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Vol.27 活動休止はもはや、理由にならない。

  • 2021.05.04

    Vol.27 活動休止はもはや、理由にならない。

発源力

©GAMBA OSAKA

5月2日は、個人的にガンバに加入して初めての大阪ダービーを戦いました。コロナ禍で、大阪でも緊急事態宣言が発令されている最中の一戦ということでリモートマッチ(無観客試合)になりましたが、勝ちが積み上げられていないチームの現状を踏まえても、また『ダービー』という特性を考えても、とにかく勝ちが欲しい一心で臨みました。
チームにとっては昨年7月以来、僕にとってはコロナ禍で初めて経験するリモートマッチで『ダービーらしさ』は正直、一切感じなかったし、僕たちサッカー選手は「観られる」ことも仕事を成立させる大事な要素だけに、サポーターの皆さんがスタンドにいない事実をとても寂しく感じました。もちろん、映像の向こうに皆さんの声援があることは想像していたとはいえ、ピッチに立った全員が「何かが足りない」と感じていたと思います。もしかしたらそれは、画面の向こうで応援してくださっているサポーターの皆さんも同じだったかもしれません。そして、お互いがそういった「何かが足りない」状況にある今だからこそ、勝利を届けることでお互いの想いを繋げたいと思っていました。

ですが、結果は1-1の引き分けに終わりました。これについて、僕自身はアウェイで勝ち点1を取れたのはプラスだ、とか、先制された展開を追いつけたから良かった、とは微塵も思っていません。リモートマッチで正直、アウェイ戦の威圧感は全くなかったと考えても勝ち点3を取らなければいけなかったし、何より、僕たちが今、置かれている状況を考えても負けに等しい勝ち点1だと受け止めるべきだと思います。
ただ、勝ち点3に値する試合内容だったのかと問われれば、悔しいですがそうは言い切れません。守備を預かるひとりとして失点シーンについても、チームとしてどう守るかという部分で甘さがあったと認めざるをえないし、攻撃も相手の脅威になるようなテンポのある連動や崩しの回数も少なく、決定的なシーンはほぼ作れませんでした。その原因を僕は活動休止で出遅れたから、ではないと思っています。4月3日に活動が再開してセレッソ戦は7試合目でしたが、これだけ試合を戦えば、力がないから引き分けた、相手より上回れるものがなかったから勝ち点3をつかめなかったと受け止めるべきだからです。

僕たちは今、このコロナ禍にあってもプロサッカー選手として試合を戦えています。アマチュアスポーツでは、サッカーに限らずいろんな競技が予定通りに開催されていない現状がある中で、僕たちは試合ができています。これは1つに、Jリーグ全体として様々な感染予防対策に取り組み、試合を戦う姿を見せることで、このコロナ禍でもスポーツが成立するということを示さなければいけない、という使命があってのことで、だからこそ、サッカーファンに限らず、日本中の人たちに、コロナに負けずに戦っている姿が、少しでも勇気や希望につながればいいな、とも思います。
ですが、自分たちのホームタウンやガンバサポーターの皆さんに対しては、「頑張ってサッカーをしています」という姿を示すだけでいいのかといえば、そうではないと思っています。なぜなら、今シーズンに入って様々な逆境に一緒に立ち向かってきてくれた皆さんは、すでにサッカーができることも、ガンバをスタジアムで応援できる日常が決して当たり前ではないということも十分すぎるほど感じてくれていると思うからです。であればこそ、今はもうサガン鳥栖戦のように、どれだけ苦しい試合展開になっても点を取って「勝つこと」でしか皆さんの気持ちに何かを響かせることはできないはずです。それが今、僕たちがガンバファミリーに送るべき本当のメッセージになると自覚しているからこそ、ダービーでの引き分けは悔しさと同時に、自分たちの力のなさに対する腹立たしさしか残りませんでした。

もっとも、戦いの全てがダメだったとは思っていません。ヒガシくん(東口順昭)のビッグセーブにも何度も勇気をもらったし、パトリックの力強いPKでのゴールにも『想い』を感じました。なかなか連動できない展開の中でも個々が状況を打開しようと模索し、考えて、変化を与えようとしている姿も同じピッチで何度も確認しました。残念ながら、今はそれがまだ個人の判断でしかなくチームとしてつながっていないことが、攻撃が加速していかない理由でもありますが、そうして個人が与えようとしている変化は間違いなくチームにとってプラスなものです。
PKを獲得した僕のシュートシーンもその1つで、あのシーンで僕はそれまでの展開からある閃きが浮かび、自分で動き方を変化させました。セットプレーのシーンでは本来、ペナルティエリアの中にいるのがセオリーですが、それまでの展開から、相手の2センターバックのハイボールに対する強さを踏まえ、「よーい、ドン」で競り勝つのは難しいなと思い、悠樹(山本)がフリーキックを蹴った瞬間にこぼれ球を拾うための動きをしようとエリアの外に出る選択をしました。そしたら案の定、目の前にボールがこぼれてきたのでシュートを打ったら相手の手に当たりPK獲得に繋がりました。
そのことからも、僕を含め個人が状況に応じて考えて動きを変化させようとすることがプラスに働くことはサッカーには必ずあります。そう考えてもどれだけ苦しくても、それを打開するために自分たちで考え、変化を与えようとすることをやめてはいけないし、その先にしか勝利もないと思っています。

もちろん次の相手、川崎フロンターレ戦でも、です。おそらく今シーズンの川崎の勢いと、現状のガンバを天秤にかければ、多くの人が川崎が上回るだろうと予想しているはずですが、僕はそうは思っていません。試合前なので多くは話せませんが、相手の中盤の3枚をかいくぐることでDFラインを揺さぶることができれば相手を上回る術も、勝機も必ずあると思っています。いや、それ以前に大事なのは、川崎という名前に臆病にならないこと。ランキング的に挑戦者としての謙虚さは持ちながらも、戦う前から相手をリスペクトしすぎないこと。個人的には昨年0-5で負けた以来の川崎戦ですが、自分の力を信じて、仲間を信じて、そして勝利をつかむことだけを考えて、ピッチに立ちたいと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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