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Vol.57 特別な戦いだからこそ得られた財産。

  • 2022.08.02

    Vol.57 特別な戦いだからこそ得られた財産。

発源力

©GAMBA OSAKA

25日のパリ・サンジェルマン戦から2日後にこれを書いています。試合の余韻が残る、今の率直な気持ちを言葉に変えると「そりゃあ、強いわ」です!相手は、昨シーズンのリーグ・アンを制し、先のUEFAチャンピオンズリーグでもレアル・マドリッドと激戦を繰り広げた世界的な強豪クラブ。ましてや、現時点で、PSGほど旬なスター選手を揃えるクラブは世界を見渡しても唯一だと思います。
前回もお話ししたように、僕はトゥールーズFC時代の19年にもリーグ・アンでPSG戦を戦っていますが、今のPSGはメッシやセルヒオ・ラモスらが加わって、よりスター感や凄みが増した気がしました。改めて考えると、かつては凌ぎを削りあった…どころかバチバチにやり合っていたレアルとFCバルセロナのキャプテンが在籍しているのだから凄みが出るのも当然ですが、彼らを含め、ピッチで体感したPSGのプレー、判断、思考の全てが一級品で、悔しいことに10回戦っても10回負けるだろう、という感覚に陥ったというのが正直なところです。
おそらく、ガンバサポーターの皆さんの中には、実際にスタジアムで観戦して下さった方もいて、僕らと同じようにパリのスピード、強さに驚かれたはずですが、改めて言います。見るのと、体感するのとでも、何倍もの違いがあります。そう考えても、改めて今のPSGの強さ、クオリティを肌身で感じ取る機会に恵まれたことはチーム、個人にとって、とても貴重で、大きな財産になったと思っています。

そうしたスター軍団の中で、僕自身に最も強いインパクトを残したのは、センターバックのマルキーニョスとボランチのヴェラッティでした。
まず、マルキーニョスは、19年の対戦時と変わらず、カバーリング能力の高さがずば抜けていたし、細かな技術が本当に高く「彼が最後尾にいるだけで、対戦相手は何回、決定機を失うことになるんだ?!」と思い知りました。前半13分にコーナーキックの展開から最後に僕がシュートを打ったシーンがありましたが、そこに立ち塞がったのもマルキーニョスでした。同じDFだから分かりますが、ああいうシーンに直面した際、DFは基本的にボールを目がけて滑り込んでいく守備をすることがほとんどです。それをイメージして、僕もできるだけ高い位置を目掛けてボールを浮かさなければシュートは入らないと思い、ゴールマウスの上に突き刺すイメージでシュートを打ちましたが、それを想定してか、マルキーニョスはスタンディングのまま足を伸ばしてきて止められてしまいました。ペナルティエリア内、ゴールは目の前、という位置でその対応ができたのは彼だからだと思います。また、ゴール前の守備だけではなく、例えば、康介(小野瀬)が右サイドを突破しても必ずその先でカバーに入ったマルキーニョスにボールを刈り取られてしまっていたように、カバーリングもかなり広範囲で的確でした。また28歳ながら、昨年からパリのキャプテンを預かっているように、プレー面だけではなく、これだけ名前のある選手のまとめ役を担っていることに証明される『キャプテンシー』も彼の凄さを際立たせていました。
そしてもう一人、ヴェラッティが中盤で示した安定感も抜群でした。相手が3枚こようと、4枚こようと余裕でいなしてくるというか…プレッシャーがきたら出す、こなければ運ぶ、という判断、プレーの正確性もピカイチで、彼のような選手の中盤での安定があってこそ、前線のメッシ、ネイマール、エムバペらも輝くんだと再確認しました。正直、19年に対戦した際は、彼が途中出場だったこともあり、そこまで強く印象に残っていなかったですが…というか、それ以上にエムバペとマルキーニョスの衝撃が強く刻まれていましたが、今回はスタートから彼を体感して、改めて凄さを思い知りました。

ただ、そういう凄さ、強さに直面しながらも試合が終わって、心のどこかに「楽しかった」という気持ちが残ったのは、これが公式戦ではなく、プレシーズンマッチだったからだと思います。また、僕らがシーズン前に戦うような同じJクラブを相手にしたプレシーズンマッチなら、どことなく後々、対戦することもイメージしながら試合をするのでどこかピリピリ感もありますが、今回は違います。世界中のサッカー選手が対戦を夢見ながら、ほとんどの選手がその機会なくサッカー人生を終えるように、ガンバがこの先、今のPSGと対戦する機会はおそらくありません。個人的にも、30歳の僕が今のPSGともう一度、対戦することはないと思います。
もちろん、そうは言っても、4万人近い観客の皆さんたちが詰めかけたスタジアムで試合をするとなれば、力が入らないはずがなく…現に、PSGが相手といえども最後まで勝ちに行くことしか考えていませんでした。それでも、結果的に大敗したにもかかわらず「楽しかった」という余韻が残ったのは、これがプレシーズンマッチで、対戦ができたことが奇跡と言えるくらい特別な試合だったから。試合後、僕を含め選手がユニフォーム交換に盛り上がったのもプレシーズンマッチだからこそで、仮に公式戦でこんな大敗をしていたら、そんな気にもなれずにロッカーに引き上げていたと思います。
また戦い方という点でも、試合後、トゥールーズ時代に僕の通訳をしていただいた方に連絡をもらい「今のパリを相手にあそこまでハイラインを敷くチームは久しぶりに見たよ。リーグアンでも今のパリが相手なら、どこも引いて守るから」と驚かれましたが、僕たちも勝ち点が是が非でも欲しい公式戦なら、この試合で見せたハイプレス、ハイラインの戦いはできなかったかも知れません。
そう考えても、僕たちがこの先やるべきことはPSG戦の余韻に浸ることではなく、プレシーズンマッチという特別な試合で体感できた経験を、これからのJリーグの戦いに活かすことだと思っています。チーム、個人として、決して万全なコンディションではないPSGに突きつけられた大きな差と個々がどう向き合い、何にトライしていくのか。J1リーグも残り12試合になった今、この先、対戦するチームにどう挑むのか。PSG戦で示したような戦いを、勝ち点、結果が欲しいJリーグでもどれだけ勇気を持って実現できるのか。というよりむしろ、ハイラインも含めて強気で挑まないと勝ち点は取れないと感じているので、そのことに京都サンガF.C.戦からチーム、個人としてチャレンジし続けようと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月に完全移籍が発表されたトゥールーズFCでもすぐさまレギュラーに定着したが、2シーズン目はケガに苦しみ、長きにわたり戦線離脱。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年2月にガンバ大阪への完全移籍が発表された。
    日本代表にも14年に初選出。18年のワールドカップ・ロシア大会でもレギュラーとして活躍した。

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