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Vol.35 怒涛の連戦を終えて。

  • 2021.09.07

    Vol.35 怒涛の連戦を終えて。

発源力

©GAMBA OSAKA

AFCチャンピオンズリーグから続いた、怒涛の21連戦もいよいよ終盤。先日のルヴァンカップ準々決勝第1戦、セレッソ大阪戦で20戦目を数え「あと一つ戦えば、今シーズン初めての連休だな」…と思っていたら、日本代表に追加招集されました。
というわけで、そのセレッソ戦を終えた後、1時間だけ家に戻ってすぐに日本代表に合流。翌日にはパナソニックスタジアム吹田で行われたワールドカップアジア最終予選のオマーン戦にベンチ入りをしました。そして、今日はこれからカタールに出発します。久しぶりに家族とのんびりした時間を過ごすつもりが、またしても神様は休みを与えてくれませんでした! というより、さらに過酷な日程になりました(笑)! 

ですが、言うまでもなくプロサッカー選手として日の丸をつけて戦う名誉、責任を考えればそんなことは言っていられません!しかも、来年のカタールワールドカップ出場に向けて、絶対に勝ち抜かなければいけないアジア最終予選です。ホームでの初戦は残念な結果に終わりましたが、まだまだ戦いはここからです!今回、僕は守備陣にケガ人が出たことでの追加招集になりましたが、こうして選んでいただいたのは、少なからず僕が過去にアジア最終予選を戦っているという経験値があったからではないかと思っています。そのことを自覚しながら、日本代表の一員として自分に何ができるかを考えながら行動したいし、試合に出ても出なくても日本のために力を注ぎたいと思います。

さて今回は、サッカーキャリアにおいて初めて味わったここまでの20連戦…ACL前の代表戦を含めると個人的には22連戦を、僕なりに振り返ってみようと思います。
前回、連戦の約半分を戦い終えて、体の疲れ以上に頭の疲れを感じているという話をしました。そこからさらに試合を重ね、ようやく連戦のゴールに…というところまできて、自分がどんなことを感じたか、です。
結論から言うと、この連戦は想像していた以上に過酷を極めました。試合や練習をしている以外の時間も、空いた時間は全て体のケアにあてたといっても過言ではないくらい日々、自分を注ぎ込んで目の前の試合を戦ってきましたが、それでも正直、疲労がまとわりついて離れない毎日で、最後の方は心と体のプレーが一致しないこともありました。
特に8月に入ってからの日本の過酷な暑さ、湿度にはかなり苦しめられました。直近のセレッソ戦もキックオフ前には湿度が80%くらいまで上がっていましたが、ずっと見えない雨の中で試合をしているような状況は、そうでなくとも重い体をさらに重くし、頭の中では動こうとしているし、動いているつもりなのに、体がそれについていかないという状況に何度も陥りました。

僕らセンターバックはどちらかというと途中交代の少ないポジションで、先発した選手にアクシデントがない限り、途中出場することはほぼなかったですが、前線の選手で、先発と途中出場を繰り返していた選手は、より疲労度が高かったと思います。出場している時間が短ければ「そんなに疲れなかっただろう」と思う人が多いかもしれないけど、実は途中から出て一気にマックスのゲームテンションにもっていくことの体への負担は、めちゃめちゃ大きいです。
おまけに、サブであろうと先発であろうと同じ心と体の準備をして試合を迎えていると考えれば、ピッチに立った時点で、1試合を戦ったのと大差がないと言って過言ではないほどの疲労が蓄積していたと思います。おまけにそれがアウェイ戦となれば移動による負担ものしかかるわけで…にも関わらず、全員が目の前の試合に最大限の準備をし、力の全てを注ぎ込んで走ろうとする姿に、同じピッチに立ちながら尊敬の念を抱くことさえありました。それはきっとチームメイトの誰もが感じていたはずで、そんな仲間の姿に励まされ「だから、自分も」と思って戦えた選手も多かったと思います。

もっともそのコンディションでの戦いは、全てが理想通りに運んだわけではありません。というか、自分たちの思うような試合は、ほぼできなかったと言う方が正しい気もます。冒頭に書いた直近のセレッソ戦も然り、サボるつもりは決してないのに足が出ない、走れないという試合もありました。本来なら、この連戦の中で降格圏からもっと離れ、上位に近づくことを目指していましたが順位を見ての通り、それができたとは言い難いと思っています。
ただ、それに言い訳をするつもりはありません。プロは結果が全て。僕に限らずチームメイトの誰もが、その言葉を自分に向けて戦ってきた連戦だったと思います。

それでも、僕はこの連戦は間違いなくチームの、個人の力になったと信じています。連戦で練習ができないとか、コンビネーションすら合わせる時間もなく試合を迎えるといった状況で戦ってきたと考えれば、これだけシーズンが進んでも例年のように「試合を重ねた=戦術が熟成してきた」とは正直言い切れません。その事実は、この先、通常の試合間隔に戻った時に影響を及ぼすこともあると思います。
実際、1週間空いたから次からコンディションは良くなるよね、走れるよね、いい試合ができるよね、というほど甘くはないのも覚悟しています。疲労とは相反するようですが、2〜3日置きに試合を戦うのがペースになっていただけに、1週間おきに試合を戦うペースに体の作り方、コンディションを合わせていくのに時間がかかる選手も出てくると思います。もしかしたら逆に間に練習を挟むことでモチベーションを合わせるのが難しくなる選手もいるかもしれません。
また、僕を始め、(キム)ヨングォン、(チュ)セジョンの代表組については、海外から戻って時差との戦いもあります。帰国後は再びバブルを形成した隔離生活に入らなければいけないことも、何らかの影響が出るかもしれません。そう考えると、この先は、これまでの連戦とはまた違う難しさを感じる可能性もあるかもしれないとも思っています。
でも、僕はこの連戦を乗り越えたこと、理想の数ではなかったけれど勝ち点を積み上げられた事実は、必ずこの先の戦いに活かされると信じます。というより、活かさなければ、これだけ苦しい思いをしてきたのがもったいないという感覚の方が近いかもしれません。もっとも、繰り返しになりますが、プロは結果が全てです。そこにエクスキューズはないということを再びしっかり頭に置いて、残りのシーズンを戦っていこうと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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