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Vol.79 ガンバ大阪戦。

  • 2023.07.04

    Vol.79 ガンバ大阪戦。

発源力

©KASHIMA ANTLERS

J1リーグ第18節・ガンバ大阪戦に敗れ、今シーズンの公式戦不敗記録は12で止まりました。前半は特に、相手がやりたいことをほぼ完璧にやられてしまったんじゃないか、というくらい圧倒された展開になり、かつ複数得点を許してしまって相手を勢いづかせてしまった印象があります。前節・湘南ベルマーレ戦も然り、これまでも、そうした展開になる試合は多々あり…。それでも直通(植田)や郁万(関川)を中心に個々が体を張ると同時に、「しっかり耐えよう」という共通意識のもとDFライン近くでコンパクトな守備を築くことで乗り切れていたし、それが勝ち点にも繋がっていました。ですが、ガンバ戦は、鹿島の根本的なベースであるファイティングスピリットも物足なく感じたし、序盤からクリアミスが多かったり、セカンドボールを拾えなかったり、ピッチに足を取られてピンチを招くシーンも多く…そこを確実に突かれ、ゴールにつなげられてしまいました。

ただ、見方を変えれば、そういった相手の時間帯をしっかり耐え切れていれば、これまでの戦いのように鹿島の強さを示せたはずです。そう思えばこそ、大事なのは1つの敗戦に気持ちを持っていかれ過ぎずに、反省するところは反省して、切り替えて次に向かうこと。調子の良い選手にしがみついてでも、みんなが這いあがろうとできるか。調子の良い選手はそれを引っ張り上げられるか、だと思っています。
これについては試合後、少し郁万にも伝えましたが、例えばこの試合の彼は、細かいミスはあったとはいえ、僕の目には90分を通してしっかりと自分のプレーをしていたように映りました。そんなふうに、チームとしてみればうまくいっていない時も、個人としては意外と良かったな、とか、逆にチームはすごく良い戦いをしたのに自分は最後まで乗り切れなかったな、みたいなことは、どの試合でも必ずあります。だからこそ、大事なのは、そうやって好調を維持できている選手がチームの悪い流れや敗戦という結果に巻き込まれて一緒に沈んでしまわないこと。なぜならチームというのはどれだけ流れが悪くても、好調な選手の勢いに捕まって、しがみついて這い上がろうとすることで再び流れに乗れることも多々あるからです。

今シーズンの5連勝という流れを作った際にそうした『旗印』になってチームを引っ張ったのは、間違いなく優磨(鈴木)でした。チームメイトの誰もが優磨にしがみつき、逆に優磨も点を取りながら、しがみついてくるみんなを引き上げ、さらにそれまで出番の少なかった垣田(裕暉)や名古(新太郎)、隼斗(仲間)や陸斗(広瀬)らがフレッシュな風を吹かせてくれたことでチームが勢いに乗りました。そういう旗印となる存在は、前線で点を取る選手ではなくてもいいはずです。実際、連勝を重ねていく中では後ろの郁万や直通の守備力がチームメイトを引っ張り上げたように、です。特にセンターバックはピッチで起きるいろんなミスを、最終ラインで踏ん張り切ることで『ミスを、ミスでなくせるポジション』でもあると考えれば、センターバックが旗印になっても良いと思います。そんなふうに、チームとしての内容、結果に関係なく、自分のパフォーマンスをしっかりと発揮できているという手応えをつかめている選手は、その状態をしっかり維持しながら、しがみついてきた選手を一人でも多く、引き上げるプレーを続けることも大事なことです。そして、それがチームとして戦うということだとも思います。
その上で『連敗』をしないことももちろん大事だと思っています。J1リーグの戦いも18試合を終えた今、首位を走る横浜F・マリノスとの勝ち点差は11と離されてしまった中で、終盤、上位争いに生き残るには何がなんでも連敗は避けなければいけません。そのことをみんなで今一度、リマインドした上で次節・京都サンガF.C.戦に向かいたいと思います。

最後に、このガンバ戦は僕にとって鹿島に復帰後初めてのパナソニックスタジアム吹田での古巣戦でした。思えば、ガンバ時代に初めてカシマスタジアムで試合をした際は、相手のメンバーのうちかつて一緒にプレーしたのは4〜5人だったことから、選手にというよりクラブだとかスタジアムに対して懐かしさを覚える方が大きかった気がします。でも今回は、ガンバを離れてまだ半年ということもあり、クラブやスタジアムには懐かしいという感情はなかった一方で、ピッチに立つ選手のほとんどが昨年までのチームメイト、スタッフもほぼ知った顔ぶれ、という不思議な感覚はありました。ガンバの圭介(黒川)に先制点を決められた時も、ついこの間までそれを一緒に喜んでいた自分がいたのに、その姿を悔しいという感情が渦巻く中でチームメイトに「大丈夫! 問題ないぞ!」って声を掛けている自分がいて…。そこに初めて味わう種類の違和感も覚えました。
100%声出し応援が解禁になったパナスタもやはり素晴らしい雰囲気でした。ガンバが勝利した後のパナスタではガンバクラップが行われるのを知っていたので邪魔にならないように、試合後はできるだけ早く挨拶を済ませようと、小走りでスタジアムを一周してガンバサポーターの皆さんにも挨拶させてもらいましたが、拍手してくれる人もいれば、僕の名前が入ったユニフォームやタオルを掲げてくれる人、ブーイングをしている人、「がんばれ〜」と声をかけてくれる子供や「レギュラーを取り返せ! 頑張れ!」と言ってくれる人など、思い思いに気持ちを伝えてくれて…そうした姿を見ながら、自然と笑顔になることができました。僕がガンバに在籍した3年間は、ケガもあったし、不甲斐ない時間の方が多く…オールブーイングを覚悟してガンバサポーターの皆さんの元に足を運んだだけに、すごく嬉しかったです。ありがとうございました。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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