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Vol.33 福島ユナイテッドFC U-15監督&トップチーム・アシスタントコーチ/石堂和人

  • 2021.03.18

    Vol.33 福島ユナイテッドFC U-15監督&トップチーム・アシスタントコーチ/石堂和人

指導者リレーコラム

サッカー王国、埼玉の出身ながら、東北・福島県で指導者の道に入って3年目を迎える石堂和人さんに「今」をうかがった。福島という地で将来を担う若者たちにサッカーを指導する意味とは何なのか。なぜ、「楽しさ」を伝えようとするのか。非常に興味深い答えとなっている。

ー前回登場していただいたFC Kajitsu U-15の柳崎祥兵監督からのご紹介で今回のご登場となった石堂さんですが、柳崎さんとの関係を教えてください。

石堂 年齢は僕が三つ上なのですが、柳崎はFC町田ゼルビアの同期入団となった選手です。同じボランチとして試合でコンビを組むようになり、そうなると自然と私生活でも一緒に過ごすことが多くなっていった、良き相棒でした。選手のタイプとしては真逆でした。闘う気持ちというところは共通していましたが、ボールを回収する、攻守で走り回るのが柳崎の得意とするところなのに対して、僕はそのボールをもらって好き勝手にやる、まさに“良いところどり”のプレーをさせてもらっていました(笑)。でも、彼とはサッカー観の部分で通じるところがありました。

ー今でもよくお話はされるのですか?

石堂 はい。昔ばなしから入って、徐々にお互いの今の仕事についての話題になっていく感じです。お互いにU-15チームの監督という立場ですから、話も合いますよね。それだけに柳崎の方が先に全国大会出場を成し遂げたことは正直言って悔しいですし、それがまた自分の指導に向けた熱にもなっています。

ー石堂さんは2018年に福島ユナイテッドFC(以下、福島)で現役を終えられた後、すぐに福島のU-15チームの監督に就任されたのですか?

石堂 はい。いきなり任せていただきました。

ーコーチからではなく監督から始めることに戸惑いは?

石堂 「お願いされたからには、やってやろう」という気持ちになりました。最初は子どもたちに僕のサッカー観というものを押し付ける格好になったと思いますが、それでも僕は「サッカーを楽しもう」という視点で指導にあたったつもりなので、自分で言うのもなんですけど、わりとスムーズに指導者の道に入っていけたかなと思いました。

ーご出身は埼玉県ですから、指導者という新しい道に進むにあたって故郷でスタートしたい、と考えても不思議ではないように思えるのですが?

石堂 福島に来て8年間選手としてプレーさせていただいて、そろそろ引退を考え始める年齢に入ってきて「さて、引退したら何をしようかな」と漠然と考えていたころに、当時の監督だった田坂和昭さん(現・栃木SC監督)から「指導者に向いているよ」と言われました。その時の僕はまだ少しの間は現役を続けるつもりでしたが、田坂さんの言葉をきっかけに、すぐに指導者の道に進む準備を始めました。

ー田坂さんからはどういうところが指導者に向いている、と指摘されたのですか?

石堂 具体的なところは何も言ってくれていません。だから、あとになって考えたのは、早く引退させたかったのかな、と(笑)。

ープレーヤーから指導者へ、気持ちの切り替えはうまくいきましたか?

石堂 さすがに最初は少し未練のようなものはありましたが、U-15チームの監督を任せていただいてからわずかの時間で「ああ、こっちの世界に来てよかったな」と思えたんですよね。

ー来てよかった、と思えた理由は?

石堂 選手としてプレーしている時ももちろん楽しかったのですが、アカデミーの子どもたちを少しでもうまくさせるというところで、少し教えただけで、それをすぐに吸収して目に見えてうまくなっていく。その成長のスピードに驚きましたし、同時にものすごいやりがいを感じたのです。

ー福島U-15における指導理念とはどのようなものでしょうか?

石堂 僕が入ってから理想の形を模索してつくりあげようとしている段階なので、まだ明確な理念と言えるものがないのが正直なところです。しかし、アカデミーはトップにつながる人材育成の場であるということをしっかりと理解しているつもりで、そのために僕がトップチームのアシスタントコーチも兼務していると思っているので、トップの良いところをアカデミーに落とし込む作業は着実に進めているところです。

ートップチームにつながるアカデミーという組織の中で指導を行う石堂さんにとって、トップチームのアシスタントコーチを兼務していることは、大きなプラスと言えそうですね?

石堂 トップチームの細かいニュアンスを知っているのと、知らないでアカデミーの指導をするのとでは大きく違う。そこは大いに生かしていきたいと思っています。

ートップチームとアカデミーの指導では、アドバイスの声掛け一つをとっても違うものですか?

石堂 伝えたいこと、伝えようとしていることは同じでも、アカデミーの選手に伝えるときは、よりかみ砕いた物言いをするように心がけています。

ー福島のアカデミーに在籍する選手たちのレベルをどういうふうに感じていますか?

石堂 やはり関東のJクラブに在籍する選手と比べた時の個人戦術のレベルでは若干劣っているように感じます。僕たちはそのレベルに追いつくためにどうするべきかを考えることも仕事ですが、子どもたち一人ひとりの個性を見つけ出して、それを磨いていくこともとても重要なことです。だからこそ僕らの責任は大きいと感じています。最近は高校生チームとやってもある程度は戦えるレベルにまで成長していますから、今後が非常に楽しみなんですよね。

ー練習試合を組むことなども含めて、地方での指導にはいろいろな難しさがあるのだろうと想像できるのですが、逆にメリットはありますか?

石堂 雪の上でトレーニングできること、ですかね! 足腰が鍛えられますよ。あとは、関東など都会と離れているからこそ、そこにいる選手やチームと、自分たちを客観的に比較することができる。例えば、こちらで天狗になっている選手がいざ関東のチームと試合をして通用しなかった時に、「なにくそ!」と思うように、地方にいるからこそ感じることができる、それは乗り越えれば大きな成長につながるはずの『壁』にぶち当たることができる、それも僕ら地方ならではのメリットなんじゃないか、と考えています。

ー雪の上でのトレーニングをするという話ですが、雪かきをしてから練習をするのでは?

石堂 僕らは人工芝のグラウンドでトレーニングしているんですが、お借りしている施設のため、雪かきができません。だから、雪が溶けるのを待つしかないんですが、待っていても溶けないんで、雪の上でボールを蹴るんです。だから冬はどちらかというとテクニックを養うというよりも推進力やプレスバックのところなど、疲れている時にいかにプレー強度を上げられるか、という点にフォーカスするので、技術よりもフィジカル的な強さを身に付ける時期になりますね。

ーさきほどチームのレベルアップを感じる、とおっしゃっていましたが、それは石堂さんのどういうアプローチが効いたからだと思いますか?

石堂 僕は指導する上で、チームでボールを大事にするところ、個人でボールを大事にするところを選手には特に意識させてきました。去年、高円宮杯(JFA 第32回全日本U-15サッカー選手権大会)出場をかけた東北大会の準決勝で青森山田と対戦して、球際で戦うところやセットプレーなどを含めた試合運びの部分でやられ、1-4で負けてしまったんですが、技術的な部分では五分五分でできたという手ごたえをつかむことができました。

ーボールを大事にするスタイルをさらにレベルアップするために必要なことは?

石堂 個人技術、個人戦術の部分でのさらなるレベルアップが必要なことは言うまでもないことですが、メンタル面の向上も必要です。どういうメンタルかというと、自分や自分たちチームに自信を持つこと。自信を持った上でもし失敗したとしても自分で、あるいはチームで取り返しに向かえばいいんだということをしっかり理解すること。そうすることで、失敗を恐れずにチャレンジする強い気持ちを持つことができる。そういうメンタルが技術と同じくらいに、あるいはそれもよりももっと大事なんじゃないかと考えています。

ー強靭なメンタルを身に付けるには厳しい指導やトレーニングが必要だろうと考えがちですが、どうでしょうか?

石堂 僕は『楽しむ』ことを前提に考えて指導しています。では、何を子どもたちが楽しいと感じるかというと、やはり自分たちで考えて、決断して、プレーとして表現することだと思います。こういうプレーはしないほうがいい、こういう場面ではさぼらないほうがいい、という基準は僕がつくっておく、あるいは、子どもたちが考えても答えが出せないときのアドバイスをする程度に僕はしておいて、あとは選手の判断に任せて、彼らに『自分たちでつくりあげていく』という感覚を持たせる。それが子どもたちにとっては楽しいことだ、と思います。つまり主体的に動くことの面白さということなのですが、実はそれって簡単なことではなくむしろ大変な作業だと思います。苦しいことを耐え抜くにも強靭なメンタルが必要ですが、ほかのチームよりも楽しむために困難なことにチャレンジしていく、そこにもやはり強靭なメンタルが必要で、福島の子どもたちには、そういうポジティブな意味での強いメンタルを持ってほしいと考えています。

ーそういうポジティブなメンタルを身に付けさせるために指導者としてどういうアプローチが必要だと思いますか?

石堂 サッカーにおける楽しさの本質を理解させることだと思います。僕は、攻撃だけではなく守備においても「相手の逆を取ることが楽しいんじゃない?」という声掛けをよくしています。それと「ふざけるのと楽しむとは違うよ」ということも。その二つの決定的な違いは、勝利を目標としているかどうかです。ふざけていて勝てるほど勝負の世界は甘くはありませんから。

ー今年の目標は?

石堂 去年は全国大会まであと一歩のところまで行けたので、今年は全国大会出場を成し遂げること。あとは、『U-15東北みちのくリーグ』という東北6県の第3種登録チームが参加するリーグ戦があり、僕らはそこに参加しています。このリーグは青森山田やベガルタ仙台ジュニアユース、モンテディオ山形ジュニアユースなど8チームで構成される『トップリーグ』と、その下に青森、岩手、秋田3県の8~9チームによる『チャレンジリーグ北』、宮城、山形、福島3県8チームによる『チャレンジリーグ南』があって、シーズン終了後の成績で『トップリーグ』の下位2チームと、『チャレンジリーグ北』と『チャレンジリーグ南』それぞれの首位チームとが入れ替わるというリーグ戦です。去年はコロナ禍で開催されませんでしたが、僕らは『チャレンジリーグ南』を今年戦うので、そこで優勝して『トップリーグ』に昇格することが目標です。

ー5年、10年後にはどういう指導者になっていたいと思いますか?

石堂 東北で一目置かれる指導者になりたいですね。引退した時のセレモニーで実は大きなことを言ってしまいまして…。

ー何と?

石堂 「福島ユナイテッドFCのトップチームの監督を目指します!」と。だから、そこを目指しながら、どこのカテゴリーの指導が自分に合っているのかを見ながら指導者としてレベルアップできたらなと思っています。今は育成年代の指導が合っているのかな、と思っていますけどね。

ーしかし、「東北で一目置かれる存在に」という言葉などを聞いても、すっかり東北人ですね!

石堂 町田を戦力外となって福島に拾ってもらってこちらに引っ越してきた1カ月後に、あの東日本大震災に遭いました。あの震災で何人かの選手はチームを離れることになりましたが、僕は拾っていただいたという恩もあり、こちらに残ったわけですが、それから8年間、街の方々には復興に向けて本当に大変な状況にありながらチームと僕ら選手たちを応援していただきました。その御恩には本当に深く感謝しています。選手をやめた今、その御恩をお返しするには、街の将来を背負っていく子どもたちの成長にもつながるサッカー指導という形で返したい、という思いがあるのです。

ーそれでは次の指導者の方を紹介してください。

石堂 ヴァンフォーレ甲府U-15監督の津田琢磨さんを紹介します。

<プロフィール>
石堂 和人(いしどう・かずと)
1982年4月1日生まれ。
埼玉県久喜市出身。
佐野日大高―帝京大のサッカー部に所属、MFとしてプレー。大学卒業後、現AC長野パルセイロの前身である長野エルザSCでプレー(2004年~06年)、その後、松本山雅FC(06年)、FC町田ゼルビア(07年~10年)、福島ユナイテッドFC(11年~18年)でプレー、福島で現役を終える。19年から福島のアカデミースタッフとなりU-15チームの監督に就任、同時にトップチームのアシスタントコーチも兼務している。

text by Toru Shimada

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