COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol.59 FC東京 アカデミーU-15むさし GKコーチ兼育成GKコーチ/来 龍哉

Vol.59 FC東京 アカデミーU-15むさし GKコーチ兼育成GKコーチ/来 龍哉

  • 2023.12.27

    Vol.59 FC東京 アカデミーU-15むさし GKコーチ兼育成GKコーチ/来 龍哉

指導者リレーコラム

大学在学中からGKコーチの道を歩み始めて、この年代の選手たちへの指導が1番自分に合っていると話す来さん。エネルギッシュで笑顔溢れるお話のなかでも、子どもたちのことになると真剣な表情とまなざしが印象的です。
子どもたちが大好きなサッカーを磨きあげていくためにできることはなにか、時代による変化が早い教育の側面からもアプローチの工夫を重ねています。よりよく伝わる指導とその意義、そして源流となるGKへの思いをお伺いしました。

post15111_01.jpg

―現在の活動内容と、一日のスケジュールはどのような感じでしょうか。

来 FC東京 U-15むさしチームのゴールキーパーコーチをさせてもらっています。だいたい正午過ぎにグラウンドに到着して、まずは事務所でミーティングをします。火・水・金は午後5時45分から練習があります。練習時間はだいたい90分から100分ほどです。練習場はアクセスがいい場所なので、東京だけでなく埼玉などいろいろな地域から選手に来ていただいていますね。

―このチームに関わることになった経緯は?

来 僕、前の所属チームがアントラーズさんだったんです。そこでお会いした方とご縁があってFC東京からお話をいただき、こちらに加入することになりました。それが7年前です。

―選手時代と、GKコーチになったきっかけを教えてください。

来 サッカーは小学校3年から始め、キーパーになったのは5年生です。GK転向のきっかけは、大会のPK戦です。たまにフィールドプレイヤーがGKをすることもありますよね。僕がキーパー役に入ったんですが、そのとき全部止めて勝ったんです。そこで魅力に気づいたといいますか、魅力を感じてキーパーになりました。
それまでは前の方のフィールドプレイヤーで、狙って行って点を取れる楽しさはあったんですけど、逆も面白いなと。
僕は体格は172センチでキーパーとしては小柄なんです。空中戦とかもありますから、いかにして大きい選手に勝っていくかっていうのは難しいこともありましたけど、自分の狙い通りに味方を動かして、それによってまた思い通りに相手チームをも動かして。その結果としてボールを止められた時の快感はすごいですね。
中学高校時代は大分で選手として活動しましたが、大学の時にGKスクールのGKコーチをはじめました。その大学での恩師が東京ヴェルディ出身の方だったので、そこからのご縁があって卒業した後は東京ヴェルディでGKコーチをさせていただくことになりました。

post15111_02.jpg

―これまでのご経験のなかで指導者としての転機のようなものはありましたか?

来 そうですね。ジュニアユースに上げられた子、そうでなかった子、いろいろいます。どれもが成功でも失敗でもないんですけど、毎年訪れるその場面は、常にたくさんの気づきや思うことがあります。自分にとってはそういう場面のひとつひとつがターニングポイントですね。ターニングポイントはひとつじゃなくて人生でいっぱいあるなと思っています。

指導した選手がトップチームでデビューしたり、プレーしているのを見ると感慨深いですね。すごく気になりますし、試合も観ています。
当時中学2年、3年の頃に、時には厳しいことも言った選手がトップチームに上がって、印象に残る指導者は?という質問に、僕の名前を上げてくれたのは嬉しかったです。たまに連絡もらった時には、プレーに関してはもう指導者ではなくお客さん目線で話してしまいますね。笑

―指導をする上で大切にしていることを教えてください。

来 子どもたちは大好きなサッカーを極めたい、より良い選手になりたいと思って通ってきてるので、その可能性を1%でも引き上げるための環境を作るということは絶対的なモットーとしています。それぞれが持っている長所をより尖らせてあげたいって思って指導をしています。

基本的に指導は楽しくやりたいです。熱いエネルギーはありあまるほどにあるんですが、それはその選手に必要であれば使うという考え方で、出力は調整しています。笑
更に伝え方は色々変えますね。例えば、アニメーションを使った方が今の子供たちはわかりやすいようで、映像を切り取ってアニメーションを入れるとか、選手を動く様子をコマにして見てもらうなど口頭以外にも伝える方法やツールを選びます。
魅力を感じておもしろみを感じてもらえれば、伝え方の一つの種類としての「怒る」が必要がなくなると思っています。テクニカル(技術)やタクティクス(戦術)もその年代の個人の状況に沿って、課題を伝えてあげれば、子どもたちもフラストレーションを溜まることがないようです。
思春期で大人に対して反発する時期なので、衝突があるのが自然かなと思っています。もちろん僕に対しても反発はありますよ。でも逆にその反発がない選手の方が心配です。
反発心からだったとしても「こう思ってこういうプレーをしたんです!」と選手としての意見を出してくる。それがいいんです。いいサッカー選手になるには、すべてにイエスマンでは困ります。

―ここ数十年でキーパーの技術は変わってきているのでしょうか。

来 本質は変わらないと思います。GKでいうと1992年のバックパスのルール改正あたりでGKをめぐる戦術は大きく変化して、攻撃も求められるなど進化もしてきました。
ですが、結局のところ守れないとダメなんです。点を取る、点を取られるというゲームであることに変わりはないので、そういう意味での本質は変わらないと思っています。

post15111_03.jpg

―変化のなかで個の能力とチームの戦術、どちらがより重要になると思われますか?

来 選手としてやっていくためにはチームのための戦術を理解する力、それができる技術は絶対に必要だと思います。だけど、サッカーって人から観てもらって、ワクワクしてもらうものです。そうあるためにはそれなりの能力が要りますよね。もともと娯楽のスポーツだと思っているので個人の魅力はあって欲しいです。

―来さんの今後の展望について聞かせてください。

来 僕は自分の家族にも「あなたこの年代の指導が1番向いてる」って言われるんです。子供っぽいからだそうですが、僕自身この年代に1番魅力を感じています。
この年代特有の難しさもあるんですけど、すごく充実しているので、トップチームをやりたいかと言われるとそれはもちろんやりたいと思っていますが、最終的にはこの年代に戻ってきたいんです。この年代のエキスパートになるために、他のもっと上の年代のコーチ経験を積みたい。子どもたち、選手たちのためにいい環境を作る、その力をつけたいです。

―最後に発信しておきたいことはありますか?

来 今のGK人口はまだまだ分母として少ないのが現状で、GKというポジションをもっとポジティブに捉えられるようにしていきたいです。特にジュニア年代の指導者の方々にいろいろ意味で種を巻いて欲しい、というのが願望としてあります。
子供がどのポジションをやりたいかを最終的に本人が選べるようにと指導者の方は子どもたちに対して道を提示してくださっていると思います。できたら、そこにGKをもっと選択肢として入れて貰いたいです。
更に、GKをしているお子さんの保護者の方は試合で点を取られると「自分の子供が失点した」と見えるので、観戦しているとがっくりしてしまいやすいんですが、そういうことではありませんので、どうか落ち込まずポジティブに子どもさんの努力する姿をみていただきたいですね。
大好きなサッカーのなかでGKを選んでやっていて、それでもうまくなる過程にはたくさんのエラーがあります。
この年代特有なのかな、シリアスに天を仰いで絶望みたいなシーンよくあるんです。「なんでできないんだ」よりも「どうやったら、これができるようになるんだろう」と発想をポジティブにしていこう!と思っています。

―捉え方次第でポジティブでいることで次の行動に変えていく力になりますね。本日はありがとうございました。次の指導者のご紹介をお願い致します。

来 横河武蔵野FC U12監督 神田 敦史さんです。

post15111_04.jpg

<プロフィール>
来 龍哉(らい たつや)
FC東京 アカデミーU-15むさし GKコーチ兼育成GKコーチ

1986年生まれ。大分県出身。小学校からサッカーを始め、九州共立大学在学中にGKコーチの道へ。その後、東京ヴェルディ、FCトッカーノ、日テレべレーザ、鹿島アントラーズジュニアユースでGKコーチとしてのキャリアを積み、2017年FC東京に加入して現在に至る。JFA公認B級コーチ、JFA公認GK LEVEL-2取得済み。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

ガンバ大阪・半田陸が戦列復帰へ。
「強化した肉体とプレーがどんなふうにリンクするのか、すごく楽しみ」