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Vol.5 ヨーロッパリーグ

  • 2023.02.14

    Vol.5 ヨーロッパリーグ

太田徹のフランス珍道中

年明けから、日本でいう天皇杯に当たるフランスカップも始まり、もうすぐリーグアン・フランスカップ・ヨーロッパリーグという3つのコンペティションを同時に戦う過密日程の1ヶ月がやってきます。今日はヨーロッパリーグについて話をしたいと思います。

ヨーロッパリーグは、チャンピオンズリーグに次ぐヨーロッパのカップ戦で、今シーズンはマンU、アーセナル、ローマ、ラツィオ、レアルソシエダ、フェイエノールトというヨーロッパの強豪が参戦しており、この記事が出る数日後にはベスト16をかけたプレーオフが行われ、僕が所属しているナントはイタリアの強豪ユベントスと対戦します。

ナントは、1990年代後半はチャンピオンズリーグ出場常連クラブでしたが、それ以降低迷が続いていました。そんな中、昨年フランスカップで優勝し、22年ぶりにヨーロッパカップ戦の出場権を獲得しました。僕らのグループは、日本代表の堂安選手が活躍するドイツのフライブルグ、ギリシャの強豪オリンピアコス、アゼルバイジャンのカラバフ。いわゆるビッグクラブ、と言われるクラブはなく、見た目はとても地味なグループ。結果は3勝3敗の2位でグループを突破出来たのですが、非常に厳しい試合ばかりでした。

僕が感じたヨーロッパリーグの特徴の1つは、チャンピオンズリーグとは異なり、5大リーグやオランダ・ポルトガルのようなサッカー大国から少し離れたクラブと試合が出来ること。
皆さんは今までに「ヨーロッパの5大リーグ以外なら、Jリーグでやった方がいいんじゃない?」や、「ヨーロッパのカップ戦には出れないけど、5大リーグでプレーするのと、少しレベルを落としてチャンピオンズリーグ出るの、どっちがいいんだろう?」のようなことを聞いたり、思ったりしたことはありませんか?僕は、フランス生活が長いので、フランス以外の国のサッカーに非常に興味を持っていいます。このような疑問もよく思っていました。いわゆるサッカー大国と言われる国以外の国のクラブはどのようなサッカーをしているのか、また、どんな環境でサッカーをしているのか、ということを知るには絶好の機会でした。

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まずはオリンピアコス。サッカー好きの方なら一度は聞いたことがあるであろう、チャンピオンズリーグ常連のギリシャの強豪。レアルでプレーしていたマルセロ、ハメス・ロドリゲスなどのスター選手が所属しており、ヨーロッパのカップ戦は10年以上連続で出場しているクラブです。
グループステージ初戦はホームで対戦し2−1で勝利。アウェーのアテネで対戦した時は、すでにオリンピアコスはグループリーグ敗退が決まっていて、サポーターも満員とは程遠い2万人程度。ですが、当時はリーグ戦では2位、ヨーロッパのカップ戦でグループリーグ敗退したのが10年ぶりとのことでサポーターは殺気立っていて、アップから発煙筒・爆竹が鳴り放題。試合中は、女性や子供がいないのか?と思うくらいの低い声でのブーイングと応援。ベンチのスタッフと話すのも一苦労というような状況。ギリシャサッカーは近年低迷しており、U E F Aのリーグランキングでは19位。リーグ自体のレベルも高くはありませんが、1回の引き分けや負けで地獄に落ちるような環境のオリンピアコスでプレーするというのは、サッカーの戦術・技術以前に相当なメンタルの強さが要求されるな、と言うのを痛感出来ました。

次にアゼルバイジャンのカラバフ。どこ?という方がほとんどではないでしょうか?このチームは代表チームよりも人気があり、アゼルバイジャンで行われるサッカーの試合でスタンドが埋まるのはカラバグのヨーロッパのカップ戦の試合だけ、という話を聞いていました。
アゼルバイジャンは、隣国アルメニアと紛争中で、出発2日前に、試合会場から遠くない場所で銃撃戦や爆破があった、ということを聞き、スタッフ一同笑うしかない状況でした笑。実際に行ってみるとそんなことはなく、石油効果で首都のバクーはとても栄えた街でした。ですが、前日練習に向かうバスでの移動中に少し路地に入ると、何十年も前にタイムスリップしたかのような、とんでもなく古い家や旧共産圏に共通した暗い色の建物が目に付くように。試合会場もサポーターの洋服は全員黒・白・紺・グレーのような暗い色のみ。スタジアムは、何万人に監視されているような異様な雰囲気。
このカラバフと言うクラブの特徴は、ヨーロッパカップ戦に対する準備。全てのスケジュールは、ヨーロッパカップ戦の試合の日から逆算されており、スタメン組は疲労を溜めないように、常に週1回の試合のサイクル。それ以外の試合はBチームを送ったり、週末の試合を3日早めて木曜日に行うことで、ヨーロッパリーグの試合までに1週間の時間を作るなど、フランスなどのリーグではあり得ないやり方を取っていました。
試合は、非常に苦戦し、アウェーでは0−3で敗戦、ホームでは2−1で勝利。攻撃面やセットプレーは非常に考えられた戦術を採ってくるチームで、対戦したフライブルグの堂安選手と試合後に話した時に、こんな無名なチームでも、本当に良いチームってあるんですね、と話をしたほど。有名な監督に率いられたビッグクラブのサッカーも良いですが、こういうクラブがあると言うのを知れたのはとても良い経験だったと思います。

フライブルグについては、後日日本人選手について書く時に話を出来れば、と思います!今回も浅めの話になってしまいましたが、このような色々な国に行って、その一部に接することが出来るのは非常に良い経験です。レベルの高いサッカーも素晴らしいですが、全く異なる文化や環境でも、同じルールで戦えるというのがサッカーの最も良い点だな、とこういう経験をする度に思います!

次回は、ヨーロッパリーグ・プレーオフ、ユベントス戦について書きたいと思います。

  • 太田 徹Toru Ota
  • Toru Ota

    1981年07月11日生まれ。
    東京都出身。
    武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
    2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
    2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。

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