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Vol.26 高校生への指導

  • 2021.10.28

    Vol.26 高校生への指導

BRAIN〜ズミの思考〜

昨年、FC TIAMO枚方の監督に就任したが、実は時を同じくして大阪2部リーグに所属する香里ヌヴェール学院高校サッカー部のコーチも兼任している。同じ『指導』と言っても、大きくカテゴリーが異なるため両立は難しく、頭を悩ませることも多いが、面白さも感じている。今回は、その高校生年代の指導について、自身の高校時代を思い出しながら書いてみようと思う。

僕の高校時代は人生で最も辛く厳しく、身体的、精神的に追い込まれた時期だった。と同時に、サッカー選手としてはもちろん、人間としてもっとも成長した時期でもあったように思う。
在籍した船橋市立船橋高校サッカー部は負けることが許されないチームで、公式戦でも、練習試合でも負ければ走り、1対1で負ければ走り、もっと言うと、リフティングが出来なくて走ることや、声が出ていなくて走ることもあった。まだまだある。グラウンドに引いたラインが曲がっていれば走り、学校生活に問題があっても走った。それもあって、僕ら選手はいつも、走りたくない一心で試合や練習に臨み、規則正しい学校生活を送っていたと言っても過言ではない。だが、頑張る理由はどうであれ、そうして3年間、毎日『負けてはいけない』とされる環境に身を置けたことが、子供だった僕を大きく成長させてくれたのは間違いない。

一方、サッカーではどの部分が成長したのか。具体的に挙げるなら、1対1や2対2などの『対人プレー』だ。極端な話、サッカーでは『目の前の相手に1対1で負けなければ試合に負けることもない』と言ってもいいくらい、対人プレーは重要なファクターだ。高校3年間でこの部分を徹底的に鍛え上げられたことはその後のキャリアにおいても大きな財産になった。
市船では特に守備を厳しく指導されたが、前線の選手も例外ではなく、FWまでもが対人での守備力を高いレベルで要求された。当時の市船の練習場は土のグラウンドで、パス&コントロールなどの技術を高めるには決していい環境とは言い難かったが、『対人プレー』にピッチコンディションは関係ない。実際、毎日のように激しいバトルが繰り広げられた。

実は今、僕がコーチをしているヌヴェールでもこの『対人プレー』の練習にほとんどの時間を割いている。自分の高校時代がそうだったように、「目の前の相手に絶対に負けない」というメンタリティを鍛える上で、『対人プレー』は非常に重要で、有効なトレーニングだと思うからだ。もちろん、この練習は育成年代に限ってのことではなく、ティアモでも取り入れているが、指導者である僕が選手に伝える中身は全く違う。JFL(日本フットボールリーグ)でプレーする選手なら「やられるな!」「負けるな!」と端的に言うだけで伝わることも、ヌヴェールの選手にはそうはいかない。どうすれば負けないのか、どうすれば相手を止められるのかを考えさせ、自分で答えを導き出すきっかけを与えなければならない。単に球際に厳しくいくことを求めるだけでは、将来を見据えた成長を促すことはできないからだ。そう考えても、ヌヴェールでの指導経験は僕にとって、指導者としての頭の中を整理するためのいい機会になっているようにも思う。

しかも、ヌヴェールの選手も然り、高校生年代の選手の成長幅はとてつもなく大きい。これはティアモでの指導では感じにくい部分だ。実際、ヌヴェールは、全員がプロを目指すようなエリート集団ではなく、入学当初は「周りのレベルについていけるかな?」と心配になるような選手も数多く在籍する。だが、半年も経てば見違えるような成長を見せ、僕らスタッフを驚かせてくれることも多々ある。そこが高校生年代の指導の面白さであり、責任を実感するところでもある。それだけの伸び代を持つ選手をいかに成長させられるかは、指導者の手腕によるところも大きい。僕も、そのことを日々、自分に突きつけながら指導にあたっている。

そのヌヴェールは昨年、全国高校サッカー選手権大会・大阪府予選の5回戦で、シード校の大阪桐蔭高校に0-1で敗れベスト32で大会を終えたが、今年も同じくベスト32まで順調に勝ち上がり、シード校の清風高校戦に臨んだ。今年こそ『シード校』の壁を打ち破りたいヌヴェールだったが、後半32分に失点し、アディショナルタイムに突入。万事休すと思われたラストワンプレーで、途中出場の3年生が劇的なゴールを決め、同点に追いつく。その直後に主審の笛が鳴り、PK戦に突入。勢いをつなげて1年生GKが1,2本目を止めてPK戦(4-3)を征し、史上初のベスト16に駒を進めた。
残念ながら、10月25日に戦った6回戦は、インターハイ予選でも1-3で敗れた興國高校に0-4で敗戦。プロ内定選手を3人擁する相手に力の差を見せつけられたが、ヌヴェールが初めて打ち破った『シード校』の壁は、選手が日々、自分を磨くことに熱を注ぎ、成長を続けてきた証だ。そのことに自信を持ちつつ、引き続き愚直にサッカーを追求してもらいたいし、僕自身も短い時間ながら指導者として彼らのサッカー人生に関わる責任を『指導』で果たしながら、成長を後押ししていきたいと思っている。

  • 小川 佳純Yoshizumi Ogawa
  • Yoshizumi Ogawa

    1984年8月25日生まれ。
    東京都出身。
    07年に明治大学より名古屋グランパスに加入。
    08年に新監督に就任したドラガン・ストイコビッチにより中盤の右サイドのレギュラーに抜擢され、11得点11アシストを記録。Jリーグベストイレブンと新人王を獲得した。09年には、かつてストイコビッチも背負った背番号『10』を背負い、2010年のリーグ優勝に貢献。17年にはサガン鳥栖に、同年夏にアルビレックス新潟に移籍し、J1通算300試合出場を達成した。
    20年1月に現役引退とFC TIAMO枚方の監督就任を発表し、指導者としてのキャリアをスタートさせた。

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