©VEGALTA SENDAI
リーグ戦を9位で折り返した。情けない。開幕当初の目標にはほど遠い結果になっている。やれる能力とかはあるし、まだまだこれからよくしていこうという気持ちの選手はたくさんいる。そりゃ、今の成績で全然大丈夫だとは思わない。だからみんなで頑張るしかない。
11日の磐田戦でようやく今季初得点できた。あのゴールが勝ちにつながったら最高だった。まあ、途中から入って最低限の仕事はできたと思う。密集でボールを受け、反転しながら左足を振り抜いて左隅に。自分でもびっくりした。「DFが寄せてきていたからブロックして、よしシュート打とう」ってぐらいしか頭になかった。あまり考えていないときこそいいプレーができる。日々の練習の積み重ねかな、考えすぎないから緊張もしない。外したら外したで、うまくなるために、ゴールを決められるようにまた練習する。サッカー選手はその繰り返し。でも大事な試合だったからこそ勝ちたかったな。あと一歩でもう1点入りそうだったし、もちろん2点取って逆転勝ちしたかったから全然満足していない。磐田戦から山口戦までの1週間も練習はすごくよかったと思っている。みんな集中してできていた。監督の要求している部分も練習ではできていた。気を抜くようなこともなかったとは思う。ただ、いい練習がいい試合につながるとも限らない。それでも試合でよくするためには練習するしかない。
前半戦最後の試合となった18日の山口戦は完敗だね、完敗。本来ならうちらがハイプレスとかやりたいところなんだけど、逆に相手にやりたいことやられてしまい相手の土俵の上で戦ってしまった。できることをやろうとしないとか、持っている能力を出そうとしないのか、技術じゃなくて気持ち、メンタルの部分が一番だと思う。調子のいい悪いは1年で必ずある。悪いときなりに最低限の仕事を頑張って、そこから調子を上げていこうとプレーしていると周りが助けるし、そこがサッカーの面白みの一つ。いまの試合に出ているメンバー、ベンチメンバー、ベンチ外のメンバー、みんなでやっていかないといけないなと思う。もっともっとサッカーに熱中して突き詰めていきたい。
サッカーに熱中することが大切なのは、子ども世代にも通ずる。子どもの成長を考えたときに、何ができるのか、何が必要なのか、その解の一つが情熱、熱量の持ちようだと思っている。子どもの成長段階に一番近くで見ている大人の影響は大きい。そこで、何を言うのかじゃなくて、いかにサッカーに熱中させるようにしたり、人間としてあいさつとかさせるようにしたり、人間性のところを口酸っぱく言ってくれる人がどれだけいるかがすごく大事。熱中していると人に言われなくとも必死で練習する。どうやったらうまくなるのかな、という部分は、結局は自分で解決しないといけない。ただし、ヒントをいろいろもらって自分で解決できる子は多くはない。だからサッカーに熱中してもらおう。他の遊びのほうが楽しいってなったりするじゃん。そういうのってその子の性質もあるかもしれないけれど、周りの大人が気持ちを受け止めていればたぶんそうはならない。俺の感覚だから他の人たちとちょっと考え方が違うかもしれないけどね。でもサッカーはさ、ゴールするのが楽しかったり、ボールを奪うのが楽しかったり人それぞれはまるところがあるじゃん。ドリブルで抜くとかパスを通すとか。サッカーの楽しさを教えて熱中するきっかけをつくるのが大人の仕事。運良く俺は今までのサッカー人生において、小学校から高校まで周りの大人にすごく恵まれたと思う。どっぷりとサッカーにはまっていて、何かをやらされているという感覚は全く無かった。その経験をどれだけ還元していけるかを考えている。大人はヒントを与えられるといっても、その人の感覚値だから難しい。それよりも、子どもと一緒になって悩みに付き合ってくれる存在こそが重要で、何年間も一緒にやっていけば絶対うまくなる。なかのFCに顔を出しても、俺はあまり教えていない。指導者に対して「ちゃんと向き合うように」と念を押すぐらい。子どもよりも親御さんのほうが「どうしたらいいんですか?」と聞いてくる。でもね、聞いたところで親がサッカーをやるわけじゃない。子どもにうまくなってほしいと思っていても、その熱意が本人に伝わっていなければ意味がない。だから、子どもがサッカーに熱中できるようにしないといけない。
うまい下手は関係ないよ。技術面にフォーカスすれば、1カ月ちゃんと取り組めば上達する。それが2、3カ月かかることがあるのはプロも一緒。ただ、やり続けることで見えてくるものがある。「教えて」って言ってくる子が少なくなった。本当にうまくなりたいなら絶対に聞きに来るよ。せっかくプロがいるんだし。だからといって、こちらから「こうした方がいいんだよ」って押しつけても100のうち1ぐらいしか伝わらない。俺に対して遠慮してるところはあるかもしれないけどね。一方で、仲間にきつい口調だったりチームメイトに優しくしなかったり、あいさつをしないとなったらしかる。精神論とか根性論って言われるかもしれないけれど、そもそもサッカーは根性がないとできない。小学生にそれを求めているわけじゃなくて、最低限身の回りのことはちゃんとしようってこと。別にサッカーが上手じゃなくてもいい。サッカーに対する姿勢や情熱を育むことが大切。小学生は乾いたスポンジのようになんでも吸収する。そこで勝つためだけにやらせることは好きじゃない。試合を観ているとミスに対してきつい言い方するコーチとかがいる。「なんでできないの」じゃないよ。「クリアしろ」だってその子の判断じゃない。それを受け入れてプレーしたらサッカーが楽しくなくなったり落ち込んだりしちゃう。そういう指導を無くしていきたい。気を抜いたプレーには厳しくても、ミスに対して敏感にはならなくてもいいんだ。前にも話したけど、小学生のうちは勝ち負けだけにこだわる必要はないと思っている。大人たちが子どもと正面からどれだけ向き合えるかが大事。だから、そういう気持ちで寄り添ってくれる大人を、子どもたちも信頼してほしいな。素直な気持ちで受け止めてほしい。楽しませるのは誰にでもできる。一緒にサッカーすれば楽しいんだから。あれこれ言いたいのをぐっとこらえて熱中させるのが難しくもあり、根幹を支える大事な要素でもある。簡単なことではない。でも、これがスタンダードになればその子の伸びしろが違ってくる。熱中できる強みは技術に勝るよ。熱中している子が本当にできるようになりたいと思ったら、きっと寝ずに練習するさ。
遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。