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Vol.6 外から見る、今年のJリーグ

  • 2020.06.25

    Vol.6 外から見る、今年のJリーグ

BRAIN〜ズミの思考〜

Jリーグの再開日が発表された。6月27日にJ2&J3リーグ、その1週間後の7月4日にJ1リーグの試合が行われる。現役時代、自チーム以外の注目するカードや気になるチーム・選手の試合は良く見ていたが、今年も、サッカーファンとしてはもちろん、監督としてもJリーグを見て学んでいきたいと思う。

個人的には、古巣の名古屋グランパス、サガン鳥栖、アルビレックス新潟にも注目しているが、それ以外でも、横浜F・マリノスや清水エスパルスの戦いも気になっている。横浜FMの試合は一昨年からよく見ていたが、アンジェ・ポステコグルー監督が敷く『偽サイドバック』やハイラインという他クラブにない戦術に、大いに脳が刺激された。また、その横浜FMでコーチを務めていたピーター・クラモフスキー氏が監督に就任した清水エスパルスも興味深い。戦術的な暖簾分けがあるのかも含め、どんなパフォーマンスを見せるのか追っていきたい。

気になるのは、新型コロナウイルス感染症の影響で延期になった今年のJリーグに適用される今季限定の特別ルールによる影響だ。昨年まで選手としてJリーグを戦ってきた経験を踏まえても、下記の3つは特に注目している。
まず1つ目は「昇格あり・降格なし」というルールだ。これまでは『残留』を意識すればこそ、やりたい戦術、人の組み合わせ、若手の起用などを思い切って考えられない監督もいたはずだが、今年は違う。もちろん、目標とする順位や契約の中にノルマなどがあれば少し違ってくるかもしれないが、そうでなければ少なくとも監督自身の考えや哲学を変えてまで勝ち点をもぎ取りに行くような戦い方を選ぶ必要がない。それによって、監督の色を存分にぶつけ合う試合が期待できるし、選手の個性が発揮されることも増えるだろう。堅い試合よりオープンな試合が増えそうなので、その辺の戦術の駆け引きが試合にどう反映されるのかも注目したい。
2つ目は、選手交代枠が3人から5人に拡大された点だ。5人交代できるということは、フィールドプレーヤーの半分を代えることができるので、上手く活かせばチームをリフレッシュさせることができるが、代えすぎることで混乱を招くこともあるかもしれない。特に、交代回数はハーフタイムをのぞいて3回までと定められていることからも、このルール変更をそれぞれの監督がどのように活用するのかは試合を進める上でのカギになる。ハーフタイムでの交代が増えるのか。あるいは、3人同時交代や、4~5人の同時交代もありうるのか。いずれにしても今年は、例年にはないシーンが見られるかもしれない。関西リーグも交代枠が5人だと考えても、試合展開によってどの選手をいつ交代するのかという監督の采配は個人的な見どころの1つになりそうだ。
3つ目は、再開後の数試合が無観客試合で開催されることだ。選手にとって、サポーターの存在は心強い力になっていたはずだが、その後押しがない中で、各ホームチームがどのように運営していくのかも注目したい。そう言えば、サガン鳥栖からはサポーターの写真付き段ボール製パネル、その名も「砂段ティーノ」を発売するという発表があった。面白いアイデアだと思う。観客の入らないスタンドにサポーターに扮した段ボールが並ぶ光景はどのように見えるのか想像がつかない。Jリーグから提示されているJリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインに沿って、いかにピッチで戦う選手を勇気づけ、DAZN越しに観ているサッカーファミリーを楽しませるのかは、クラブのアイデアにかかっている。そうした運営については、我々、地域リーグで戦うクラブにとっても参考になることは多いはずだ。

こうした特別ルールの適用によって、今シーズンはベテランの出場機会を削り、若手の起用を増やすシーズンになりそうだと言う声も聞こえてくるが、僕は必ずしもそうとは思わない。過密日程が予想される今シーズン、各チーム総力戦になるのは間違いないが、長いキャリアを築いてきた選手こそ、自分の体を熟知しているし、コンディションをしっかり調整できる力も持っていると思うからだ。連戦を考えれば、フルに戦うことはできなかったとしても、必要とされるタイミングは必ずある。僕は引退してしまったが、ベテラン選手にはまだまだできるという姿を見せて欲しいと思っている。

FC TIAMO枚方も、ようやく全体練習をスタートさせることができ、徐々にサッカーのある日常が戻りつつある。まだまだ油断はできないが、事態の終息を願いながらも特別なシーズンの再開を楽しみに待ちたいと思う。

  • 小川 佳純Yoshizumi Ogawa
  • Yoshizumi Ogawa

    1984年8月25日生まれ。
    東京都出身。
    07年に明治大学より名古屋グランパスに加入。
    08年に新監督に就任したドラガン・ストイコビッチにより中盤の右サイドのレギュラーに抜擢され、11得点11アシストを記録。Jリーグベストイレブンと新人王を獲得した。09年には、かつてストイコビッチも背負った背番号『10』を背負い、2010年のリーグ優勝に貢献。17年にはサガン鳥栖に、同年夏にアルビレックス新潟に移籍し、J1通算300試合出場を達成した。
    20年1月に現役引退とFC TIAMO枚方の監督就任を発表し、指導者としてのキャリアをスタートさせた。

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