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Vol.15「ただいま」

  • 2023.11.09

    Vol.15「ただいま」

絶康調

©VEGALTA SENDAI

2週間前から全体練習に合流し、先週からフルメニューをこなしている。やっと帰ってきたって感じだね。手術してからリハビリを続けてきた。トレーナーの松田拓也さんと平雅成さんに、シーズン最後の試合までには復帰を間に合わせたいと熱望していた。同じ足底腱膜炎の手術をした人でも、いつまでも痛みのとれない人や回復が見通せない人がいると聞いた中で、毎日オレの感覚とすり合わせながらリハビリメニューを考えてもらっていた。痛みの伝え方ってすごく難しくて、なかなかうまく言語化できないんだよね。それでも感覚を共有しようと頑張ってもらえたのがすごくうれしかった。前に「100%の状態で戻るためにじっくり取り組んでいく」と宣言していたものの、グラウンドでサッカーしている仲間や、スポーツを見ているとうずうずしてくる。外に出たい、もっと動きたいと駄々こねるオレに2人は「まだまだ。待て」と、はやる気持ちを抑えてくれていた。きちんと段階を踏んだおかげで今、元気に練習のピッチに立てている。急いで復帰しても万全じゃないと同じ怪我を繰り返してしまう。気持ちにブレーキをかけつつリハビリはぎりぎりのラインまでアクセルを踏むような感じ。自分の力ではどうしようもないところを助けてもらいながら、一丸となってリハビリに取り組み、思ったより早く復帰できた。だから試合をしている姿を見せたいなという気持ちはある。感謝を伝えるのは「ありがとう」という言葉はもちろん、ピッチで戦うことが一番。自分のためにも家族のためにもサポーターのためにも。まだ遠藤康は健在だぞと伝えたい。

全開でサッカーやるのは久しぶり。きついね。足の裏の硬さに慣れる作業も必要だった。手術したところの硬さの感覚は、リハビリのときとはやはり違う。制御せず動くのは久しぶりだから。そりゃ違和感はある。でも、痛みが翌日や練習後にぶり返すリバウンドがほぼないから大丈夫だ。あとは練習でやっていくしかない。サッカー勘も問題なさそうだ。怪我前と比べても遜色ない。今は頭が動くけど体が連動しきれていない状態。でも体はゲームや練習ですぐ慣れる。一番心配していたのは頭がついてこない、頭が回らなくなることだった。体力は絶対落ちている。できない部分はあると覚悟していたし、その通りだった。それよりも、頭の回転や声を出しながらのプレーが落ちていないことが収穫かな。それは足の状態を気にせず目の前のプレーに集中できているということだからね。痛みがあるとそっちに意識がいっちゃって反応が遅れる。あとは頭と体が連動するようになれば完全復活だ。フルメニューをこなした初日の感想は「こんなに疲れるんだ。ついてくのでいっぱいいっぱい」。年とったんだなと感じた。若いときは回復力があったけれどね。練習に戻って2週間、ようやく3週目。怖さもありつつやっている。自分の状態は第三者からどう見えるか。今年は試合に出られないかもしれないと思っていた。そんな状態からここまでもってこれただけでもよかったと思う。試合に出たらやれると思う。やるしかないしやれる。ただ、選手を選ぶのは監督。町田戦までの短い期間で全力アピールしている。攻撃の選手だから得点に絡むこと、ゴール決めるなりアシストするなり、練習メニューもゲームが多いから勝たせること。声で存在感を出すとか。できることをしっかりやろうということを心掛けて、必死のアピールを続けている。

負けていい試合は1試合もない。最終節のホームでJ2優勝チームとやれる。ここで勝って「ベガルタすげーじゃん」って思わせたい。最近ちょっとチームに元気がなくて、練習中の声も少ない。リハビリしているときから耳には入っていた。最近はゲーム形式の練習が多いんだけど、ただなんとなくやっている感じにしか見えない。おのおのが現状をやばいと思っているか思っていないかで今後が変わる。自分自身このままでうまくなれるの?と自問自答しないといけない。うまくなりたいなら違うアクションが出てくるはず。短い期間だけど自分がそれを出していく。先日ある選手に雷を落とした。ある時を区切りに明らかにやる気が出ていなくて、守備はサボるしパスもずれ続けていたから「パスがずれてるよ、しっかり出せよ」と言った次のゲームで威嚇的なパスを送ってきて、それもずれた。ミス自体は仕方がない部分はある。その直後にプレーを止めたことが許せなかった。本来はすごく真面目で将来有望な選手なのにもったいない。なんとなく練習していたらいつまでたっても強度は上がらない。練習からやっていかないと試合でできるわけがない。

今季は残された時間がないから、その中でも楽しみながらやりたいけれど、雰囲気を変えなきゃいけないと思っている。1日を無駄にしたくないし。頑張ったからって試合に出られる甘い世界じゃない。それでも1日のたった24時間で、練習はそのうち2時間なんだから、そのわずか2時間を大切にしてほしいという思いを込めて、サッカーにこだわって成長するという思いを練習から伝えたい。町田戦の出場はガンガン狙っている。簡単じゃないのは分かっていても、出る気満々でいるよ。ここが一番の頑張り所だと思っている。今季1年間支えてくれた人、応援してくれた人たちの前でJ2王者を倒すチャンスがきた。J1昇格もJ3降格もなく、何も残らないシーズンのままで終わりたくない。舞台はもらっているわけだから、そこでガチガチに戦う権利を得るために、まずチームメートと全力で戦ってアピールしている。約4カ月ぶりか。ユアスタのピッチに立ちたい。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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