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Vol.20「初めてのキャプテン」

  • 2024.02.09

    Vol.20「初めてのキャプテン」

絶康調

立候補してキャプテンになった。オレがベガルタ仙台に入って1年目はリャンさん(元ベガルタ仙台MF梁勇基)、2年目はこいちゃん(ベガルタ仙台DF小出悠太)がキャプテンだった。2人とも結構きつかったと思うんだよね。リャンさんは古巣とはいえ鳥栖から戻ってきたばかり、こいちゃんも大分から移籍してきたところで、知らない選手が多い中でまとめ役の重役を担い、すごいプレッシャーの中でつらそうだった。移籍してきた選手は、周りを気遣うより先に、自分の価値を見せなきゃいけないしね。やっぱり若い選手は自分のパフォーマンスをしっかり出すことに集中してほしいなという思いが強い。だからかな。今季、誰が引っ張っていくんだろうと考えたときに、自分しかいないと思えた。年も食ってるし、ベガルタで3年目だし。

これまでのサッカー人生でキャプテンに就いたことがない。自分からやると言ったこともないし、むしろやりたくなかった。それが不思議なもので、「やりたいです」って立候補しちゃった。挑戦でもある。新しいところに踏み込んでみようかなという気持ち。キャプテンというのはどんなものなのか。オレの目指すキャプテンというのは、常に正しい方向にベクトルを向ける存在かな。これまで経験してきたことや感じてきたことを自然と出していけばいいと思っている。オレはオレ、満男さん(元鹿島MF小笠原満男)は満男さん、リャンさんはリャンさん。満男さんやリャンさんのまねをすることもない。ただひたすらベガルタ仙台のためを思って行動すればいいと思っている。ベガルタ仙台がJ1昇格に向けて何をするのが大事なのかといえば、やっぱりみんなが同じ方向を向くことだと思う。この2年間は全員が同じ方向を向いていたかといえば、そうじゃなかった部分はあるし、その矢印もすごく太いものではなかった。いろいろと言ってきた中で、いち選手のアドバイスとキャプテンとして言うことでまた違った形で伝わるかもしれないという期待もあるね。

開幕前のキャンプのときってさ、みんなすごくモチベーションも高いしフレッシュだからいい雰囲気なのよ。常に前向きだし声かけとかもしっかりしているし、ミスしてもポジティブ。だけど、シーズンが始まったら全てがうまく回るわけがない。落ち込む選手だったり、違う方向を向いてしまう選手も出てくる。苦しいときこそピッチ内外でみんな同じ方向を向けるようにしなきゃいけない。常日ごろみんなの手本となる存在でいなきゃいけないな。でも、ずっと気を張っていられるわけでもないし、ふざけるときはふざけるけれど。リャンさんには「ヤスにはやってほしくない、選手として高みを目指してほしい」と言われた。キャプテンの重圧を背負っても高みを目指せることを証明したい。そのときになってみないと分からない部分ではあるけど、オレだって批判にさらされたらへこむっちゃへこむと思うよ。でも、正しいことをし続けていれば、分かってもらえると信じて突き進むしかないでしょ。この年でも新しいことにチャレンジできるっていうのを、同世代にも示したい。いけてるかどうかは分からなくても、できるんだよって。本気でやろうとしていれば協力してくれる仲間も出てくる。副キャプテンはゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)と相談して、真瀬(DF真瀬拓海)、大夢(MF鎌田大夢)、友太(MF郷家友太)の3人にお願いすることにした。カズキ(MF長澤和輝)や林くん(GK林彰洋)ら経験豊富でオレのことをよく分かっている選手もいるし、なんとかなるだろうと思っている。

1月中旬に始まったキャンプも、宮崎市での最終段階に入った。圧倒的な練習量で疲労困憊になりながら、練習試合も数多くこなして、まだまだ結果は伴っていないけれど、周りがどういうプレーができるかっていうのを、徐々にみんなが分かり始めてきたのではないかな。監督の求めることを遂行できたと感じられる時間も結構増えてきた。ディフェンスの強度は引き続き高いレベルを求められ、ビルドアップの土台として4バックから3バックへの可変を最初の選択肢として示されている。去年のトラウマがあるからみんな「可変」という言葉のチョイスに「ん?」となりながらも、吸収しようと精力的だ。ピッチ外では、キャンプ中に選手たちが集まって卓球大会で親睦を深めたよ。こいちゃんがテクニシャンだった。カットとか駆使して戦っててすごかった。面白かったのは真瀬と高田(ベガルタ仙台DF高田椋汰)による阪南大対決。先輩後輩で煽りあっていて、周りを沸かせてた。カズキ・遠藤組VSヨシキ(ベガルタ仙台MF松下佳貴)・菅田(ベガルタ仙台DF菅田真啓)組の対戦も盛り上がったよ。ほぼ全員参加でわいわい楽しんでた。3年前にベガルタに加入したときに「みんなで卓球やって盛り上がろうぜ」って呼びかけて始まった卓球大会も3年連続3回目。新加入のみんなとも一気に距離が縮まったと思う。開幕も近づいてきた。いい状態でキャンプを締めくくりたいね。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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