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Vol.74 巻き返す。

  • 2023.04.18

    Vol.74 巻き返す。

発源力

©KASHIMA ANTLERS

正直、何から触れるべきかわからない。J1リーグ8節・ヴィッセル神戸戦を終えてそんな気持ちでパソコンの前に座っています。確かなのは悔しさ、歯痒さ、情けなさしかないということ。これは自分に対しても、チームに対しても、です。
まず、今シーズン初めて、ケガなどの理由以外で先発メンバーから外れたこと。これについては、改めて言うまでもなく悔しさしかないですが、この世界で結果が出てないときに監督が何かを変えたいと思うのは当たり前のことで、それが自分の交代だと大樹さん(岩政監督)が決めたのなら甘んじて受け入れるしかないと思っています。7節・柏レイソル戦の敗戦後にも、メディアの皆さんには少しお話ししましたが、僕が試合に出始めてからの5試合、いろんなゲーム展開、理由があったにせよ勝てなかったのは事実で、それに対して言い訳をするつもりもありません。勝てないなら勝てるように、試合に出られないなら出られるようにやり続けるだけだと思っていますし、普段のトレーニングからその姿勢をプレーで表現することでスタメンの座を自分で取り返すしかないとも思います。

もちろん、その一方でチームの日本人最年長で、キャプテンという肩書きを背負う一人として、自分のことだけに目を向けてやっていればいいとは思っていません。鹿島への復帰を決めた時から、ピッチ内外での役割を求められてきた中で、それをやり抜く責任も変わらずに持ち続けています。ただ、その姿を試合に出て、ピッチの上で示すことが本当の意味でのクラブ、チームへの貢献だと考えれば、やはり僕自身は現状に抗って、自分を見つめ直して、もう一度先発の座を奪い返さなければいけないと思っています。

そんなことを考えながらベンチスタートで迎えた神戸戦でしたが、チームとしても悔しい結果に終わりました。僕は、サッカーというのは一人の活躍で勝つことも、一人のミスで負けることもなく、勝つときは全員の勝利だし、負ける時は全員での敗戦だと思っているので、どのプレーが良かった、悪かったとか、選手個人のパフォーマンスを取り上げて何かを言うつもりはありません。ただ、首位を走る、勢いのある神戸に対し前半から2点のリードを許す展開になったこと。巻き返しを狙うはずの後半立ち上がりにさらに失点を重ねてしまったことを考えても、チームとして狙い通りに試合を進められなかったのは事実だと思います。また0-3と突き放された後、僕が途中出場でピッチに立った54分以降の時間帯は3バックに変更した中で、鹿島としては優磨(鈴木)のゴールで1点を返すにとどまり、さらに失点も重ねてしまって1-5という大差で試合を終えたと考えれば、全員のパフォーマンスが勝利に値するものではなかったと認めざるを得ません。当然、ビハインドを追う展開になってからも、それぞれに、自分たちが置かれた状況をどうにかしたい、覆したいという思いで戦っていましたが、結果的に1点にとどまったということは、それがチームとして揃わなかったと受け止めています。前回の発源力でも少し書きましたが、試合ではチームとして統一感を持って試合を進められるかは明暗を分けるカギになります。そこはトレーニングを重ねて、チームとしての戦いを成熟させていくしかないので、決して下を向かず、みんなでやり続けたいと思います。

その神戸戦後、ホームサポーターの皆さんがいるゴール裏のところで優磨が拡声器を使って話す一幕がありました。試合後、僕はチームの先頭でスタンドに向かって挨拶をしながら歩いていたので、最後尾を歩いていた優磨がゴール裏で足を止めていたことに気づかず、メインスタンドに挨拶に向かっていましたが、安西(幸輝)に「源くん、優磨が止まっています」と言われて引き返しました。優磨が拡声器を手にする前には「ここで話すことはキャプテンとして、チームの意見になるからな」ということだけを伝えて、彼にあの場を任せることにしました。普段はみんなの前で意見を言うことの少ない彼があの場に立つこと自体が珍しく、だからこそ相当の覚悟だと感じたし、その覚悟を持って彼が伝えようとすることであれば、きっと皆さんに届くだろうと思ったからです。
実際、ゴール裏にいるサポーターの皆さんに向かって問い掛けるように話す優磨の言葉には熱を感じました。
「俺らはまだまだ若いよ。でも俺らも100%戦ってるよ。結果が出てないのは、全部俺らが悪いよ。勝てないのも全部、俺らが悪い。だけどここから絶対に巻き返せるチャンスが俺らにはあるよ。三連覇した時も負け続けたけど、最後に勝った。絶対に巻き返せる」
僕も隣で聞いていましたが、紛れもなくそれは鹿島のリーダーとしての言葉だと感じたし、僕もしっかりと受け止めました。
改めて言うまでもないですが、優磨の意見は、鹿島のキャプテンとしての意見です。「巻き返せるチャンスがある」。僕もその通りだと思っていますし、他の選手も然りです。それに対してサポーターの皆さんからもいろんな声が飛んできて、激励の言葉もあれば、正直、残念な言葉もありましたが、後者ついては前回の発源力でも皆さんに対する僕の思いは書いたので、ここでもう一度それを伝えることはしません。ただ僕たちは、僕たちを信じて、優磨の言葉を信じて、思いをしっかりと受け止めて共に信じて戦ってくれる皆さんと共に、このどん底の状態から必ず這い上がりたいと思っています。
今週は神戸戦から中3日でルヴァンカップ・アビスパ福岡戦を迎えます。グループステージ突破のためにも是が非でも負けられない試合です。試合で味わった悔しさは、試合でしか取り返せません。優磨をはじめ、それぞれが鹿島のために、という思いで背負っているものをしっかりプレーで表現できるように、みんなで顔を上げて、アウェイの地に向かいたいと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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