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Vol.83 齊藤未月。

  • 2023.09.05

    Vol.83 齊藤未月。

発源力

©KASHIMA ANTLERS

直近の湘南ベルマーレ戦。僕のせいで勝ち点2を失いました。情けない。あのチャンスで鹿島を勝たせられるゴールを決め切れない、自分自身に腹が立っています。そのことに触れることも考えましたが、今回はやはり、昨シーズンを共に戦った齊藤未月(ヴィッセル神戸)について書きたいと思います。

J1リーグ24節・柏レイソル戦で負傷した未月のケガについてのリリースを見た時、絶句したまま自然と涙が流れていました。そこに並んでいた診断結果には、自分が負ったケガを含めて見たことがない数の受傷名が並んでいて…。あまりのケガの大きさに言葉が出ないとはこのことで、今でもリリースを見た時のことを思い出すと、泣きそうになります。そんな経験は初めてです。未月が味わった感情、今、味わっている感情は到底、彼にしかわからないもので、どれだけ想像しても及ばないのはわかっているけど、ふとした時に未月のことが頭に浮かび、息苦しさを覚えます。と同時に、これからしばらくの間、未月のガッツ溢れる、熱くて激しいプレーがピッチで観られないのが何よりも残念です。

ただ、直接やりとりをさせてもらった中でも、未月はすでに今回のケガを彼なりに消化して、受け入れているんだなと感じています。それは毎日、未月が更新を続けている note を読んでいても明らかで、彼はすでに未来に向かっています。本当に強い男です。
であるならば…本当の心根は彼にしかわからないことは重々理解しながらも、僕が暗くなるのは違うと思うので、前を向く未月に寄り添う意味で、今回の発源力では『齊藤未月』とはなんぞや、という話を書いてみようと思います!

未月とチームメイトとしてプレーしたのは昨年1年間だけでしたが、年下といえどもその姿からは学ぶことはたくさんありました。常に全力で走り回って、どんな相手にもビビることなく闘って、競り勝って、攻撃にも参加できて、ほんまにいい選手だと感じたし、日本代表にもすごく近い場所にいるんだろうなと思っていました。
見ての通り、体は小さい方だと思いますが、あの負けん気の強さとフィジカルでピッチでの存在感を何倍もの大きさにできるのも未月の良さで、チームメイトとして同じピッチにいてくれることが、めちゃめちゃ心強かったです。
そういえば今シーズン、神戸と対戦した際、試合後、サコくん(大迫勇也)と話をしていた時もサコくんは「未月が神戸に加入してくれたのはめちゃめちゃデカい。蛍(山口)と二人で危ないところは全部刈り取って、前にボールを繋げてくれる」と絶賛していましたが、あんな大エースに求められる存在だということからも、神戸にとっても間違いなく心強い存在だったはずで、それは彼が今シーズン、ピッチで魅せてきたプレー、結果が示しているとも思います。

そんなピッチ上でのパフォーマンスに限らず、年上、年下、外国人、日本人に関係なく、自分の意見をまっすぐに相手に伝えられるのも未月の魅力だと感じていました。僕もどちらかというと自分の考えを臆さずに言葉に変えるタイプだと思っていますが、実際にガンバ時代は、ピッチで未月と言葉をぶつけ合ったことも、何度もあります。英語が話せる分、外国籍選手に向かっても「そのプレーは違うだろ!」とはっきり伝えていましたが、それは僕に対しても同じで…例えば、チームがセットプレーで立て続けに失点を喫した際、僕が後ろからチームを鼓舞したら「お前もちゃんとやれよ!」と怒られたのもいい思い出です(笑)。その時は、ゴールを決めた選手のマークを僕が外したと勘違いしていたようで、僕も負けずに言い返した記憶がありますが、いずれにしても、そんなふうにハッキリと言葉で仲間を叱咤できる選手は意外とこの世界には少なく…。しかも口だけではなく、誰かに意見を伝えることの責任、覚悟を、しっかりと自分のプレーでも表現できる未月のことを、めちゃめちゃリスペクトしていました。

一方で、周りに叱咤するばかりではなく、常に公平な立場に立って、仲間に寄り添えるのも未月らしさだなと感じていました。誰かの意見に対して違うと思えばハッキリと「それは違うでしょ」と口にするし、逆に自分が正しいと思ったことは…仮に100人中、自分以外の99人が違う意見でも、絶対に周りに流されて自分の考えを変えるようなことはありません。以前、そのブレない姿をみて、さすが19歳で湘南ベルマーレのキャプテンをやっていただけのことはあるなと思ってそのことを本人に伝えたら「いやいや、あれは遠藤航くん(リヴァプールFC)が曹貴裁監督時代に19〜20歳くらいでキャプテンをして、チームも航くん自身もいい方向に進んだから僕もその流れで指名されたようなもんです」と謙遜していましたが、リーダーとしての風格、言動はやっぱり育ってきた環境やDNAが大きく影響するものだと思えばこそ、未月には当時からその資質がしっかりと備わっていて、だからこその10代でのキャプテン就任だったんじゃないかなとも思います。

そんな彼だからこそ、いつもその言葉に嘘はなく正直に胸の内を言葉に変えてきた未月だからこそ、その未月が「必ず復帰します」といえば「必ず復帰するんだろうな」って信じられるし、「強くなって帰ってきます」と言えば「今の何倍も強くなって戻ってくるはずだ」と楽しみも湧いてきます。未月がnoteにも書いていた「自分がプレーできないことではなく、サッカーをしている姿を家族や妻、多くのサポーター、サポートしてくれている方々に魅せられないのが自分には一番辛い」という言葉にはすごく共感しましたが、その思いは、きっと未月がこの先向き合う様々な戦いを乗り越えていく上でも大きな力になっていくだろうなってことも想像できます。その過程を、僕自身も未月のnoteに溢れる言葉に触れながら待ちたいと思っているし、ピッチで再会したときに未月に「源くん、そんなプレーじゃ甘いでしょ」とダメだしされないように、しっかり頑張ろうと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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