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Vol.26「宮城のスポーツを盛り上げていきたい」

  • 2024.05.05

    Vol.26「宮城のスポーツを盛り上げていきたい」

絶康調

Jリーグ、プロ野球、Bリーグ。宮城、仙台は三つの大きなプロスポーツ全部が盛り上がっている。そんな地域って、そうそうないよね。他にもフットサルやバレーボール、ハンドボールなどいろいろなスポーツチームがある。オレはベガルタ仙台の一員だけど、宮城のスポーツ全体がもっともっと盛り上がってほしいし、競技の垣根を越えて手を組んでいけたらいいなと思っている。去年バスケットボールの仙台89ERSとプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスの試合を観戦して、その思いはさらに強まった。やっぱりスポーツを観るのってすごく楽しい。

バスケを観に行ったきっかけは、89ERSのソルジャー(片岡大晴選手)とテレビで共演したことがきっかけ。これまでNBAは動画で見ていても、プロバスケの試合を生で見たことがなかった。サッカーと違っていっぱい点が入って盛り上がる。スラムダンク世代だからっていうのもあって、バスケ選手が格好良く見えた。最初はハチ(ブラウブリッツ秋田DF蜂須賀孝治)とマサト(ベガルタ仙台FW中山仁斗)とゼビオアリーナ仙台に行った。負けちゃったんだけど、すっごく楽しかった。エンタメ性あふれる演出に驚いた。バスケはタイムアウトのたびに音楽がかかってチアが出てくる。小まめに演出が絡むのが新鮮だった。連れて行った子どもたちもずっと楽しそうにしていた。観戦ビギナーだからかもしれないけれど、負けても楽しいってなかなかないなって。フリースローが決まったときにみんなで手拍子するのも面白かった。バスケのパワーもすごいんだなって。そして、ベガルタサポーターにもいっぱい声を掛けられて、ベガサポも結構観に行ってるのを知って、またびっくりした。去年はトップリーグのB1で残留争いしていた。今年はホームで勝率5割近いってニュースも見て、どんどん強くなっていってると感じた。そして、コートと客席が近いことが生みだす一体感がすごいね。ベンチが得点や不可解なジャッジに一喜一憂する姿が目の前にある。もちろんサッカーだってベンチと一体になって戦っているよ。でも、近いからなおさらその雰囲気が伝わりやすいと思った。全部で4回観戦して、ソルジャーすごいって思った。バスケ選手としては決して大きくないのに、一回り大きく見えた。途中からコートに入って何度もゴールに絡んでいた。MVPに輝いた試合はうれしかったな。観ていて勇気づけられたし、みんなもソルジャーが闘志全開でプレーする姿に元気をもらっているような気がした。

プロ野球もエンターテインメント性が高い。イニングの合間に見ている人を飽きさせない工夫がある。父親目線で考えると、観覧車もあって遊園地みたいに遊べるところもあるし。試合開始1時間くらい前に着いて、球場をぐるっと周っている間にも、子どもたちがすごく楽しそうに遊んでいた。競技としての野球にプラスして、他にも楽しめるところがあった。試合が始まれば、野球の内容は詳しく分からなくてもバッターが打ったらワクワクするし、点が入りそうな雰囲気にドキドキした。ピンチになればホームランを打たれるんじゃないか、点を取られちゃうんじゃないかってハラハラした。たまたま日本ハム戦だったから、新庄さん(新庄剛志監督)を見ることができてうれしかったのもある。その日はイーグルスのレジェンド銀次さん(昨年引退した銀次内野手)が代打で出てきたときがすごかった。シーズン終盤のクライマックスシリーズ争いのさなかに1軍昇格して初打席だった。球場全体の雰囲気ががらりと変わる存在感だった。あのときのスタジアムの一体感は相手ピッチャーからしたらものすごく嫌だろうなと思った。

二つのプロスポーツを観戦しながらサッカーに何か取り入れられないかと考えもしたが、それがなかなかないのよ。サッカーは前後半45分ずっと動き続けるスポーツだから、演出をはさみにくいんだろうね。そもそもタイプが違うんだからしょうがない。もちろん、観客として観るサッカーも最高に面白い。迫力があるし、いつ貴重な1点が入るか分からない、ハラハラドキドキがたまらない。WEリーグのマイナビ仙台レディースもあるし、6月に開幕するフットサルのヴォスクオーレ仙台は今季久々にトップリーグのF1に挑む。そう考えると仙台のスポーツってすごいよね。だからこそベガルタはJ1に昇格して上位を争えるようにならないといけないと思う。もっとファンを惹きつけるクラブになって、周囲が「ベガルタに負けないように」って切磋琢磨する相乗効果が生まれてほしい。そうすれば、自然と全体的な観戦人口も増える。他の競技を観に行くきっかけになったらいいよね。既に実現していたら申し訳ないけれど、お互いが支え合っていく感じになったらきっとみんなが楽しいよ。そして、選手同士のコラボレーションも増やしていきたい。違う競技のプロアスリートから刺激を受けることは多い。個人的にはイーグルスの岸選手(岸孝之投手)に会いたい。同じ仙台市出身だし。個人対個人の戦いが際立つチームスポーツというプロ野球の世界を勉強したい。どんな意識で戦っているのだろうか、共通項はどこにあるのか、いろいろと気になる。そして、岸選手に限らず、同じアスリートの仲間たちと一緒になって街を盛り上げたい。スポーツの力はすごいと思うんだよね。いろいろな競技が感動を生み出すことによって、地域を盛り上げていけたらいいな。

観客、ファンの立場を経験して、スポーツは生で観るのが一番楽しいと再認識した。高いお金を払ってチケットを買い、時間を削ってでも会場に行く価値がある。そして、強く思ったことがある。大小さまざまな犠牲と引き替えに会場へ足を運んでくれている人たちのためにも、しっかり戦う、走る、諦めないことが最も必要だと。中途半端に戦っていたら観ている人や応援している人にそれが伝わってしまう。オレたちは全身全霊で戦い、思いに応えないといけない。今季のベガルタは観る人をがっかりさせるような試合はないと思って戦っている。全力でチャレンジしないことをゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)が許さないからね。「ミスしてもいいから逃げるようなプレーはするな」ってよく言われている。本来サッカーはそういうものなんだよ。勝たなきゃいけないというプレッシャーから保身に走っちゃうのも分かる。でも、ベガルタはまだタイトルを毎年競えるチームじゃない。だからこそ、全力でどんどんチャレンジし続けていく。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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