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Vol. 59 自分たちに傾き始めた『流れ』。

  • 2022.09.06

    Vol. 59 自分たちに傾き始めた『流れ』。

発源力

©GAMBAOSAKA

元気いっぱいで過ごしていた自分としては耳を疑うようなアクシデントで戦列を離れることになり、ここ2試合は外から試合を見ていました。ケガでどうにもプレーできない、という状況なら自分に対して諦めがつきますが、今回はそうではなく、だからこそもどかしさと割り切れない思いしかなかったです。監督交代が決定し、マツさん(松田浩監督)のもとでチームが再出発したばかりの大事な時期に、チームの力に全くなれない状況も悔し過ぎました。
ですが、ピッチには戻った今は、とにかくコンディションを取り戻そうと急ピッチでいろんなことに向き合っていますし、それによってようやく試合を戦える体が戻ってきました。J1リーグも残すところ7試合。未だガンバは残留争いの真っ只中にあり厳しい状況が続いていますが、とにかく今は先のことを考えず、目の前の試合に全てを注いで、勝ち点を積み上げていくしかありません。僕自身もそのために持ちうる全ての力、魂を注いで戦いたいと思います。

さて今回は、外から見た名古屋グランパス戦、アビスパ福岡戦について話をしてみようと思います。
改まって言うまでもなく、サッカーはチームスポーツで、ガンバの一員である僕の心にはどんなシーンでも「ガンバのために」という思いが刻まれています。ガンバのために自分の全てを注ぎ、ガンバのために勝利を目指す。それは、僕だけではなくおそらくはチームメイトにとっても至極当たり前のことだと思います。ですが、その一方で…これは『サッカー選手あるある』ですが、自分が試合に出られずにチームが勝利した場合、その嬉しさは7〜8割で、残りの2〜3割は、その勝利に自分が絡めなかった悔しさを感じています。そこには、勝利すれば次の試合も同じメンバーで戦う可能性が高くなる=自分はまた試合に出られないかもしれないという感情も含まれます。
もっともこの比率は選手によって様々で、僕自身は、自分が置かれている状況にあまり揺り動かされないせいか、嬉しい割合は多い方な気がします。実際、嬉しさと悔しさの割合が半々という選手がいても不思議ではないし、悔しさの方が圧倒的に大きく、心の中では全くチームの勝利を喜べない選手がいるのも理解できます。プロサッカー選手となれば試合に出られなければ仕事を失うことにつながりかねないと考えても、尚更です。

ですが、名古屋グランパス戦での2ヶ月ぶりの勝利は、自分が出ていない試合では100%で嬉しさしかなかったです。そんなことはサッカーを始めた幼少の頃から考えても、初めてです。テレビの前で、ひたすら自分のチームを応援し、1プレーごとに一喜一憂しながら観戦して、勝利した瞬間には心から喜びました。何としてでも残留したい、勝ち点が欲しいという思いから自然と生まれた感情でしたが、それは自分でも驚くくらいの嬉しさで、続くアビスパ福岡戦でパト(パトリック)が決勝ゴールを決めた際も、テレビの前で叫び声を上げて喜びました。
いや…福岡戦については厳密には100%ではなかったかも知れません。それは、3年ぶりの『声出し応援』対象試合だったのに、ピッチに立ってファン・サポーターの皆さんの声援を聞けなかったからです。DAZNでもかいつまんでゴール裏が映し出されていましたし、声も漏れ聞こえてきましたがスタジアムと映像では臨場感が全く違います。さらにその声をスタンドで聞くのか、ピッチで聞くのかによっても感じられるものは全然違うと思います。ましてや、僕はガンバに加入して未だ、一度たりとも皆さんの声援のもとでプレーしたことがありません。だからこそ、ようやく訪れたそのチャンスを自分が逃してしまったことがめちゃめちゃ悔しく、残念だったし、ピッチでそれを聞けたみんなが羨ましかったです。

そして内容ですが…勝った試合ではどうしても攻撃陣や得点を決めた選手がフォーカスされがちで、もちろん名古屋戦でゴールを決めたパトや武蔵(鈴木)も、福岡戦のパトも素晴らしかったですが、僕自身は、この試合でDF陣を中心に見せた守備の粘り、堅守は勝ちを引き寄せる鍵になったと思っています。特に福岡戦は苦しい時間帯も長く続きましたが、そこを失点せずに乗り切れたことが間違いなく決勝ゴールの布石になりました。またそのゴールに至るまでの作りの部分で、悠樹(山本)がキープして右のヒデ(石毛秀樹)に出し、そのヒデがロングキックを選択せずに縦にボールを流したシーンも素晴らしい展開だったと思います。前線にパト、レアンドロ(ペレイラ)がいて、得点が欲しい終了間際という時間帯を考えれば、ロングキックを蹴りたくなってもおかしくないシーンでしたが、それぞれが展開を冷静に判断し、我慢もしながら、勇気を持ってチャレンジしたことがチャンスに繋がりました。いうまでもなく、相手DFもスライディングをしていたことを思えば難しいシュートシーンで、それを利き足ではない左足で決めたパトも素晴らしかったです。そういう意味では、後ろで粘った守備陣、勇気を持って繋いだ中盤、最後の仕上げを完成させた攻撃陣、サポーターの声、とみんなの思いがそろった中でこじ開けたゴールに見えました。
そして何より、この2試合で言葉では言い表せない『流れ』『運』みたいなものが自分たちに傾きつつあることも自信にしていいところだと思っています。これまでは、たとえば、アディショナルタイムにゴールを許すとか、五分五分のボールが相手に渡るとか、なんとなくレフェリーのジャッジが相手寄りに傾くとか、それが入る? っていうスーパーゴールが決まってしまうとか。目には見えない流れが相手に傾いているなと感じる試合も多かったですが、名古屋戦での武蔵のスーパーゴールも然り、アディショナルタイムで勝ち点3を引き寄せられるなど、少しずつ自分たちに流れが生まれているのを感じます。勝負の世界ではこういった流れや運、勢いもすごく大切な要素で、それは優勝する上でも、残留争いでもチームが結果を求めるには不可欠です。
もっとも先にも書いたように自分たちが残留争いの渦中にいる事実に変わりはなく、2連勝したことに対して自分たちの力を過信している選手は一人もいません。だからこそ『勝って兜の緒を締めよ』ではなく、今は兜を締めずに、勝った勢いのままに突き進むことを考えたい。この先の試合も、行けるところまで恐れずにいってやる、というくらいの勢いを持って戦い続けることがJ1残留の道筋になっていくと思っています。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月に完全移籍が発表されたトゥールーズFCでもすぐさまレギュラーに定着したが、2シーズン目はケガに苦しみ、長きにわたり戦線離脱。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年2月にガンバ大阪への完全移籍が発表された。
    日本代表にも14年に初選出。18年のワールドカップ・ロシア大会でもレギュラーとして活躍した。

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