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Vol.96 嬉しいホーム初勝利。チームとして大きくなるために。

  • 2024.03.19

    Vol.96 嬉しいホーム初勝利。チームとして大きくなるために。

発源力

©FCMZ

J1リーグ第3節の鹿島アントラーズ戦で、今シーズン初めて控えメンバーに名を連ねました。ガンバ大阪戦に続き、またしても古巣戦のピッチに立てなかったのは残念ですが、自分としては開幕直前のアクシデントからいろんなことをやり尽くしてきた中で、早々に戦列に戻れたのは一歩前進だと思っています。何より、今シーズンホーム初勝利をみんなと同じピッチで味わえたのもすごく嬉しかったです! 鹿島のやりたいことをさせずに自分たちの戦いに持っていけたのは大きかったし、前線がしっかりとプレッシャーをかけてくれていたことで、後ろが相手の攻撃に晒されるようなシーンもほぼなく、それがイヴォ(ドレシェヴィッチ)やミンギュ(チャン)を中心とした守備陣の安定や完封勝利に繋がったと感じています。

これで、ガンバ、名古屋グランパス、鹿島と、Jリーグを代表するオリジナル10のビッグクラブに3戦負けなし。FC町田ゼルビアにとっては間違いなく理想的なスタートだし、何より初めてJ1リーグを戦う中でこの結果を残せていることは、チームを勢いづける要素だと思います。とはいえ、まだ3試合です。鹿島も然り、この時期は戦術が浸透していないチームも多いですが、力のあるチームは間違いなくこの先、試合を戦うごとに力を上げてきます。質の高い選手が揃うJ1クラブとなれば修正力も高く、次に対戦する時には全く別のチームになっていても不思議ではありません。だからこそ、僕たちも目先の結果に一喜一憂することなく、試合が終わった瞬間は喜んでも、反省すべきところはしっかり受け止め、明らかになった課題は確実に修正して変化させるということに真摯に取り組んでいけるチームになっていきたいとも思います。

そして、そのためには、僕たち試合に絡んでいなかったメンバーが、どういう意識でサッカーに向き合い、チームに刺激を与えていけるのかも大事になってくると感じています。実は鹿島戦の翌日、試合に絡めなかったメンバーを中心にJ3のSC相模原と練習試合を戦いました。僕も45分間出場しましたが、その前半にセットプレーから失点し、僕が仲間に対して叱咤するシーンがありました。
ゼルビアに加入して、そこまで仲間に声を荒げたのは初めてで…。もしかしたら観に来ていただいた方は驚いたかも知れません。ただ、練習試合だからといって、J1クラブの僕たちがJ3クラブに負けていいはずがないし、簡単に失点を許していいわけがありません。ましてや僕たちは公式戦に出場するために、アピールを続けなければいけない立場にいます。その僕たちが、鹿島戦に出場した選手も観戦している前で、緩いプレーをするようではチームの底上げにもつながらないし、信頼も得られません。大袈裟に聞こえるかも知れないですが、そういう小さな気の緩みがチームの綻びになることもあります。後日、本人も呼んで改めてその思いは伝え「あれが公式戦で出たら、お前は、その1プレーで絶対に後悔する。お客さんを含めてみんなが笑顔で帰れなくなるかも知れない。いろんな人の想いを背負ってピッチに立っていることを忘れるな」という話もしましたが、そうやって試合に出ている、出ていないに関係なくチーム全体で、しっかり厳しさを持って進んでいくことは、ゼルビアが大きくなっていくためにも不可欠だと思っています。と同時に、僕自身もそういう厳しさをしっかり自分に突きつけながら公式戦出場を目指したいと思います。

最後に、鹿島戦について個人的に触れたいことが2つあります。1つ目は、この試合がJ1リーグデビュー戦になった鹿島の佳祐(津久井)について。昨年、昌平高校から加入したばかりの彼とは本当によくいろんな話をし、あらゆるシーンで僕の経験を伝えてきた選手の一人でした。僕がプロ1年目にコーチだった大岩剛さんに手取り足取り、センターバックとしてのノウハウを教えていただいたように、佳祐の専属コーチか?! というくらい、いろんなアドバイスをさせてもらいました。その彼が、偶然にもゼルビア戦でデビューすることになり…、まさか目の前で彼のデビューを観るとは思ってもみなかったので、兄貴分のつもりでいた僕としては、素直に嬉しかったです。結果は彼にとって好ましいものではなかったと思います。でも、彼自身はデビュー戦ながらすごく堂々と戦っていたし、ゼルビアのオ・セフンというヘディングに自信を持つFWを相手に、なんとか競り負けまいと戦っている姿を見て、彼の将来にも改めて可能性を感じました。今後さらに直通(植田)ら、経験のある選手たちから刺激を受けて、より大きな選手になっていって欲しいと思っています。

そしてもう1つ。試合後、鹿島サポーターの元に挨拶に伺った時のことです。アウェイチームへの挨拶は、ゼルビアサポーターへの挨拶後に、と決まっていたため、僕が鹿島サポーターの元に挨拶へ行こうと思った時には、ほとんどの方がすでにスタジアムを後にしていましたが、僕なりの思いもあって鹿島サポーターの元にも足を運びました。ガンバ戦と同じく、僕のユニフォームやタオルマフラーを掲げてくれている方が何人かいて、それは本当に嬉しかったです。ただ一方で、そこにいた数人の方に中指を立てるような仕草で迎えられました。僕のプロキャリアにおいて初めてのことでした。その方たちが僕に対してどういう感情だったのかは分かりません。もしかしたら、今回の移籍を快く思っていない方もいらっしゃるのだと思います。そして、どんな感情を持とうと人それぞれでいいと思います。
でも、試合中のブーイングではなく、試合を終えた後、少なからず9年間、同じエンブレムをつけて共に戦い、タイトルの喜びも、悔しい思いも一緒になって味わってきた方たちからそのような態度を取られたのは、ただただ残念でした。そして、それは選手とか、サポーターとか、お互いの立場に関係なく一人の人間として決して許されることではないと感じました。僕なりにどうしてもこの思いを伝えたかったので、ここに書き記しました。どうして欲しい、こう考えて欲しいとは言いません。それが本当に正しい行動だったのか、それぞれが考えるきっかけになれば嬉しいです。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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