方からは『Jグリーンができて関西のサッカー界が変わったよね』というような言葉を掛けていただいています。もちろん選手育成にご尽力されているのは指導者のみなさんですが、そういった声を聞くと改めてナショナルトレーニングセンターの名に恥じない、施設としてのクオリティを維持していかなければいけないという思いもより強くなります。また、近年は全国高校サッカー選手権の大阪府予選も、3回戦からここで集中開催されていることもあり、高校生の間では『Jグリーンを目指そう!』というのが合言葉になっていると聞いています。ここを利用されている小学生の子供たちが『やっぱりJグリーンでサッカーをするとテンションがあがるわ!』と話しているのを耳にすると、その思いを裏切らないためにもしっかりとこの施設を充実していきたいとも思います。さらに言えば、これだけのグラウンド数を要していますからね。日時によっては例えば、中学生の子供たちが隣のグラウンドで開催されているプリンスリーグを観戦できたり、憧れの高校の練習を見ることも可能です。そんな風に種別を超えて選手や指導者の皆さんが交流を図っている姿を見ると、サッカー界の発展にはとても理想的な環境だとも思います。そういえば、2年前の『平成30年台風第21号』の際は、Jグリーンも人工芝が風でめくれあがったり、競技場の照明の向きが変わったり、破損したり、グラウンドを取り囲むフェンスがなぎ倒されたりと甚大な被害を受けましたが、その際も普段からこの施設をご利用いただいている興国高校や清明学院高校をはじめとする普段よく利用いただいているサッカー部の皆さんが毎日のように足を運んでくださり、ゴミを拾ったり、木を運んでくださったり、人の手でやらなければ追いつかない力作業をボランティアでしてくださって本当に助けられました。と同時に、改めてこの施設がサッカーを愛する皆さんにとってとても大事な場所になっているということを実感しました。これからも、そうした皆さんの想いにしっかりと応えていける施設でありたいと思っています。

日本最多ピッチ数を誇る関西サッカー界の
聖地になりつつある『J-GREEN SAKAI』。
年間約80万人もの人が利用する。

ー現在、スタッフの募集はされているのでしょうか。

土居 随時、募集しています。特に人数の上限を決めているわけではないので、面接をさせていただいて望ましい方がいらっしゃれば採用していきたいと考えています。

ーどういった人材が理想ですか?

土居 スポーツ施設なので、明るく元気な人はもちろん絶対条件ですが、自分で物事をしっかりと考えることができること。またいろんな企業、人材が出入りする施設でもありますので、それぞれの立場を慮りながら仕事を進められる能力も必要だと思います。あとは粘り強い人ですね(笑)。堺市や協会と連携している施設である分、交渉ごとも多いですし、難しい局面に直面することも多々あります。そういった時に諦めずに、この施設のことを考えて行動できる人が望ましいです。ちなみに私はサッカー経験者ですが、サッカーをしていたかどうかは関係ありません。弊社で働いているスタッフにもサッカーをしたことのない人材はたくさんいます。

ー改めて今後、Jグリーンをどんな風に発展させていきたいと考えていますか。

土居 この10年は、本当にあっという間でした。気がつけばオープン当時、ここで練習をしていた小、中学生が最近ではJリーガーとして活躍しているという話もチラホラと聞こえてきます。もちろん、それは指導者の皆さんの尽力によるものですが、この環境でボールを蹴った経験が少しでもサッカー少年たちの成長に拍車をかけるものであったなら嬉しいですし、今後もそういった存在になれるように、この環境をより充実させていきたいとも思います。全国に目を向ければ10年、15年と経つにつれて老朽化が進み、廃れていく施設もたくさん見てきています。であればこそ、継続的に施設をいい状態で管理していくことの難しさは承知の上ですが、これからも指定管理者としていろんな工夫をし、より多くの方に愛される施設として定着、発展させていけるように力を注いでいきたいと思います。

text by Misa Takamura

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