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Vol.16 JFL昇格!!

  • 2020.11.26

    Vol.16 JFL昇格!!

BRAIN〜ズミの思考〜

3日連続の1次ラウンドを2勝1分で勝ち上がった全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2020の決勝ラウンドは、11月19、21、23日にゼットエーオリプリスタジアムで開催された。同スタジアムは、かつて市原緑地運動公園臨海競技場と呼ばれ、僕にとっても、千葉県の高校サッカー界にとっても馴染みの深いスタジアムだった。個人的には、市立船橋高校3年生の時に戦ったインターハイ千葉県予選の準決勝・幕張総合高校戦に0-1で敗れ、試合後ユニフォームのままバスに乗り込んで練習に向かった苦い思い出もある。また明治大学4年時のインカレ準々決勝もこのスタジアムで1-2で敗れ、4年間の活動に終止符を打つなど、個人的にはあまり良い思い出がないスタジアムだった。

試合2日前、17日に大阪での午前練習を終えたあと、車2台にチームの荷物を詰め込んで、GM、コーチと3人で交互に運転しながら千葉に出発した。チームのためなら、片道約7時間の道のりも苦には感じなかった。千葉県内で行った前日練習は市立船橋の後輩、カレン・ロバートがオーナーを務める、房総ローヴァーズ木更津FCが所有のグラウンド「ローヴァーズドリームフィールド」を借りて行うなど、チームにとっては慣れない関東の地での大一番にも色んな方のサポートに支えてもらい臨むことができた。

初戦の相手は北海道十勝スカイアース。FC TIAMO枚方が去年出場した地域CLの予選ラウンドで対戦し、2-1でなんとか勝った相手だ。試合は開始から風上に立った十勝に押し込まれる展開で、ティアモはなかなかシュートまで持ち込めなかったが、前半終了間際という最高の時間帯に、野沢拓也のクロスを木田直樹が頭で折り返し、最後はヨンチョルが待望の先制点を奪う。さらに後半も立ち上がり、51分にカウンターから佐藤諒のゴールで2-0と突き放し、その後はヨンチョルの2点目や、途中出場の福森大樹の2ゴールで5-0と勝利することができた。

2戦目の相手はFC刈谷。初日に『栃木シティFC対FC刈谷』が0-0で引き分けていたため、ティアモとしては勝てば昇格が決まるという試合。だが、試合は運動量で勝る刈谷に押し込まれる時間が長く、強風の影響もあって自分たちがやりたいことを出せない、そんな内容だった。しかも、90分にはロングスローの混戦からゴールを奪われた。予選ラウンドから5試合目にして初の失点だった。交代カードを切った直後の失点で裏目に出たかな、とも思った。選手には「まだ時間はある、諦めるな」という声を掛けたが、正直、自分自身を奮い立たせるための言葉だった。
だが、ティアモに下を向く選手はいなかった。最後までゴールを目指した彼らの思いが繋がったのは94分。失点直前に途中出場させていた道上隼人が値千金の同点ゴールを決めた。シーズン通してケガに悩まされ思うようなシーズンを過ごせていなかった彼が大事な場面でチームを救ってくれたのだ。試合はそのまま終了し、勝ち点1を分け合った。もうひとつのカード、『栃木対十勝』で栃木が1-0で勝利したため、ティアモは首位の座をキープしたまま、引き分け以上で昇格が決まるという状況で最終戦を迎えた。

最終戦の相手は関東リーグチャンピオンであり、1次ラウンドを唯一、全勝で勝ち上がってきた栃木シティFC。栃木にしてみれば、最終戦に勝たなければ自力での昇格を決めることができない状況での一戦だった。このシチュエーションは、関西リーグ最終戦のおこしやす京都AC戦とよく似ていた。それを踏まえて試合前には選手に言葉をかけた。
「おこしやす戦や刈谷戦のような苦しい試合でも最後まで諦めずに戦って、無敗でここまできた。この試合も負けなければ目標だった『シーズン無敗』でJFL昇格を決めることができる。もちろん、だからといって、試合の入りから引き分けを狙うのではなく、いつも通り勝ちに行こう」
試合は、互いにチャンスはあるものの決定力を欠き0-0のまま前半終了。ハーフタイムには相手より先に2枚の交代カードを切った。後半に入ると、相手も交代カードを次々と切ってきた中でスコアレスで試合が進み、残り15分を切ったあたりでDFラインとボランチの選手には「このまま終わらせることを視野に入れよう」と伝えた。結果、ピンチもあったが全員が最後まで集中力を切らすことなく0-0で試合終了。ティアモが悲願のJFL昇格を決めた瞬間だった。その後の『刈谷対十勝』戦で刈谷が3-0で勝利したため勝ち点5で3チームが並んだが、得失点差で上回ったティアモには全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2020『優勝』というおまけまでついた。選手時代にはあまりいい思い出がなかったスタジアムの記憶も、監督として、最高に嬉しい記憶として塗り替えることができた。

今年は本当に色んなことが起きたシーズンだった。練習すらできない時期もあり、ケガ人も多く出るなど、最後まで悩みは尽きなかった。そうした中でも常にポジティブに物事を捉え、脳をフル稼働させてたくさんのことを考えながら、『JFL昇格』を第一に考えてチャレンジしてきた。結果、目標を達成することができて本当に嬉しかったし、何より、ティアモを応援してくれる皆さんや、選手・スタッフが涙を流して喜ぶ姿を見られたのが一番、嬉しかった。今年頑張ってきたのは、すべてこの瞬間を味わうためだったのだと実感することもできた。
新米監督の元で戦ってくれた選手、サポートしてくれた代表、GM、コーチングスタッフ、マネージャー、支援してくださったスポンサー各社様、そして応援し続けてくれたファン・サポーターの皆さんのおかげで掴み取ることができたJFL昇格です。本当にありがとうございました。

  • 小川 佳純Yoshizumi Ogawa
  • Yoshizumi Ogawa

    1984年8月25日生まれ。
    東京都出身。
    07年に明治大学より名古屋グランパスに加入。
    08年に新監督に就任したドラガン・ストイコビッチにより中盤の右サイドのレギュラーに抜擢され、11得点11アシストを記録。Jリーグベストイレブンと新人王を獲得した。09年には、かつてストイコビッチも背負った背番号『10』を背負い、2010年のリーグ優勝に貢献。17年にはサガン鳥栖に、同年夏にアルビレックス新潟に移籍し、J1通算300試合出場を達成した。
    20年1月に現役引退とFC TIAMO枚方の監督就任を発表し、指導者としてのキャリアをスタートさせた。

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