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Vol.81 サッカーの面白さは見方で変わる。

  • 2023.08.01

    Vol.81 サッカーの面白さは見方で変わる。

発源力

©KASHIMA ANTLERS

7月16日のJ1リーグ21節の戦いを終えて、J1リーグが一時中断になっている期間に、さまざまな海外のクラブが来日しています。バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンFC、セルティックFC、FCアル・ナスル、FCインテルナツィオナーレ・ミラノ…。
昨年、ガンバ大阪でパリと対戦した際にも思いましたが、以前は世界的に名前を知られるビッグクラブとプレシーズンマッチを戦うなんてことは考えられなかった訳で…。今年はさらに数多くのチームが来日しているのを見て、改めてすごい時代になったなと思ったりもします。

もちろん、新シーズンに向けたチームづくりをしているこの時期、彼らのコンディションは万全ではないはずです。ましてや、慣れない日本特有の酷暑の中での試合となれば、より足が重くなっているんじゃないかと思います。先日、僕もバイエルンVSマンチェスターCの試合を配信で楽しみましたが、要所要所に素晴らしい技術が光っていたとはいえ、まだまだベストからは程遠いように感じました。
それでも、日本のサッカーファン、多くの子どもたちが彼らとの触れ合いを楽しんでいる姿を見ると、日本における『サッカー』を盛り上げる意味ではすごくありがたい試みだと感じたし、エスコートキッズなどで選手たちと入場する子どもたちの表情を見ていても、夏休みの思い出として…というか、それぞれの人生において、かけがえのない体験になったんじゃないかな、とも思います。
また、スター選手たちが口々に「日本は素晴らしい」「住んでみたい国だ」と言ってくれているのもすごく誇らしいです。多少のリップサービスもあるかも知れませんが(笑)、世界的に名前を知られた彼らの言葉を通して、日本やJリーグが世界に発信されるのも、意義深いことだと思います。

唯一、気になったのは、映像を通して見たエスコートキッズの子供たちの興味が攻撃の選手にばかり向けられていたこと(笑)。プレシーズンマッチということもあり、先発した選手は両チームともベストメンバーではなかったかもしれませんが、素晴らしい選手がたくさん名を連ねていたし、僕自身は、センターバックのルベン・ディアス(マンチェスターC)に注目していました。でも、手繋ぎ入場したエスコートキッズの多くが、一緒に入場した選手以上に、目の前を通り過ぎてベンチに座る控えメンバーのアーリング・ハーランドに「うわぁ!」と目を輝かせていて…。もちろん、ハーランドも素晴らしい選手だし、点を取る選手に注目が行きがちなのはサッカーでは『あるある』です。子どもたちの純粋な気持ちを否定するつもりもありません。ただ、センターバックの僕としては「おい、そこにルベン・ディアスがいるよ!」と叫びたかったというのが正直な気持ちです(笑)。
ルベン・ディアスは今、僕の中で、対人も強い、ヘディングやスピードもあって、パスまで巧いという万能型の選手で、セルヒオ・ラモス(パリ)やファン・ダイク(リヴァプール)に比べても見劣りしない…なんなら、現時点で世界一のセンターバックと言ってもいいんじゃないか、ってくらい素晴らしい選手だと思っています。そんな選手のプレーを日本で生観戦できるなんて羨ましい、の一言に尽きます。
でもやはり、日本の子供たちは点を取る選手、攻撃の選手に惹かれがちというか。サッカーは点を取るスポーツなので、それも理解できるとはいえ、海外ではGKやDFの子供人気も高いし、サッカーはゴールを目指す攻撃陣を抑え込む守備の選手がいてこそ面白いはずです。そのことをより多くの子どもたちに知ってもらえたら嬉しいし、その魅力を伝えるために僕たちセンターバックはもっと頑張らないといけないとも思いました。

実際、194センチもある強靭な体を携えたハーランドがどう点を獲るかも見どころの1つだと思いますが、極端な話、彼に点を獲らさないように立ち向かう選手がいるからハーランドのプレーも際立つとも言えます。仮にGKもDFもいない中でハーランドがただ、ゴールに向かってシュートを打ち込んでも、その凄さは伝わりにくいはずです。
ということを考えていたら、以前、武井壮さんと千鳥のノブさんと食事をした時に、壮さんが「サッカー選手って例えばレスリングやボクシングのように体重別に階級を分けて戦うわけじゃないのにすごいよね」と言っていたことを思い出しました。これは何も、階級のあるスポーツがダメだといっているわけではありません。もちろん、壮さんは常に全てのアスリートをリスペクトされていますし、彼らにはまた僕らとは違う難しさがあるという話もよくされています。
なので、あくまでこれも、体重や身長などの体格差を問わず、しかも相手選手とのコンタクトもある中で戦うサッカー選手ってすごいよね、という壮さんの純粋な思いからの言葉です。もっとも、僕自身は、壮さんに言われて初めて「そういえば、体の大きな相手と対峙するときも特に体格差をハンデと思わず、体の入れ方や対応の仕方を工夫して戦ってきたけど、よくよく考えてみたらこれってサッカーの面白さの1つよな」と思ったほど、それを自覚せずにサッカーをやってきましたが(笑)、もしかしたらそういう見方ができるようになれば、サッカーの違う魅力や、前述した『守備』の面白さにも目がいくかもしれません。ぜひ、試してみてください。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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