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Vol.21 アウェイ戦を勝ち抜くために

  • 2021.04.22

    Vol.21 アウェイ戦を勝ち抜くために

BRAIN〜ズミの思考〜

JFL初戦をホームでなんとか勝利し、第3節(ティアモにとっては2戦目)はHonda FCと対戦した。このHonda FCは昨シーズンこそ4位で終えたものの、2016~2019シーズンはJFL4連覇を達成。天皇杯ではJクラブを毎年のように倒し続け「もはやジャイアントキリングと言えないのでは?!」と思うくらい力のあるクラブである。僕も名古屋グランパスでのプロ1年目に天皇杯で対戦し、0-2で敗れたのを今でも覚えている。

Honda FC戦は、ティアモにとってJFLでは初めてのアウェイゲームで、当日の朝にバスで枚方を出発し3時間半をかけて移動。キックオフの120分前に到着して試合に臨むという、選手にとってはかなり厳しい環境下での戦いだった。理想を言えば前夜から会場近くに宿泊し、コンディションを整えて臨みたいところだが、クラブの予算の都合上、約230km離れた浜松での試合はバスでの当日移動の範囲内だと判断された。このことがどれだけ選手のコンディションに影響するのかは試合後にわかるのだが、多少の不安と選手への信頼の両方を抱きながらキックオフを迎えた。

試合が始まってみると、選手の動きは悪くない。相手の分析をもとに攻守に準備していた戦術もうまくいっているように見えた。相手の方がチャンスの数が多かったのは事実だが、0-0で前半を終えられたことに選手も手応えを掴んでいたのか、ハーフタイムでもポジティブな発言やモチベーションの高さが伺え、後半に向けて期待は膨らんだ。

その後半3分。自陣でボールを奪い、手薄になっていた逆サイドに展開した流れから、最後はグラウンダーのクロスをチョ・ヨンチョルがスライディングで押し込み、待望の先制点を奪うことに成功した。その後、追加点のチャンスはありながらも決めきれず1-0のまま時間が経過していく。すると徐々にティアモの選手の足が止まり始めた。加えて、後半25分過ぎには、攻守にハードワークを見せていた佐藤諒が足をつってしまいピッチの外へ。過去に足をつった姿を見たことのない選手のアクシデントで予期せぬ交代カードを切ることになり、バタバタと交代の準備を進めていた最中に同点弾を奪われた。
これは1人少なくなった状況でピッチ上の選手たちに具体的な指示を出すことができなかった自分の責任だ。その後も足をつる選手が複数名でてしまう中で失点から7分後の81分に相手に逆転弾を許してしまった。もちろん、追いつこうと交代カードを切ったものの、それ以降の時間帯で得点を奪うだけのパワーを出すことはできず、1-2で逆転負けを喫した。
正直、選手のコンディションを見れば、当日移動の影響は少なからずあったと言わざるをえない。だが、自分の準備や采配次第では引き分けや勝ち試合にできた可能性もあったはずだ。先制した時点で、普段ならあまり選択しない、守備的に戦って逃げ切る策を敷いても良かったのではないかとも考えた。また先にも書いた通り10人になった瞬間に的確な指示を送れなかった自分の未熟さも痛感した。結果、初アウェイ戦は悔しい敗戦となった。

その後、ホームでの松江シティFC戦での引き分けを挟んで迎えた、アウェイでの第5節・ヴェルスパ大分戦。この試合は、前日のうちに大分に移動し、前泊して臨んだが、予算の都合からGKコーチを帯同していなかったため、GKのウォーミングアップは選手同士で行い、試合前、試合中のセットプレーの指示は監督の僕が行う、という体制で臨んだ。ヴェルスパ大分は昨年のJFL覇者であり、YASUDAとユニフォームサプライヤー契約を結んでいるチームで、YASUDAと契約してシューズを履いている自分にとっては特別な試合でもあった。

内容は、立ち上がりから風上のヴェルスパが優位に試合を進めた。ティアモも後ろから攻撃を組み立てて活路を見出そうとするも高い位置からのプレスに手を焼き、なかなか良い形で攻撃ができない。アタッキングエリアでの精度も欠き、前半はシュートゼロのままスコアレスで折り返した。その出来を受けて選手を一人交代して臨んだ後半は、開始早々の47分に今季初スタメンの岡本英也が起用に応えるゴールを決め、Honda FC戦と同じように先制する展開になった。その中で僕自身も、同じ失敗を繰り返さないように60分には疲れが見え始めた2選手を交代させるという手を打ちながら試合を進め、ヴェルスパの反撃に耐える時間が長くなると見るや4枚目の交代カードは「追加点を奪いに行くのではなく守りきれ!」というメッセージを込めて送り出した。その思いに選手も応えてくれて、最後まで集中して戦い抜き、0-1で試合終了。ディフェンディングチャンピオンを相手にアウェイでの初勝利を収めることができた。

ここまでの序盤、4試合を終えて、改めて監督として磨かなければいけない力だと感じているのは、アウェイだろうがホームだろうが、そこにどんなクラブ事情があったとしても、試合で起こりうるすべてに対応できる準備をすることと、試合中の様々な状況に瞬時に対応して最善の策を講じられる『瞬発力』だ。それを僕自身がより突き詰めていけるかも、シーズンを通した安定した結果を求める上では不可欠だと考えている。

  • 小川 佳純Yoshizumi Ogawa
  • Yoshizumi Ogawa

    1984年8月25日生まれ。
    東京都出身。
    07年に明治大学より名古屋グランパスに加入。
    08年に新監督に就任したドラガン・ストイコビッチにより中盤の右サイドのレギュラーに抜擢され、11得点11アシストを記録。Jリーグベストイレブンと新人王を獲得した。09年には、かつてストイコビッチも背負った背番号『10』を背負い、2010年のリーグ優勝に貢献。17年にはサガン鳥栖に、同年夏にアルビレックス新潟に移籍し、J1通算300試合出場を達成した。
    20年1月に現役引退とFC TIAMO枚方の監督就任を発表し、指導者としてのキャリアをスタートさせた。

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