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Vol.70 J1リーグ開幕戦は白星スタート!

  • 2023.02.21

    Vol.70 J1リーグ開幕戦は白星スタート!

発源力

©KASHIMA ANTLERS

2023年のJ1リーグ開幕戦で、鹿島アントラーズは京都サンガF.C戦に2-0で勝利し、白星発進することができました。おそらく、プレシーズンではいい結果を残せていなかったことを受け、不安な目で開幕戦を見ていた人も多かったと思います。正直、僕自身もどことなくチーム全体が元気がないようにも感じていました。
ですが、蓋を開けてみれば、チームとしてすごくいい入りをし、前半から主導権を握って試合を進められました。チームメイトが「ホームサポーター以上に、鹿島サポーターの声援が凄くて、鳥肌が立った!」と話していたことからも、鹿島サポーターの皆さんが作り上げてくれた雰囲気に背中を押されたところもあったんじゃないかと思います。また、プレシーズンでは、思うように得点が生まれていなかっただけに、8分という早い時間帯に先制点を奪えたことで、いい意味でみんなが肩の力を抜いて戦えたのかも知れません。
優磨(鈴木)の前線からのチェイシングによって生まれた2点目のゴールも素晴らしかったです! いや、そのシーン以外にも、キャプテンマークを巻いた優磨はピッチを離れる81分まで終始、頼もしかったです。誰よりも勝利を欲し、誰よりも鹿島のために戦い、いろんなシーンで体を張り、パスを出し、プレッシャーをかけ、仲間を鼓舞し、鹿島のエースとしてチームを牽引してくれていました。見ての通り、優磨がいなければ攻撃が成立しないというくらい輝いていたのも、頼もしさしかないです。

ですが、そんな優磨だからこそ、彼がもらったイエローカードはもったいないなーとも感じました。反スポーツ的行為と判断された38分のシーンです。
もちろん、僕はあの場にいたわけでもなく、映像を通してしか起きていたことを見ていないし、そこに全てが映し出されているわけでもないので、軽率に発言すべきではないと思います。普段の彼という人間を知っているだけに、なんの理由もなくあの行動に出たわけではないだろうと信じていますし、実際に、試合後に優磨をはじめ、いろんな選手と話したら、キックオフ直後からずっと優磨に向けて心ない野次がスタンドから飛んでいたと聞きました。それを考えると、正直、彼の気持ちもわからないでもないです。
ただ、それを踏まえても、鹿島の絶対的なエースである優磨が、開幕戦でもらう必要のないイエローカードをもらったのは事実です。実際、それによって彼はあと3枚イエローカードをもらうと1試合出られなくなるという状況に置かれてしまいました。これが何を指すか? もしかしたら、今回のカードを含め、イエローカードの累積による出場停止が、優勝を懸けた1戦できてしまう可能性もあります。そうなると、僕たちはエースを失って試合をしなければいけなくなり、イコール、今回のカードは回り回って、僕らチームメイト、鹿島を愛する人たちにとってマイナスでしかない、ということになります。これはきっと優磨自身も本意ではないと思います。
もっとも、これがインプレーでもらったカードだったのなら、ここで今回のカードについて触れることはなかったと思います。僕が言うのもなんですが鹿島は伝統的に、決してクリーンなチームとはいえません。これまでの歴史を振り返っても、伝統的に受け継がれてきた『マリーシア』を存分にピッチで発揮しながら、泥臭く戦い、勝利やタイトルを手にしてきたチームです。実際、ピッチ上で相手チームの選手がストレスを感じるはずの行動も、勝つために必要だと感じたら厭わずやってきたし、それによって警告を受けたことも何度もあります。それは、僕が昨年まで在籍していたガンバ大阪時代に、敵として戦った鹿島に改めて感じた『強さ』でもありました。
ただし、それらは全てインプレーで示してきた強さで、それこそが、鹿島が伝統的に受け継いできたフィロソフィだと僕は思っています。スタジアムで何が起きても、プレーでやり返す、勝利で見返す、それが本来の強さだとも思います。そこと照らし合わせて考えても、今回のイエローカードを出されるに至った一連の行動は必要なかったと僕は感じたし、繰り返しになりますが、優磨はピッチに立ち続けてチームを牽引してもらわなければいけない選手だからこそ、もったいないカードはもらってほしくなかったです。そして、彼が鹿島の勝利のために欠かせない選手だと感じているのは僕だけではないからこそ、2点目のゴールが決まった直後、優磨が最初に相手サポーターを煽るようなパフォーマンスをした時点で、チームメイトも彼に注意すべきだったとも思います。

話が逸れましたが、試合の話に戻すと、2-0で迎えた後半も、理想的に進められたと思っています。入りは、フォーメーションを変更し、少しパワープレーが多くなった京都にボールを持たれた時間もありましたが、そうした流れに応じて途中から鹿島も両サイドバックが高い位置を取らずにリスク管理をし、相手に危ないシーンを作らせないようにしながら、試合巧者に立って盤石に試合を進められていたようにも思います。危ないシーンを作られたのも終盤、自分たちのミスから京都の一美和成選手にゴール前に迫られたシーンくらいで、90分をトータルしてみれば相手を圧倒していました。そういう意味では、鹿島にとっては理想的な開幕白星でしたし、大樹さん(岩政監督)が言っていたように「試合を追うごとに必ず良くなっていく」という姿を示せた試合だったと思います。

ちなみに、久しぶりに声出し応援が100%解禁された中での開幕戦の雰囲気も最高でした! 画面を通しても、改めて応援される幸せ、プロサッカー選手としての醍醐味を実感したし、早くあの場に立って試合を戦いたいという思いがより強くなりました。
唯一残念だったのは…試合が終わり、Jリーグ関連のニュースが地上波で放送されていないかチェックしていたところ…ワールドカップ・カタール大会でサッカー界が盛り上がった後のJリーグ開幕だったにも関わらず、ニュース番組のほとんどが、ワールドベースボールクラシック(WBC)に臨む侍ジャパンの宮崎キャンプを大々的に報じていたこと(笑)。ダルビッシュ有選手の合流もあって、侍ジャパンへの興味が高まっているのは重々理解していますが、Jリーグ開幕を取り上げているニュースはほぼなく、報じられていたとしても一部の試合を、わずか数秒だけハイライトを流して終わりだったのは残念すぎました。それを見て、野球と同様にサッカーやバスケットなど、日本のプロスポーツをもっと日本国民の生活に浸透するものにするには、改めて自分たち選手がもっともっとJリーグを盛り上げなければいけないし、地上波でサッカーがどんどん放送されるような時代にしていかなければいけないと感じました。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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