COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol.72 鹿島再デビュー 約4ヶ月ぶりの公式戦

Vol.72 鹿島再デビュー 約4ヶ月ぶりの公式戦

  • 2023.03.21

    Vol.72 鹿島再デビュー 約4ヶ月ぶりの公式戦

発源力

©KASHIMA ANTLERS

J1リーグ4節・アビスパ福岡戦で、鹿島アントラーズに復帰後、初めて公式戦のピッチに立つことができました。今回の発源力は、その福岡戦で感じたことをリアルにお伝えしたくて、福岡戦を終えた翌日に書いています。

福岡戦は慣れ親しんだカシマスタジアムでの試合だったからか、いい意味でリラックスして試合を迎えられました。自分にとっては昨年11月19日、ガンバ大阪でのフランクフルト戦以来、約4ヶ月ぶりの試合だったこと。ましてや、今シーズンはここまでフルコートの11対11を最長で20分しかしていなかったこともあり、例えばパスが少し長くなる、短くなるなどの細かいミスは起きるだろうと想定し、『完璧』を求めずに試合に入ったのも良かったのかもしれません。試合中にミスが起きても焦るとか、ネガティブな感情になることもなかったです。もちろん、ピッチに立つ以上、僕が入って、スコンスコンにやられることは絶対にあってはならないと思っていたし、ましてや開幕からの3試合は、流れの中から失点を許していないことに少なからずプレッシャーも感じていましたが、とにかく自分の力を出し切ろうと思っていました。

また、チームが決して悪い流れではない中で大樹さん(岩政監督)に先発のピッチを任されたことへの責任も僕なりに感じ取っていました。試合前後に大樹さんと直接話したわけではないですが、ゲーム感からも長らく遠ざかっている僕をこのタイミングで起用してくれたということは、プレー以上にチームに安心感や安定感をもたらすことを期待されているんだろうと受け止め、それはいろんなシーンで心掛けていたつもりです。チームの雰囲気が少し緩みかけた時、流れが悪くなった時、ましてや今節であれば10人の戦いを強いられてしまった時に、どういうアクションをしてチームを落ち着かせられるのかは90分を通して一番意識していたことでした。
特に10人になってからの戦いということでは、ホーム開幕戦だった2節・川崎フロンターレ戦をスタンドから見ていた経験を僕なりに落とし込んだつもりです。あの試合で川崎は、鹿島が数的優位な状況にありながらどことなく守りに入ったのを察して攻勢に出てきた印象がありました。それと同じで今回の福岡も、数的優位なのに、どこか慌てていて戦い方に統一感がないなと感じていたので、自分たちは守り切るのではなく、勝ちに行くことを求めるべきだと考えました。
実際、試合終盤、近くにいる選手数人を集めて「この試合は絶対に守りに入らない。勝ちに行くぞ。気持ちが大事だぞ」と伝えたのもその思いからです。本来、数的不利の状況でのセオリー的にも、中盤から前線の選手がバランスを崩して前に行き過ぎる展開になれば「待って。今は人数が少ないからしっかりブロックを作って守ろう」と伝えていたと思います。でも、福岡戦では僕も直通(植田)もピッチで感じた流れ、相手の空気を踏まえてピトゥカ(ディエゴ)や樋口(雄太)がガンガンと出ていくのも、安西(幸輝)が高い位置をとることも止めませんでした。もちろんそれは、彼らもまたピッチでの空気を感じ取っていたからこその判断で、そこにチームとして共通理解を持って試合を進められたのも収穫だと思います。だからこそ、そうした展開を勝ちに繋げられなかったのは残念でしたが、福岡戦で示した鹿島の姿は、必ず今後の戦いに繋がっていくと感じています。

また、退場になってしまった海舟(佐野)について少し触れると、米子北高校の後輩でもある海舟は、スタンドから見ていた時にも感じていた通り、落ち着き、ボールへの嗅覚、察知力が際立っていてかなり心強かったです。川崎戦のタロウ(荒木遼太郎)と同じで、次の試合に出られないという意味でチームに迷惑をかけたのは事実ですが、開幕から素晴らしいパフォーマンスでチームの心臓として戦っていた彼が、このタイミングで退場になってしまったことは彼にとっても意味があるものだと思うし、意味あるものにして欲しいです! …ってことを、彼にも伝えたいところですが、なんと、今シーズンが始動してからは挨拶程度でほとんど喋ったことがありません(笑)。チームメイトからは、もともとの性格的にすごく大人しくて口数が少ないと聞いているし、22歳の彼にとって30歳の僕はおっさんすぎて近寄り難いのか、他に会話しづらい理由があるのか…。それを探るためにもこれを機に一度、食事に誘ってみようと思います! 仮に断られたら、その時は米子北高の恩師に電話して、1から彼の取り扱い方法を教えてもらいます(笑)。

ちなみに、鹿島サポーターの皆さんは、いろんなことをよく見ていらっしゃるので自分から白状しておくと、ウォーミングアップでピッチに入場した際、昨年までの癖で一人、メインスタンドに向かって挨拶をしそうになり「源くん、あっちです」って直通にツッコまれたのも、試合前、ピッチに入場し整列した後、相手選手と握手するのを忘れて一人、集合写真を撮るところに足を進めそうになり、またしても直通に「源くん、握手」って言われたのも試合感のなさからです! 特に相手選手との握手はコロナ禍での3シーズンはやっていなかったこともあり、またベンチ外の時も、あの時間はロッカールームからスタンドに上がっている時間と被るので見ていなかったこともあり、すっかり忘れていました。なんならここまで練習試合すらしていない僕は、フィジカルコーチのもとで試合前のウォーミングアップをするのが初めてだったため、アップ中も常に直通に「次は何をする?」「次はこれです」「この後は?」「これをします」とルーキーばりにナビゲートされていました。でも次の試合からはいろんな意味でスムーズにいくと思うので安心してください(笑)。
最後になりましたが、試合後、DAZNのインタビューを受けた後、一人遅れてサポーターの皆さんの元に挨拶に行った際「おかえり!」「昌子頼むぞ!」って声をたくさん掛けていただいたのはすごく嬉しかったです。旧知のサポーターの皆さんには「改めまして、ただいま」と、以前の僕の鹿島時代を知らないサポーターの方には「改めまして、昌子源です」という気持ちになったし改めて、この先もしっかりと自分の姿をプレーで示していかなければいけないという思いが強くなりました。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

ガンバ大阪・半田陸が戦列復帰へ。
「強化した肉体とプレーがどんなふうにリンクするのか、すごく楽しみ」