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Vol.27「チームを引っ張る存在」

  • 2024.05.16

    Vol.27「チームを引っ張る存在」

絶康調

©VEGALTA SENDAI

ベガルタ仙台が久しぶりの3連勝。めっちゃいいでしょ。やっとかっていう。シーズン序盤は下位のチーム相手に勝ち点を取りこぼすことが多かった。連勝も少なかったから、本当に勝ててよかった、3連勝できてよかった。ところが、面白いことに3連勝中は内容が全く伴わず良くなかった。負けた試合は内容が良かったのに点が入らなかった。分かりやすいのは千葉戦だよね。あれだけバチバチやれれたのに0-2の完敗だった。やっている人たちもみんな思っている。群馬戦2-1、鹿児島戦1-0、山口戦2-1。鹿児島戦はメンバーが代わっていたのもあったけれど、群馬戦も全く同じような感じで、改善されてない。鹿児島戦と一緒じゃんって。相手のミスで助かったって話している。サッカーって不思議だなってつくづく思う。

鹿児島戦の椋汰(ベガルタ仙台DF髙田椋汰)のロングシュートがすごかった。あれはまぐれじゃない。本人は「まぐれ」とか謙遜するし、周りも「あんなシュート打てるんだね」っていじっているけれど、あれは椋汰の実力だ。あれを実力だと思ってもっと高めてほしい。シュートを打たないものにゴールはない。年とってくるとびびってパスを選択しちゃう、ミスしたくない感じってあるのよ。オレはあの場面だったらシュート打たないもん。若いオレだったら打っていたと思う。シュートは枠に飛べば相手が嫌がるし、ああいうプレーからいろいろな選択肢が生まれる。やっぱりシュートありきだなって思った。ドリブルやパスももちろん大切だけど、最後のクオリティーが試合を決めるんだなって。オレだったらどうしただろう。ペナ内を見てクロスを上げた方が確率上がるなって考えちゃっただろうな。テレビで見たときは「俺だったらないな」って思った。ああいうプレーをびびらずに続けてほしい。打てば入る可能性が上がる。いままで遠慮してたんだなって思った。求められてる以上のことをしたときに評価される。毎試合ゴールに向かう姿勢を学ばされた感じだ。真瀬(ベガルタ仙台DF真瀬拓海)も戻ってきてポジション争いが激しくなった。お互いが成長するいい機会だと思う。

3連勝中は斗哉(ベガルタ仙台MF名願斗哉)が活躍した。ああいう選手が出てきたことはチームにとってとてもいいことだ。ゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)は練習でよかったらどんどん使う。実際斗哉は誰から見てもよかった。チャンスをもらってピッチでも結果を出した。ベンチに入っていないメンバーのモチベーションも上がってくるし、そういうところをゴリさんも期待しているだろう。ゴリさんってすごいと思う。チームは今、ゴリさんのパワーに引っ張られている感じがする。いいプレーはすごく褒めてくれるし、悪いプレーや試合はしっかり指摘される。千葉戦は負けても「いい試合だった」って言ってくれていたし、群馬戦のあとはボロカスに「よくなかった」って怒っていたし。でも、ゴリさんに引っ張られている状態から脱却しないといけないなとも思う。オレらはもっともっと自発的にできるはずだ。特に期待を寄せているのが竜(ベガルタ仙台MF相良竜之介)だ。群馬戦の翌日、チームメートと「なんでこうなった」って話してた。「分かんないすよね」って。オレは竜の攻撃に向かうパワーが無くなったからああいう試合になったと思っている。中心となってチームを動かしているんだから、もうひと皮むけるためには、苦しくなったときにチームを助ける、流れを変えるプレーができる選手になってほしい。それができるポテンシャルはあるし、実際群馬戦でも前半にゴールを決めた。その前もペナ内で仕掛けてシュートを打つなど、得点のにおいがした。ところが、後半は全くゴールに向かわなくなった。敵の前でボールを持つけど抜いてクロスも上げなかった。最近ゴールがなくて「最近竜はゴールないね」「ペナ内での仕事増やさないと」って話していたところだったから、決めてほっとしたんだと思う。試合の後竜に「満足しちゃってたよね」って言ったら本人は否定していたけれど。2桁得点取りたいなら2-0になってからさらに取りにいかないと。オレならそうする。相手は前にこないといけないから後ろががら空きになる。集中力も切れてくる。チャンスじゃん。竜の姿勢がベガルタの姿勢につながった。それぐらいの影響力がある。勢いづけるプレーをもっと増やして、今のうちにもっと抜け出てくれって思っている。竜は目に見える結果も出てる。だからこそ2点目、3点目を狙っていけば、試合運びも楽になるし竜の評価もさらに上がると思う。そりゃ試合後の分析はDFラインを上げないととかプレッシャーにいかないとって話になるさ。だけど、竜がもっと引っ張っていけばああはならなかった。仙台の攻撃を担っているという自覚を持ってほしくて「お前のせいだよ」ってからかっておいた。勝って反省するおいしいパターン。竜は指摘や助言を素直に受け入れる。かわいいなって思う。去年はあまり試合に出ていなくて、メンバーに入らなくても紅白戦で何か残してやろうとギラギラしていた。あのとき全力で頑張ってた分が今になって報われている。

なんだかんだで3連勝し、次は4連勝の懸かる栃木戦。選手の意識をちょっと変えるぐらいでもっといけると思う。群馬戦は大勝できた試合だった。相手は去年のうちみたいに何をやってもうまくいかない感じだったし、内容は良くなくても2-0までいって展開は楽になった。ああいう試合こそ大量点を狙うチャンスだった。J2はだんご状態だから得失点差が大事になってくる。ああいう試合を2-1で終わっちゃったっていうこの1点が、プレーオフや自動昇格の分かれ目になったりするから怖い。鹿島時代の2017年、川崎に得失点差で逆転優勝され連覇を逃した経験がある。本当に強くなっていくには内容も突き詰めていかないといけない。きちんと修正していければベガルタはもっともっといいチームになる。千葉戦や山形戦の試合を経験しているからこそ、あの群馬戦を悪かったねって言えるのかもしれない。ダービーが基準になると、勝っても反省できる。そんなチームの中でオレは今コンディションが整わなくて試合に絡めずめっちゃ悔しい思いをしている。みんなと一緒にピッチでサッカーしたいって気持ちしかない。元気にチームを引っ張りたい。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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