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Vol.87 無冠のシーズン。

  • 2023.11.07

    Vol.87 無冠のシーズン。

発源力

©KASHIMA ANTLERS

J1リーグ30節・ヴィッセル神戸戦の敗戦によって、今シーズンの『無冠』が決まってしまいました。リーグ戦はまだあと3試合を残している状況ですが、今回はこの事実を受けて僕なりに感じたことを書いてみようと思います。

まずは非常に悔しく、残念でもあり、自分の力不足を痛感しています。今シーズン、「鹿島にタイトルをもたらす」という決意のもと18年以来、5シーズンぶりに鹿島に戻ってきた中で、それを実現する力になれなかったことはもちろん、ほとんどの試合でピッチに立てずにシーズンを終えようとしていることも情けない、の一言に尽きます。
サッカーではピッチで起きていることが全てで、序盤戦以降はほとんど先発に立てなかったことを思えば、僕がこれから語ることが全てだとは思っていません。ピッチに立った選手にしか感じられないことは必ずあると考えても、もしかしたら僕の考えは、フル稼働してきた選手が感じたことと違う可能性もあります。それを前提に僕なりの思いを言葉にしてみます。

率直に感じたのは「まだまだ若いチームだな」ということでした。長いリーグ戦を戦っていると、シーズン中に2〜3回、ターニングポイントというべき試合が訪れます。今シーズンであれば、28節・横浜Fマリノス戦や30節・ヴィッセル神戸戦はもちろん、上位に踏みとどまることを考えれば直近の浦和レッズ戦もそれにあたる試合だったと思っています。ですが、今シーズンは、なのか、僕がいなかった昨年までのシーズンもそうだったのか、鹿島はそういったターニングポイントの試合において、ことごとく勝利を掴むことができませんでした。

では、その理由は何なのか。
もちろん、試合ごとに勝てなかった要因は違いますが、共通して言えるのは、試合の展開に応じたゲーム運びがうまくないということでした。スコアや流れを踏まえて、今、何をすべきなのか、どういうプレーが必要で、どんなふうに時間を過ごせばいいのか。それが揃わないまま、流れを取り返せない、ずるずると相手にペースを握られてしまう、盛り返せずに試合を終えてしまう。それに対してタイトルを獲得できていたシーズンはどうだったのかを思い返すと…過去と比べるのはあまり好きではないですが、少なからず当時は、試合の状況に応じて、ピッチに立つ選手それぞれがあえて口にしなくても、やるべき役割を理解していて、立ち返られる戦術、成功体験があって、悪い時間帯ほどそこに立ち返って流れを取り戻そうとしていたし、実際にそれによって我慢の時間を乗り越えて結果を掴むことができていました。
1-0とリードしながらも相手に押し込まれているのであれば、余計なことはせず、シンプルに相手のゴールに近づき、シンプルに自分たちのゴールから相手を遠ざけることを考えよう、とか。そのために相手陣地のペナルティエリア付近に簡単にボールを蹴り、FWの選手が徹底してそこに走り込んでボールを受ける、とか。自分たちがいい流れで戦えた試合、「これが鹿島だ」というゲームができた試合をそれぞれに頭に描きながら、自分が何をすべきかを整理して、ひたすら相手の嫌がることを選択する、とか。相手の立場に立てばおそらく「こいつら、腹立つな〜」「イラつくな〜」と思われそうなプレーを、誰もが勝つために厭わずやり続けることができていました。
しかも、ピッチ上で多くの言葉がけをしなくても、です。もちろん、試合を進めていく上で『言葉』は大事だし、コーチングによって変わることもあります。でも一方で、サッカーは1分1秒で展開が変わるスポーツだからこそ誰かの言葉を待っているようでは遅れをとってしまうということも多々あります。だからこそ、言葉はなくとも普段からあ・うんの呼吸で、チーム全体が共通認識のもとで試合を進められるような組織になることを目指さなければいけないし、苦しい状況ほどそういう姿を示せるかが、ターニングポイントと呼ばれる試合ほど明暗を分ける気がします。

その点において、今シーズンの鹿島は若さを感じることが多かったし、ターニングポイントと呼ばれるような難しい試合ほど、そうした組織としての強さを示せませんでした。
先に挙げた試合のうち、横浜Fマリノス戦はその最たる例だったと思います。シーズンを戦ってきた中で絶対的な自信を積み上げつつあった『ホーム』での試合で、僕たちは先制点も奪いながら自分たちから流れを手放し、逆転負けを喫しました。今振り返っても、終盤戦に差し掛かった中での上位チームとの直接対決で、カシマスタジアムを鹿島の空気に変えられなかったことは、今シーズンの鹿島の全てを表していたんじゃないかとも思います。そして、その部分の弱さ、物足りなさが、タイトルを引き寄せられなかった最たる理由だ、とも。

その悔しさ、自分たちの物足りなさをどう克服し、タイトルに近づく強さを備えていくのか。今は正直、整理しきれていません。ただ言えるのは残りの3試合を含めて無駄な試合は1つもないということです。大樹さん(岩政監督)は「残りの3試合は、毎試合、ベストゲームを更新していこう」という話をされていましたが、浦和戦よりも次節・柏レイソル戦が、それよりも川崎フロンターレ戦で自分たちのベストゲームと言えるような試合をし、結果につなげ、最終節の横浜FC戦を今シーズンの集大成と言える戦いにして勝利で締めくくる。まずはそこから始めるしかないし、その姿を示すことが来シーズンに向けた1歩目になると信じています。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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