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指導者リレーコラム特別編 大阪指導者対談 細川慎介(長野FC)×今村康太(RIP ACE)<後編>

  • 2021.10.19

    指導者リレーコラム特別編 大阪指導者対談 細川慎介(長野FC)×今村康太(RIP ACE)<後編>

AFG

日本国内で中学2年生の年代における強化が難しいとされるなか、街クラブが主体となって大会を立ち上げた。その名も「Copa Azuflagy U-14」。今年6年目をむかえる通称「AFG」は、関西地区の6県(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)から48チームが2部に分かれて戦いが繰り広げられている。大会設立の経緯と思いはどんなところから生まれたのか。「Copa Azuflagy U-14」を主催するRIP ACEの今村康太氏と長野FCの細川慎介氏に話を聞いた。

―「Copa Azuflagy U-14」を “本気の大会”にするために何か工夫していることはありますか?

細川 大阪府内のチームだけじゃなくて、関西リーグ常連のチームなど関西全域の2府4県(大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県、和歌山県)から参加してもらっています。それで“本気の大会”ということが伝わっていったらええなと。その選び方も、関西で僕らがお世話になっているチームや強豪チーム、さらにJクラブの下部組織もある一方で、いろいろ考えながらですが、そのあたりはみなさんにも賛同していただいて、バランスよく出場チームを決めています。選手のモチベーションを上げるという狙いでは、審判がレフェリー服をしっかり着用したりと、そういった見た目のところから始めました。またレギュレーションのところでも登録されたメンバー全員を試合に出場させるルールを設けていて、出場しない選手がいたチームは棄権扱いで不戦敗になります。U-14のカテゴリーでは全員の出場時間を長くしてあげたい。この大会を開催した目的として、そういった思いを大事にしていきたいというところから、いろいろなことを決めてきました。

今村 過去には最後の1分で選手を代えようと思ったけれど、ボールが外に出なくて交代させられずに試合が終わり、不戦敗になったチームもありましたね(笑)。

細川 初年度だったか2年目だったか、ホンマにそんなことが1度ありました(笑)。大会のレギュレーションを作った僕らも、いざそうなってしまったら「ヤバい……」って焦りましたよ。ただし、ルールはルールなので、そのチームは上に行けんのか……と。そんなこともありましたね(笑)。

―“本気の大会”を構築するために設けられたルールならではの現象ですね。

細川 そうですね。毎年1、2回は絶対に運営会議を開いて、レギュレーションをブラッシュアップしています。「そういう事案があった」「じゃあ、こうしよう」と。大会のレベルを落とさないように、どんどんレギュレーションの精度を上げていければと思っています。

今村 AFG自体もさらに高いレベルにしていく目的で、リーグ戦を1部・2部制にしました。時系列に沿ってお話すると、最初は関西の北部と南部でリーグ戦を分けて行なっていたんです。滋賀や京都といった大阪よりも北の地域と、南大阪とで。それぞれのリーグ戦の上位チームで、関西の優勝決定戦も始めました。

細川 それから3年目くらいかな?より多くのチームが大会に参加するようになって、南北で分けるのではなく、すべての地域を一緒くたにしようと。

今村 そうですね。各リーグ戦のレベルをより拮抗させた方がいいんじゃないかと感じて、3年目からは南北に分けたリーグ戦を廃止して、地域に関係なくオープンなリーグ戦として組織するように変わっていきました。それで「どうすればこの大会に参加できますか?」という問い合わせもたくさん来るようになったので、4年目からはこのAFGの大会に参加するための新たなリーグ戦もスタートさせました。

細川 それが「Aaリーグ」という大会です。AFGの1部、2部リーグの下のカテゴリーにあたるリーグ戦ということになっています。

今村 いわゆる街クラブ主催のプライベートリーグって、最初は熱を持ってバッと立ち上がることが多いのですが、始まってから2、3年くらい経ったらしゅんとしちゃうような大会も結構多いと思うんですよね。

細川 他の大会の取り組み方やそれに参加しているチームの様子などをいろいろ見ながら、マンネリ化を防ぐような目的もあって、どんどん新しいチャレンジをしています。

―そのような向上意欲もあり、今年で6年目を迎え、サッカー協会主導ではなく街クラブ主催ながらハイレベルな大会として知られるようになりました。

今村 チームによっては、普段は中学3年生のチームで戦っている中学2年生の選手がこの大会のためにU-14チームに戻ってきてくれたりしています。高いレベルで真剣勝負の場と認識してもらっている証だと思うので、すごくありがたいです。

細川 運営する側としても、そのように中学3年生のチームに何人かの選手が上がっていてメンバーを落としてこられると嫌やなあと思っていたんです。でも、ガチのメンバーで試合に臨んでくれるチームばかり。参加チームはしっかりモチベーションを持って大会に臨んでくれているので、うれしい限りです。

今村 そもそもジュニアユースのカテゴリーはやはり中学3年生がメインになるので、どうしても中学2年生で能力の高い選手は中学3年生のチームに入りますよね。言ってしまえば、その学年の有能な4、5人が抜けた状態で常に戦うのがU-14のチームなんです。

細川 今村くんが言うように、U-14はチームの何人かがU-15でプレーするために抜ける。それで、公式戦や大会もなかった。そのなかで選手は思春期にも入ってくる。さらに、身体能力的な個人差も開いてくる。そういう意味では難しい年代でもあるように思っています。

今村 たぶん中学1年生がU-15チームに上がることはほとんどないので、中学2年生だけがそういった状況になる傾向がありますよね。

細川 U-13(中学1年生)は夏くらいには、みんなが同じくらいの能力になってくる。だから、U-14だけが特に難しい年代という認識は、多くの指導者が共通認識として持っていることではないかと思います。

今村 また、チームのスタッフ構成においてもそうなんですよね。例えばジュニアユースに3人のスタッフがいたとして、重要なスタッフはU-15を担当することが多い。その次はたぶんU-13に割り当てられて、U-14はその優先順位が最も低い実情もあるのかなと思います。その意味で、U-14の指導者自身の監督力もこの大会で鍛えられるなと、僕はすごく思っています。やはり中学2年生は公式戦がないぶん、チームの指導者にとってもそれを「監督業」とは呼びにくいカテゴリーだと思うんです。その子の技術をうまくするという「コーチ」のような意味ではなくて、いつ交代選手を入れるかだったり、ゲームに勝つための能力を磨く機会は、やはり本番の試合じゃないと難しい。この大会では、例えばレギュレーションで定められている4人の交代選手をいつ出場させるのかというところでも、監督力は鍛えられると思っています。なかには、もともとサブの選手をあえてスタートから出して、途中からベースとするメンバーに持っていく監督も出てきたりしています。試合に勝つための本気度がすごく伝わってきますね。

細川 公式戦のように本気の大会だからこそ、始まってからはみなさんもモチベーションを上げてくれていますよね。

今村 どのチームも準公式戦という認識を持ってくれているとすごく感じます。「とりあえず試合を消化しておけばいい」みたいな熱量の少なさはあまり見受けられません。そういったところは一つの成果かなと思います。

細川 そうやって参加する選手や指導者がこの大会を育ててくれています。各ブロックの戦いを勝ち抜いた16チームで行われるファイナルトーナメントも本当にいい舞台だと思っていて、AFGの最後のトーナメントに出てくるチームの選手たちは、みんなすごくいい顔をしているんです。いつも、いいモチベーションで試合に臨んでくれていることが伝わってきますよ。そのファイナルトーナメントは僕らの河内長野市にチームを集めて開催するのですが、いつもすごく雰囲気がいい。Jクラブのスカウトも見に来るような大会にまでなりました。昨年からはコロナ禍で開催自体が難しい状況ですが、なんとか成功させたい思いがあります。

―新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあったのですね。

細川 昨年はトーナメントを開催することができませんでした。今年もちょっとピンチかなと思い、2回くらい「どうする?」って会議を開きましたが、何とか開催する方向で話を進めています。

―Jクラブのスカウトも訪れるとのことですが、過去の出場選手でJリーガーは誕生しましたか?

細川 ガンバ大阪ジュニアユースにも参加してもらっているので、まだトップチームの2種登録ですが、ガンバ大阪の中村仁郎選手はこの大会に出場していました。あとは有名どころでいうと、昨年度の全国高校サッカー選手権に大阪府代表の履正社高校で出場していたフォワードの選手もいましたね。第1回大会で優勝したエルマーノという大阪のチームで活躍して、優秀選手賞を取った選手です。あのとき中学2年生だった選手が高校選手権に出場していたり、その後の成長した姿を見られるのは楽しみの一つですね。大会が始まって6年目なので、まだまだこれからだと思っています。毎年、大会優秀選手の名前をホームページに掲載していますので、ぜひ見てみてください。

―今後はどのような大会にしていきたいですか?

今村 大会をアップデートしていきたいという思いは常に持っています。野望とまでは言わないけれど、全国リーグにまで発展できたらいいなと、うっすらと考えています。

細川 そういう意味では、まずは東海地方のリーガ・レスチマールとのコラボレーションとして、そのチャンピオンシップの開催にチャレンジしようと思っていますよね。それも今村くんがつないでくれているので、僕はもうすべて任せているんですけれど(笑)。

今村 一昨年くらいに東海地方のチームから「同じようなリーグ戦をやりたいから、レギュレーションをマネしてもいいですか?」という問い合わせがあって、それで2020年に東海地方で始まったのが「リーガ・レスチマール」という大会です。AFGと同じ趣旨の大会なので、来年の1月には関西(Copa Azuflagy U-14)と東海(リーガ・レスチマール)の上位チームが集まって、J-GREEN堺で初めてチャンピオンシップを開催することも決定しています。

細川 だから、ますますおもしろい大会になっていきますよ。そうなっていったらいいな、というのが僕のずっと変わらない思いでもあります。

今村 実は関東地方のクラブにも打診していて、そこでも同じようにリーグ戦が組織されるかもしれません。まずは東海地方に「リーガ・レスチマール」ができたので、東海地方と関西地方を前例として日本全国の各地域に打診していけたらおもしろいのかなと思います。

細川 大きくなればなるほど、おもしろくなりそうですね。チャンピオンシップもより大きな規模になって、「関東のチームには負けられへんで」とか「東海のチームには負けられへんで」とか、他の地域の街クラブとか、そういう全国のチーム同士でまた切磋琢磨できたら、選手や指導者のさらなるレベルアップにつながるのかなという思いでいます。こうして大会が大きく発展していっているのもみなさんの力のおかげです。“裏のクラブユース選手権=ウラブユース選手権”じゃないけれど(笑)、サッカー協会やクラブユース連盟主催の大会よりもおもしろい大会になったら最高ですよね。

―最後に今後の関西サッカーの展望をお聞かせください。

今村 関西の選手はみんな仲がいいし、なんかどこへ行っても明るいし、ボケとかツッコミとか面白いので、そんなキャラクターを全面的に出していったらいいのかなと思います(笑)。うちのクラブも「明るいよね」って言ってもらえることがすごく多い。サッカーの技術や戦術も大事ですが、それよりも、そういった人間性がすごくいいところをサッカーで表現していってほしいです。

細川 AFGも選手が楽しみに思う大会にもっとなっていけば、それが強化にもつながっていくはず。昔で言うたら「静岡がサッカー王国」と言われていたけれど、今は大阪にJ-GREEN堺ができて環境が整い、街クラブもJクラブを倒すくらいの勢いがついてきて、盛り上がっています。「それはなんでなん?」て言うたら、やっぱりこういう大会とかで集まって情報共有したり、みなさんで切磋琢磨してやれているからじゃないでしょうか。僕らもこの大会を立ち上げたときに、選手、指導者、みんなが成長したらいいなと思っていました。最初の大会で優秀選手だった子がもう高校サッカー選手権に出ていたり、もちろんRIP ACEもそうやけれどAFGに参加したチームの多くはクラブユースの全国大会にも出ていたり、だんだんと当初の理想通りに成果も出始めています。より個性的なチームだったり、活躍する選手が出てきたら本当にうれしいですよね。そういういい流れが、この先もずっと続いていけばいいなと思っています。

  指導者リレーコラム特別編 大阪指導者対談
細川慎介(長野FC)×今村康太(RIP ACE)<前編>
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