サッカーの中心地であるヨーロッパ。その東部に位置するルーマニアで、選手のために尽力する人物がいる。代理人を務めるモガルダウ・ボグダン氏は、若き日にその業界に足を踏み入れ、以来、ヨーロッパ諸国や中東の地にまで活動の幅を広げている。元ルーマニア代表選手も輩出した名門アカデミー出身の代理人が、その道へと進んだ経緯を明かした。
―ボグダン氏がこれまでに経験したなかで、最も印象に残っている契約の話を教えてください。
ボグダン 個人的に一番よかった契約の話として思い出すのは、カタール2部リーグのクラブに加入させたセルビア人ストライカーと、イラク1部リーグのクラブとの契約をまとめたブラジル人ストライカーの件です。金額はそこまで巨額ではなかったかもしれませんが、私にとってはすごくいい仕事だったと思っています。あと、8カ月もの間、ケガを負っていて無所属状態が続いたクロアチア人選手をポーランド・エクストラクラサのクラブに加入させられたこともよかったです。困っている選手の役に立てたときにすごく喜びを感じます。
―巨額の報酬を得ることよりも、人助けに価値を見いだしているのでしょうか?
ボグダン そのとおりです。私は基本的に選手のことを考えて動いているので、お金だけのためには動きません。人生において大切なのは、お金だけではありませんからね。実際には、ルーマニア国内でも給料未払いのクラブが多いので、お金のない状態でプレーしている選手をギリシャのクラブに移籍させて、彼らの生活を助けたりしています。また、逆のケースもあります。ブラジルの3部リーグ、4部リーグのクラブの選手はほとんど報酬を得ていないので、そのあたりのリーグから有望な選手を見つけてきて、確実に給料が支給されるルーマニア1部リーグのクラブに入れたりもしています。そのような仕事をできたときは、すごく喜びも大きいです。
―ルーマニアからは遠いブラジルの話もありましたが、どのようにしてそういったところから選手を探し、コンタクトを取っているのでしょうか?
ボグダン 私が外国人選手と契約をしようとする場合は、主にSNSを使っています。SNSのメッセージなどを駆使して、私が興味を持った選手にコンタクトを取ることが多いです。ただし、当然のことですが、その選手にすでに代理人がついている場合は、その代理人とも話をします。そうやっていろいろな選手と関係性を構築していっています。
―直接、現地に行ってスカウトするわけではないのですね。